”トラウマ漫画”の代名詞『ブラッドハーレーの馬車』、「救いがない」「ヘヴィすぎる」と突如トレンド入りした気になる内容

 2023年4月21日から実写ドラマが放送されている漫画『波よ聞いてくれ』。作者である沙村広明の別作品『ブラッドハーレーの馬車』が突如Twitterでトレンド入りした。「トラウマ漫画の代名詞」と話題になったことがきっかけのようだが、同作は単行本として刊行されたのは2007年。15年以上経ってもトレンド入りするほどの内容とは、どれほどのものなのだろうか……。

夢も希望も、一片の救いもない世界

 物語は、とある孤児院から始まる。一人の少女が資産家であるブラッドハーレー家の養女になることが決まり、仲間たちに見送られながら出発するシーンだ。養女になれば、ブラッドハーレー聖公女歌劇団に入団し、華々しい舞台に立てるかもしれない。孤児院の少女たちにとって、養女に選ばれるのは憧れなのだ。

 この設定だけ読めば、歌劇団の中で起こる少女たちの愛憎劇を描いた漫画なのかと思うかもしれない。しかし、この漫画のトラウマ要素はここからだ。少女たちを乗せた馬車の大半は、ブラッドハーレー家には向かわない。夢と希望に胸を膨らませた少女たちが辿り着くのは刑務所。一度入ったら、二度と出てくることはできない地獄だ。

 何の罪も犯していない少女がなぜ刑務所に送られるのか? 実は、囚人の性欲求・破壊欲求を解消するため、政府が孤児の少女を刑務所に送り込んでいるという、おぞましい設定の物語なのだ。目的を考えれば、選ばれてしまった少女たちがどれほど酷い目に遭うか…… 多くを語らずとも想像がつくのではないだろうか。

 ネット上では「一貫して救いがない」「夢とか希望とか、そんな優しく輝かしいものとは一切無縁」と評される同作。「性に関してトラウマがある方は絶対に読まない方がいい」という声が、少女たちに降りかかる悲劇の凄惨さを物語っている。

次々と地獄に落とされていく少女たち……

 全8話の中から、読者がトラウマシーンとして挙げるエピソードを一部紹介しよう。やはり、物語の始まりである第1話は外せない。選ばれてしまった少女の名前はダイアナ。希望に胸を膨らませた少女の旅立ちは、とても先の展開とは結びつかないほど明るいものだった。そこから一気に地獄に突き落とす展開は、多くの読者にトラウマを植え付けた。

 次に挙がるのは第2話で、特にラストシーンに衝撃を受けた読者は多い。選ばれてしまった少女・ステラは、苦しい日々を隣室にいる親友プリシラとの会話を支えに生き抜いていた。時折挟まれる2人の思い出話の穏やかさと、痛めつけられ憔悴していくステラの対比がむごたらしい。プリシラの存在が救いになると思いきや……最後のコマで明かされた真実が、第2話をより救いのない物語にしているのかもしれない。

 トラウマ漫画として名高い同作だが、同時に「考察がはかどり、何通りもの解釈が成立する作品」「画力の高さや演出力の高さに驚く」といった評価も少なくない。そもそも作者の沙村広明は、実写映画化やアニメ化もされた『無限の住人』の作者でもある。『無限の住人』も「痛いシーンや残虐シーンが苦手でなければおススメ」「よくあるバトル漫画とは違い、考えさせられる作品」と高く評価されている。「『無限の住人』の作者なら、『ブラッドハーレーの馬車』が生まれるのも分かる」と納得する読者もいるほどだ。

 ちなみに、『ブラッドハーレーの馬車』は2023年1月に原画展がおこなわれている。合計約80点の原画が展示され、複製原画やオリジナルグッズの販売とサイン会もおこなわれた。トラウマ漫画の代名詞と呼ばれながらも、根強い人気をもつ作品だということが窺い知れる。

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