【漫画】Xで2.6万「いいね」を集めた作品にゲーマー大号泣……『死んだネトゲのフレの父』が切なく優しい
自身もネットゲーマーだった
――なぜ『死んだネトゲのフレの父』を制作しようと考えたのでしょうか。
不二丘:私自身、10年ほどオンラインゲームで遊んでいるのですが、ログインしなくなり動かなくなったフレンドさんたちのデータを見て、寂しさを覚えたことがキッカケです。仕事をしながらのんびり描いていたため、実は完成まで1年くらいかかっています。
――“フレンドの父親と一緒にプレイする”という展開はどのように思いついたのですか?
不二丘:私自身ネットゲーマーですので、ネットでの交流が日常生活だったこともあり、あまり深い考えもなくふと浮かびました。これといった着想はありません。当初は「死んだ友人のお葬式をみんなでする」という話だったのですが、「第三者を混ぜたら面白くなるのでは?」と考え、フレンドの父親を巻き込んでいろいろと肉付けした感じです。
――主人公やお父さんはどのように作り上げましたか?
不二丘:現実世界の主人公のビジュアルはどこにでもいるお兄さん、お父さんは仕事のできる貫禄のあるおじさんといったイメージで作成しました。性格はお父さんはストーリーを展開してもらうために積極的に、主人公はそれをフォローする面倒見の良いものにしました。暗い話にならないようキャラはみんな明るい人ばかりになっています。
――作中に登場するゲーム『神獣』についてですが、参考にしたゲームはありますか?
不二丘:システムはずっと私が遊んでいる『ドラゴンクエスト10』をかなり参考にしています。他には『モンスターハンター』や『聖剣伝説』、『ワンダと巨像』などなど。ゲームではありませんが、デザインは東南アジア、特にバリ島をイメージして描きました。
ネットゲームだからこそ戦闘シーン
――『神獣』内での会話がメインの作品でした。ゲーム中の会話と、現実世界の会話を描くこととはどのような違いがありますか?
不二丘:最低限のネットマナーは守るように注意しました。ゲーム内の会話はおかしなところで改行してたどたどしく話しています。また、顔文字をつかって会話で遊ぶことができる点は、現実世界にはない面白さなのでそこは横吹き出しにしました。
――パイレンとの戦闘はネットゲームの世界ゆえに、ファンタジー漫画のモンスターとの戦闘とも違う印象を受けました。ネットゲームでの戦闘と、ファンタジー漫画での戦闘を描くうえで描き分けたことなどありますか?
不二丘:当たり判定は気をつけました。「ジャンプしないと攻撃を当てる事ができない、それもタイミングが難しい」というゲームあるあるのストレスを描くのは楽しかったです。ゲームの世界での戦闘は時間制限などシステムというルールによる縛りが生まれるため、「それをどう生かすか」ということを考えられるのがファンタジー漫画にはない面白さだと思います。
――可愛らしさもありながら「オンラインでもオフラインでも、いつでも会えることが約束された人はいない」というメッセージを感じるストーリーでした。
不二丘:「出会いも別れもなるべく後悔しないように生きていけたらいいなあ」とか。「老若男女国籍問わず友達になれるネットって面白いなあ」とか。そんなありふれた、でも前向きな気持ちになってほしいという思いで制作しました。そのように感じてもらえると嬉しいです。
――最後に漫画制作における目標など教えてください。
不二丘:こつこつ自分が読みたい漫画を長い遺書がわりに描き続けていきたいです。漫画のお仕事をもっとやりたいので、そのための作品と、完全に自分の趣味の作品をXにアップしていけたらと考えています。それらが誰かの心に少しでも残ることができたら嬉しいです。