『機動戦士ガンダム 水星の魔女』15話がつらすぎる……モビルスーツ産業の闇と、見届けたいグエルくんの今後

 『水星の魔女』の世界は巨大なモビルスーツ産業が成立しており、それら企業によってフロントと呼ばれる巨大人工居住施設が運営されているという設定である。ただ、自分はかねがね「そんなにモビルスーツ産業って儲かってるのか?」という点が疑問だった。「地球は荒廃しています」という点は今までに提示されていたものの、具体的にどういった方法でモビルスーツが大金を産んでいるのかはよくわからなかったのである。

 蓋を開けてみれば「管理された戦争を恒常的に発生させることで、各企業が兵器を売りまくっている」ということのよう。巨大企業によって管理された戦争が産業構造に組み込まれていて……みたいな設定ということになると、先行するあんな作品やこんな作品が思い浮かぶが、『水星の魔女』が悲惨なのはそれが宇宙から地球を搾取する構造の大きなピースとなっている点である。アーシアンとスペーシアンのミックスルーツであるシャディクが、この構造を破壊したいと思うのも納得だ。

 このシャディクのプランなら、アーシアンはスペーシアンと同等の資産や戦力を得られ、スペーシアンの企業は抑止力という需要からさらなる利益を得られる。うまくいったら一挙両得だし、現在のアーシアンが搾取されっぱなしの状況を一変させるプランであることから、「フォルドの夜明け」がシャディクと手を組んだ理由もわかる。なにより、プランの具体性や損得が両立している点から、シャディクが単なる腹黒い悪党になっていないところには唸らされる。彼は彼なりに、自らのルーツに関わる切実な動機から動いていたのだ。学校の中で生徒が死ぬことになっても我が道を進もうとしているあたり、彼の強い決意を窺わせるものがある。まあ、人は死んでいますが……。

 この「戦争シェアリング」をベースにした作品世界の設定、そしてクワイエット・ゼロに関する詳細も徐々に明かされはじめ、隠されていた物語全体の枠組みがいよいよ見えてきそうな展開。グエルくんは今後どのような道を歩んでいくのか、見届けたいところである。

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