アニメ『怪獣8号』原作から何が変わった? “怪獣のいる世界”を視聴者に信じさせる仕掛けの数々

原作ファンをうれしくさせる小ネタ多数

  世界観の表現だけでなく、キャラクターに関わる描写にも多彩な工夫が見られた。第1話の後半では、突如地面から“余獣”が現れ、カフカが後輩の市川レノを逃して1人で時間稼ぎするシーンがある。原作ではこのシーンは一瞬で終わっており、カフカが「どうにもならん」と絶望したような態度で状況を受け入れているように見えたが、アニメ版では大きな改変が加えられている。

  余獣の出現と共にレノを逃がすところは変わらないが、その後カフカは全速力でダッシュ。狭い商店街に誘導して一度は逃亡することに成功した上、その後追いつかれた後も足を狙って反撃しようとする素振りを見せていた。これによって、絶体絶命のピンチでも諦めず、最後まで勝機を見出そうとするカフカの人間性がより鮮明になったと言えるだろう。

  なお、エンディング後のCパートでは幼い頃のカフカと亜白ミナの回想シーンが登場。そこでカフカは、まず足を攻撃して身動きを取れなくする……という怪獣への対処法を語っており、余獣襲撃シーンで見せた行動に知識の裏付けがあったことがはっきり分かるようになっていた。

  また、そのほかのキャラクターの描写も追加されており、たとえばミナの相棒・伐虎の存在感が原作より強まっている。余獣襲撃シーンでは、間一髪でカフカとレノを助ける見せ場が与えられていたほどだ。

  そのほか、後にストーリーに絡んでくる古橋伊春や出雲ハルイチといったキャラクターがちらっと登場するシーンなどもあり、原作ファンへの思わぬサプライズとなっている。

  想像力を刺激されるSFチックな世界観と、個性豊かなキャラクターたちの活躍。いずれも『怪獣8号』の根幹をなす部分なので、アニオリ要素の追加によって的確に作品の魅力が膨らんでいる印象だ。今後、怪獣との戦いが本格化するなかで、いかなるオリジナル演出が見られるのか楽しみにしたい。

 ©松本直也/集英社

 

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