10号はサンサン、11号はヤギ……台風の名称、どうやって決めている?
■台風の名前の決め方
台風10号は各地で深刻な被害をもたらした。気象庁のホームページによると、そもそも台風とは、熱帯低気圧のうち北西太平洋または南シナ海に存在し、なおかつ低気圧域内の最大風速(10分間平均)がおよそ17 m/s(34ノット、風力8)以上のものを指す。そして、日本では毎年1月1日以後、発生した順番に台風を1号、2号……と呼んでいる。
そのなかでも、特に深刻な被害をもたらした台風については、気象庁によって命名されることがある。気象庁のホームページによると、その基準は「損壊家屋等1,000棟程度以上または浸水家屋10,000棟程度以上の家屋被害」「相当の人的被害」があった場合という。命名することで、後世に被害を語り継ぐ目的もあるようだ。
1954年に発生した台風15号は“洞爺丸台風”と呼ばれる。これは台風によって転覆し、タイタニック号に次ぐ死者を出す海難事故となった青函連絡船、洞爺丸の名前をつけたものだ。1958年の台風22号は“狩野川台風”、1959年の台風15号は“伊勢湾台風”と呼ばれる。それぞれ、狩野川の氾濫と、伊勢湾沿岸の高潮被害があったことから、地名に由来する例だ。
近年は、元号のあとに被害の大きかった地域の名前がつく例が多い。2019年に発生した台風15号は“令和元年房総半島台風”、19号は“令和元年東日本台風”と呼ばれている。平成以降は気象庁が名称を定めた台風が少なくなったが、それは建築・土木技術の進歩やレーダーの技術革新で、昭和の時代ほどの多くの死者を出す台風災害が減少したためと思われる。
■海外ではどう命名されているのか
では、海外では台風の名称はどう命名されているのだろうか。有名な例はアメリカだ。英語で人名を付けることが多い。ちなみに、戦後日本がアメリカ軍の占領下にあった時代(1947年~1953年頃)に発生した台風は、カスリーン台風、キティ台風、ジェーン台風のようにアメリカの女性のような名前で呼ばれていた。
気象庁によると、2000年、日本を含む14カ国等が加盟する台風委員会で命名の方法が決められたとある。曰く、「北西太平洋または南シナ海の領域で発生する台風に対し、共通のアジア名として、同領域内で用いられている固有の名前(加盟国などが提案した名前)を付ける」ことになったのだという。
その決まりはこうだ。1番目の“ダムレイ”から140番目の“サオラー”まで、140個のアジア名を用意し、発生した順番にその名が用いられ、一巡するとまた“ダムレイ”に戻る。ちなみに“ダムレイ”はカンボジアで象を意味する言葉であり、いかにも台風っぽい。ちなみに2番目は中国が提案した“ハイクイ”で、これはイソギンチャクを意味する言葉だという。
日本が提案した名称も、いくつも採用されている。5番目の“コイヌ”、19番目の“ヤギ”、33番目の“ウサギ”、47番目の“カジキ”、61番目の“コト”、75番目の“クジラ”、89番目の“コグマ”、103番目の“トケイ”、117番目の“トカゲ”、131番目の“ヤマネコ”などがある。これらは星座に由来する名前なのだが、諸外国の人々が日本語の響きをどう感じているのか、気になるところである。