歌声分析 Vol.26:King & Prince 永瀬廉×髙橋海人、異なる声質が生む“調和” ユニゾンと個性に宿る強み

ソロ曲で際立つ永瀬廉と髙橋海人、それぞれの表現力

 続いて、それぞれのソロ曲にも注目したい。ピックアップするのは、オリジナルアルバム『ピース』(2023年)に収録された、永瀬の「きみいろ」と髙橋の「ワレワレハコイビトドウシダ」だ。同じアルバムのソロ曲を聴き比べることで、それぞれの歌声の個性や表現の違いがより鮮明に浮かび上がってくる。

 永瀬自身がYUUKI SANOとともに作詞を手掛けた「きみいろ」は、何気ない日常の幸せや恋人への愛情を描いたミディアムバラード。この曲で注目したいのは、歌唱表現で物語性を後押ししていることだ。日常の情景を描く場面では、ブレスを含んだ柔らかな発声で、恋人に語りかけるような親密さを生み出す。一方、メロディが大きく展開する場面では、一音一音を丁寧に扱い、歌声の輪郭を徐々に明確にしているように聴こえる。随所にファルセットを交えながらも、基本的には地声によるストレートな歌唱を選択。それは、この曲では言葉を届けることを優先したからだと思う。この曲に登場する切実なほどピュアな人物像を、永瀬はしっかり歌声に落とし込んでいる。

 一方、髙橋の「ワレワレハコイビトドウシダ」は、髙橋自身がオファーしたクリープハイプの尾崎世界観が作詞作曲し、クリープハイプが編曲や演奏、コーラスを手掛けたアップチューンだ。この曲では、髙橋の卓越したリズム感が発揮される。尾崎の作るメロディは、独特の言葉の詰め込み方と、細かく上下する音程の動きが特徴的だ。しかし髙橋は、次々と押し寄せる言葉を正確なリズムでとらえ、激しく変化する音程にも的確に声を当てている。発音がもたつくこともなく、実に軽やかに、楽しそうに聴こえる。さらに、フレーズの終わりには、母音を軽く跳ね上げたり、空気に溶かすように収めたりと、細かなニュアンスを自在に加えている。

 今回の5曲を通して見えてくるのは、2人がボーカリストとして遂げてきた変化である。永瀬は持ち前の柔らかな歌声を活かしながら表現の幅を広げ、髙橋は優れたリズム感とピッチコントロールを土台に、細かなニュアンスまで自在に操る歌唱を身につけてきた。さらに、互いの声に寄り添うことで、個々の歌唱では生み出せない表現があることも知った。個性を消さずに調和し、調和を崩さずに個性を主張する。デビューから積み重ねてきた経験は、それぞれの歌唱技術へ、そして2人ならではの音楽表現へと結実している。King & Princeの物語もまた、これからもきっと2人の歌声によって新たな輪郭を得ていくのだろう。

歌声分析 Vol.3:中島健人 “声の演技者”として歌に最適な人格を宿すスキル、DNAに刻まれた抜群のリズム感

アーティストの魅力を語るうえで、楽曲だけでなく“歌声”そのものに宿る個性にフォーカスする連載「歌声分析」。連載3回目は、中島健人…

歌声分析 Vol.20:BE:FIRST 全員がメインボーカルーーパフォーマンスを支える歌の進化、感情を繋ぐ表現の成熟

アーティストの魅力を語るうえで、楽曲だけでなく“歌声”そのものに宿る個性にフォーカスする連載「歌声分析」。声をひとつの“楽器”と…

関連記事