【漫画】家に帰ったらもうひとりの自分がいたーー人型ロボットとの“怖い”関係を描いたSNS漫画が話題
ーー印象に残っている読者からの感想を教えてください。
フナヤマヤスアキ(以下、フナヤマ):「かわいそう」とかですかね(笑)。自分も描いててかわいそうだなと思ってました。漫画内の実験について考察や賛否も多く見受けられ、興味深く拝見させて頂きました。
「オリジナルの陽子とロボットの陽子が仲良くなって欲しかった」というご意見もあり自分もそうなったら良いなと思ったのですが、仮に陽子と同じように自分の生活環境にもう一人のフナヤマが現れて、部屋でくつろいだり家族と仲良くしてたらイライラしてしょうがないだろうなと想像して漫画を描いていたため、そうはなりませんでした。
ーー本作を創作したきっかけは?
フナヤマ:友人たちと同人誌を制作するために4ページのSF作品を描く事になり、本作を創作しました。ただ自分は元々メカニックな世界には疎くて、真逆のオカルトや民俗学的な世界が好きなんです。
でも今後AIやロボット技術が進歩して、限りなく人間との境界線がなくなった時、今以上に世間は幽霊や魂の存在について興味を深めるんじゃないかなと思ってます。魂の存在がアイデンティティと結びつくという考えがあるためです。
どんなに技術が進歩しても昔から変わらない“他者から愛される・必要とされる・相手を敬う”という価値観によって、人とロボットのバランスが保てるのではないかと思っています。そういう事を日頃から考えていたので本作が生まれたのだと思います。本作では自分がロボットかどうかという自覚をあえて有耶無耶にしたかったという考えがありました。
ーー印象に残っているシーンは?
フナヤマ:「だって私の部屋だもの」と話すコマがお気に入りです。思い出がたくさんある実家に帰ってきた陽子に対して、1番マウントをとれるセリフは何だろうと考えました。
ーーふたりの陽子さんを描くなかで意識したことは?
フナヤマ:ふたりは髪の毛の分け目で判断できるようになっています。ただ1ページ目の5コマ目で服が白いのはトーンの貼り忘れです。
感情や性格の部分では1ページ目から同じ感情レベルで話すと緊張感が無くなるのでバランスをとりました。ただロボットだから感情がない、人間だから感情がある……という考え方をベースにした訳ではありません。先に家族と過ごしていた陽子は事情を知っているため冷静なので、そこまで感情を表に出す必要がないという意識で描いてました。
ーー漫画を描きはじめたきっかけは?
フナヤマ:幼稚園生のころ水木しげる先生の妖怪図鑑と出逢い、絵を描く事が好きになりました。初めて漫画を描いたのは小学3、4年生で、漫画『クレヨンしんちゃん』を真似て描いた事が最初だと思います。そのあと中学生くらいまで下手なオリジナルの漫画を描いては自宅にあったファックス用紙にコピー印刷して、手製の本を作っていたりしていました。
そのあと高校、専門学校を経てデザイン事務所に就職し広告に使うイラストを描いていたのですが、漫画を描こうとは思っていませんでした。
ただ社内で“オリジナルの漫画を電子書籍で売ってみよう”という企画があり、絵を描けるスタッフが自分だけだったため、この企画を担当しました。
最初はあまりやる気が無かったのですが、漫画の描き方を勉強して紙に描いていくと、小中学生の頃の楽しかった感覚がどんどん蘇ってきました。また漫画を描きながらお給料が支給されるため“漫画を描きながらお金をもらう”という事にすごく憧れを持ちました。
電子書籍は完成したのですがあまり売れず、企画も無くなり通常の業務に戻りました。ただそれでは満足できず鬱々としていて。そんなときに友達からコミティアに誘われ初めてオリジナル漫画の同人誌を作り、イベントに参加すると、そこで大きな刺激を受けました。それから会社勤めをしながら漫画を描くという事を数年間続け、諸事情で会社を退社したタイミングと、Web媒体で漫画の連載が決まったタイミングが重なり、今に至る感じです。
ーー今後の目標を教えてください。
フナヤマ:“漫画を描いてお金をもらう”という事に憧れがあるので、新しい連載や単行本を出したいという気持ちが強いです。余裕があれば同人活動やSNSでも作品を発表できればと思っています。
これから色々と描きたいネタはあるのですが、SFでもオカルトでも“目に見えないもの”をテーマに描ければと思っています。