PassCode、“アイドル×ラウド”の歩みの先で掴んだ輝きと進化 10周年記念AL『RE:CODE』をライター3氏がクロスレビュー
予測不能な個性の爆発を楽しむ“PassCodeの王道”(信太卓実)
ラウドロックにしかできない腹の底から溢れるような爆発的な感情表現があって、アイドルにしかできないキラキラと輝くポップなパフォーマンスがある。その両方を一切妥協することなく、自身の“王道”と心得て歩み続けているグループがいる。PassCodeだ。
メタル好きな筆者としては、もともとPassCodeには好きな曲がいくつかあったものの、ライブをしっかり観たことはなく、なんとなく知ったつもりになっていたというのが正直なところだったのだが、今年になってようやくワンマンライブを2回観ることができた(3月の代官山UNIT公演、9月のSpotify O-EAST公演)。そして、デビューから10年経つにもかかわらず、これまで彼女たちのライブをほとんど観てこなかったことをひどく後悔した。それほど、いろんな角度から興奮と衝撃と感動をもらったのだ。
単に対極のスタイルを掛け合わせてみただけの話ではない。バンドではないメタルは、こんなにも彩り豊かで自由なパフォーマンスができるのか。それでいて演出やコンセプトなどに縛られるのではなく、むしろ内なるパッションを解放していくような生々しくフィジカルなステージには、間違いなく“バンド的”とも言える激しい熱量が宿っている。純度100%のラウドロックと、純度100%のアイドル性の完全なる融合……いや、シームレスな“往来”と言っていいかもしれない。すなわち、泥臭い葛藤も華々しい夢も、どちらも心身で体現しながらパフォーマンスするということ。なんて人間味に溢れたグループなのだろうと思った。
もう少し具体的に言えば、先に述べた“自由なパフォーマンス”というのは、4人のマイクリレーが象徴している部分が大きいと思う。4人のボーカリストが豊かな歌唱力と個性を持ち、フレーズごとにマイクリレーしながら想いを渡し合っていく光景は、バンドのライブではなかなか見られないもの。それだけ、誰が歌うのか、誰がセンターに立つのかで、ヘヴィネスを基調とした楽曲の雰囲気がガラリと変わっていくのが面白かった。その様は、まさしく“風林火山”。ラウドな音楽に“風”のような爽やかさを運び込む高嶋楓、センターに立つだけで“林”の如く凛としたオーラをもたらす大上陽奈子、存在感抜群の激情的なシャウトでステージ上に“火”を放つ有馬えみり、歌と言葉でグループの土台を支える度量を“山”のようだと喩えたくなる南菜生。4人が色鮮やかな個性を押さえ込むのではなく、むしろありったけに解放しながら歌い継いでいく。そんなマイクリレーが、PassCodeの楽曲の魅力を最大限に増幅させていると言えるだろう。
そう思って『RE:CODE』を聴くと、これほどまでに予測不能な展開を持つ楽曲たちが、10周年記念のアルバムにずらりと収録されていることになおさらグッとくる。また、リレコーディング作品ながら、全曲通して物語性や緩急も存分に感じられ、オリジナルアルバムとしても十分に成り立ち得る1枚だ。
届かなかった想いも新しい出会いも、すべて引き連れて未来へ進もうという決意を歌った新曲「GENESIS」(1曲目)、どんな状況でも自分自身の内なる声を信じて道を切り拓けと呼びかけるデビュー曲「MISS UNLIMITED」(2曲目)。アルバム冒頭を聴いて、アレンジの質感こそ違えど、めくるめく展開への妥協のなさ、歌のメッセージともに、10年間で全くブレていないことにまず驚く。さらに、有馬のシャウトをガソリンにしながら爆走し、ブレイクダウンも飛び出すメタルコア濃度の高い1曲ながら、一気にキャッチーなサビへと開けていく「Taking you out」や、切ない歌から始まり、ダンサブルなシンセとメロディアスなピアノの音色が牽引していくかと思えば、分厚いコーラスパートやシャウトが唐突に顔を出し、スケールの大きなサビへと至る「Anything New」など、10秒後の展開すら予想のつかない“てんこ盛り”な楽曲たちは、PassCodeらしさをそのまま濃縮したかのようで圧巻だ。また代表曲「Ray」をはじめ「ATLAS」「horoscope」「It's you」などを聴けば、ラウドである以前に“歌”そのものをパワーに躍進してきたことも改めて感じられた。そして何よりも全曲、メロディがとんでもなくいい。矢継ぎ早な展開を貫くメロディラインは非常にキャッチーでバリエーション豊か、それでいてどこか切なさを帯びていて、絶望も夢も抱えて一喜一憂しがちな人間の多面性を丸ごと肯定するかのような包容力に満ち溢れている。
激情的なポストハードコアと、アイドルらしいポップな歌、ダンサブルなアレンジがシームレスに往来していく高密度な楽曲たち。『RE:CODE』を聴くと、あのライブの熱狂がありありと浮かんでくる。と同時に、これはアイドル×ラウドという在り方を、他の誰でもなく“PassCode自身の王道”として確立してきた10年間の集大成でもある。その歩みに触れることは、あらかじめ定められた正解にハマりにいくのではなく、予測不能で自由な冒険を楽しむ大切さを教えてくれる。対極のものが出会った時にこそ新たなロマンが生まれるのなら、胸の高鳴りに耳を傾けて、恐れず信じた道を進んでいけばいい――変わらない想いを体現するPassCodeが第一線で歌い続けてくれることに、勇気をもらえる人はきっとたくさんいるはずだ。(信太卓実)
◾️リリース情報
PassCode『RE:CODE』
2026年10月28日(水)発売
・初回限定盤:¥11,000(税込)10周年記念パッケージ仕様、10周年記念ブック付属
・通常盤:¥4,400(税込)
<収録曲>
01.GENESIS
02.MISS UNLIMITED [Re:]
03.Ray [Re:]
04.Taking you out [Re:]
05.Atlas [Re:]
06.ONE STEP BEYOND [Re:]
07.Spark Ignition [Re:]
08.Tonight [Re:]
09.Trace [Re:]
10.Scarlet Night [Re:]
11.Anything New [Re:]
12.Same to you [Re:]
13.horoscope [Re:]
14.rise in revolt [Re:]
15.Future's near by [Re:]
16.It's you [Re:]
17.Ray - from THE FIRST TAKE