PassCode、“アイドル×ラウド”の歩みの先で掴んだ輝きと進化 10周年記念AL『RE:CODE』をライター3氏がクロスレビュー

 PassCodeがニューアルバム『RE:CODE』を10月28日にリリースした。デビュー10周年を記念した本作は、デビュー初期から現在に至るまでの様々な楽曲を、現メンバー4人でリレコーディングした1枚である。初の日本武道館ライブ直前の2021年に加入した有馬えみりにとっては、ほぼ全ての曲が初スタジオ音源化となる点も注目だ。

 そんな本作について、音楽ライターの小川智宏、小林千絵、信太卓実(リアルサウンド編集部)の3名によるクロスレビューを展開する。比較的最近PassCodeの音楽やライブと出会った3名にとって、『RE:CODE』と彼女たちの10年間はどのように映ったのだろうか。(編集部)

エレクトロニコアというジャンルさえ再定義してしまう“発明”(小川智宏)

 もちろんその名前は知っていたし、どんな音楽をやっているのかも知っていた。だが、これまでに仕事で関わる縁がなかったこともあって、しっかり楽曲を聴いたことはなかった。つまり完全な門外漢なわけだが、その門外漢なりに『RE:CODE』を聴いてぶちのめされた経験をお伝えできればと思う。ちげえよと思うところがあったらもちろん遠慮なくツッコんでもらってOKだ。

 PassCodeが表現しているエレクトロニコア、日本では“ピコリーモ”と呼ばれることの多い音楽の面白さは、重さと軽さが平気で同居してしまえるところだ。ラウドでヘヴィな音像に電子音とダンスビートが加わることで、そこには“ずっしりしているのに浮遊感がある”という不思議な感覚が生まれる。ギターリフやドラムパターンを聴けばめちゃくちゃハードコアなことをやっているのに、ボーカルも喉が千切れんばかりのシャウトやデスボイスを轟かせているのに、そのアンビバレントな感覚があるおかげで、全体がポップになる。クラウドサーフやモッシュやウォールオブデスもできるけど、同時に飛び跳ねてノることもできる。両極端な音を同時に鳴らすことで、受け取る側の態度も自由度が増す。

 それはエレクトロニコアというジャンル自体が持っている“機能”なわけだが、その機能を最大限に引き出す装置として、アイドルグループというのはめちゃくちゃ適しているじゃないか! という発明が、このPassCodeというグループなのだと、このアルバムを聴いて思った。発明ってもう10年以上やってるんですけど、という話なのだが、逆に言うと10年以上このスタイルで続けてこられたどころか、どんどん認知と人気を高め続けてきたという事実は、アイドル×エレクトロニコアという方程式が正しかったことを証明していると言っていい。しかも、その方程式が10年以上の時間をかけて劇的に進化してきたことを、この再録アルバムは物語っている。

 何を言っているのかと思われるかもしれないが、まずアルバムを聴いて最初に飛び込んでくる新曲「GENESIS」がまさにその方程式の集大成みたいな曲になっていて、僕はこれを聴いた瞬間に、これまでPassCodeを聴いてこなかったことをちょっと後悔したのである。イントロから爆発するシンセとギターのリフ、暴れ回るビート、一瞬歌をちゃんと聴かせながら、その後はボーカルとギターが果てしないデッドヒートを繰り広げていく。4人はオートチューンから生声シャウトまでさまざまな声を駆使しながら、それ自体ひとつの楽器のように歌を重ねる。とんでもない情報量だが、すべてのサウンドと4つの声がちゃんとあるべき場所にあって、とても美しいフォーメーションを描いている。つまり、彼女たちが歌うということが、エレクトロニコアのエレクトロニコアらしい迫力と高揚感と疾走感を生み出す“パーツ”として、完璧に楽曲に組み込まれているのだ。単にエレクトロニコアという音楽の上でアイドルが踊っている、というものではない。彼女たち自身がPassCodeという音楽の一部になって、エレクトロニコアを進化させている。これ、バンドだったら絶対にできない。

 そもそも、女性ボーカルが4人いるというだけで構造としてはキャッチーである。そのキャッチーな部分が成長すればするほど、もうひとつの極点であるラウドな部分も可動域が広がっていく。そうなることでPassCodeの楽曲はぐんぐん射程を広げ、パワーを増してきたのだと思う。その軌跡と現在地を示すのが、この『RE:CODE』だ。

 もちろん、ベースにある楽曲そのものの強度が高いということは言うまでもない。だが、その強度の上限も、きっとキャリアの中でどんどん上がっていったはずだ。試しに改めて初期の音源と最近の音源を比べてみれば、どっちがいいとか悪いとかではなく、全体のバランスがまったく違うことがわかる。メンバーがこの音を血肉化していくごとに、トラックの容赦なさもどんどん増していく。そんな相乗効果の中でPassCodeは進化し続けてきたのだということを、「GENESIS」は示しているように思う。

 そんな、今のPassCodeの肉体とフォーメーションで再レコーディングされた本作の楽曲たちは、だからこそ、ボーカルをリテイクしたという以上の感動と興奮をリスナーに与える。どこでどの声を発するのか? ギターとの帯域の棲み分けは? 楽曲全体の中でボーカルが担うべきものは何か? 最初に書いた通り門外漢ゆえ、何をどこまで考えて、あるいはプロデュースされてでき上がっているのか知らないが、「MISS UNLIMITED」にしろ「ONE STEP BEYOND」にしろ、同じ曲なのにボーカルも含めたアンサンブルの解像度が桁違いに高く聴こえる。どの曲も、PassCodeにしか鳴らせないバランスと構築性によって、エレクトロニコアというジャンルでさえも再定義してしまっている。(小川智宏)

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