橘ケンチ、LDH JAPAN「SIO」として目指す社会貢献活動の新たな指針 エンタメで地域と“長期的につながる”大切さとは

 EXILE/EXILE THE SECONDのメンバーとして活動する橘ケンチが、LDH JAPANの「Social Innovation Officer(ソーシャル・イノベーション・オフィサー/以下SIO)」に就任してから約3年が経った。

 アーティストとしてステージに立つ一方、全国各地の自治体や企業とエンタテインメントの接点を見出し、地域活性化につながる取り組みを進めてきた。そんなSIOとしての活動を通じて見えてきたこととは何か。『EXILE CUP』への思いや、ロールモデルとして注目する岡田武史の存在、そして自身が描くこれからについて話を聞いた。(編集部)

アーティスト活動と社会貢献の相乗効果 「メリットしかない」と考える理由

――ケンチさんがLDH JAPANの社会貢献と地域共生を統括する「SIO」という役職に就いてから、約3年が経ちました。もちろん、それ以前からケンチさんはLDHの社会貢献活動に関わってきたわけですが、「SIO」という肩書がついたことで、何か変わりましたか?

橘ケンチ(以下、橘):名刺をお渡しする機会が、以前よりも格段に増えました(笑)。「LDH ASIA」が立ち上がった頃からアーティスト活動以外のことにも関わるようになって、そのときから自分の名刺を持つようにはなっていたんですけど、「SIO」という肩書がつくようになって、「LDHの社会貢献と地域共生の担当をやっています」という話がしやすくなったところもあって。とにかく、いろんな方にお会いする機会が、最近本当に増えました。

――これまで会わなかったような人たちと話す機会が増えた?

橘:そうですね。いろんな方々にお会いすることは、僕自身すごく楽しいことですし、刺激にもなりますし、何よりも外の世界を知ることができるじゃないですか。LDHは、基本的には芸能事務所でありエンタテインメント業界の会社なんですけど、いろいろな産業がある中で、エンタメ産業というのは、実はその一部分に過ぎないんですよね。もちろん、僕にとってはそこが大部分だったんですけど、歳を重ねるにつれて、さらにはこういう役職に就くようになって、エンタメ業界っていうのは自分が思っていたほど大きい業界ではないんだなってことに、改めて気づかされたようなところがあって。

――どういうことでしょう?

橘:もちろん、それが多くの方々に必要とされていることはわかっているし、その実感もあるんですけど、日本の経済みたいなことを考えると、エンタメ業界というのはそのごくごく一部じゃないですか。大企業から小さな会社に至るまで、いろいろな会社がこれまで日本の経済を支えてきたわけで。全国の各自治体とかもそうですよね。そういった方々と実際にお会いして、いろいろな話をしながら、そこに僕らがやってきたエンタメとの接点を見出していくこと――それがソーシャルイノベーション事業部の主な活動であり、そういったことを考えることが、僕自身、最近すごく楽しくなってきています。

――エンタメ業界って、意外と他業界との接点が少なかったりしますよね。

橘:そうなんですよ。僕らがほかの企業さんや自治体と絡むときって、“タイアップ”とか“アンバサダー”みたいな形がほとんどで……もちろん、そういった活動は今後も引き続きやらせていただきたいと思っているんですけど、そうじゃない関わり方をソーシャルイノベーション事業部では、もっと追求していきたいなって思っているんですよね。

――具体的には、どのような関わり方をされているのでしょう?

橘:アーティストとしての僕らの基本的な活動って、全国各地に行ってライブをして、その場を盛り上げるみたいな感じじゃないですか。実際、それが得意ではあるんですけど、こういったソーシャルの活動を始めた頃の僕らの考え方というか、ある種の目標として、ある特定の地域と関わったときに、もちろんライブには行かせてもらうんですが、そのライブとライブのあいだに、いかにその地域と接点を作って寄り添わせてもらいながら――場合によっては、問題解決のお手伝いをさせていただきながら、その地域に必要とされる存在になれるかっていうことだったんです。

――なるほど。ライブが開催されるときだけの関係ではなく……。

橘:そう。そうすると、たとえば一年に1回ライブがあったとして、その一年後のライブがより盛り上がるんですよね。で、そこからまた一年、シティプロモーションだったりのお手伝いをさせていただいて、その翌年にまたライブに行ったら、そこでさらに盛り上がるっていう。そうやって、中長期的に地域と強く関わっていくことが僕らの目標のひとつなんです。だから、そういう関わりを各地域の自治体とこれからもっと持っていきたいなって思っていて。要は、東京、大阪、名古屋、福岡……いわゆる大都市は、今後も人が流入していくと思うんですけど、これからの日本においてキーとなるのは、それよりも小さな中都市、小都市、あるいは市町村だと思うんです。そういったところに、自分たちが積極的に関わっていってエンタメを届けることも大事なんですけど、それ以上に、エンタメを使って一緒に地域を盛り上げていきませんかっていう。そっちの感覚のほうが、今は強いかもしれないです。

――なるほど。実際、そういった例があったりするのでしょうか?

橘:僕が直接関わっているところでは、やはり福井市さんとの関係がすごく良い例だと思います。そもそも福井市さんとの関係は、2019年から始まっていて。僕が中目黒で日本酒のイベントをやっていた時に、たまたまた福井市の東京職員の方がお越しになっていたことからご縁ができて、2021年から「福井市食のPR大使」というのをやらせてもらっているんですね。で、そのあと2023年に福井市さんとLDHが「地域活性化連携協定」というのを結ぶことになって、2024年には北陸新幹線の金沢・敦賀間が開通して。で、開業当日、福井駅の1日駅長を僕がやらせていただいたんです。そうやって福井市さんとは、この5年ぐらいで、ある程度のストーリーが作れたところがあって。で、そういった福井市さんとの一連の話をいろいろな形で発信していたら、ほかの自治体さんも興味を持ってくれるようになって、いろいろと話ができるようになって。最近の話ですと、三重県の松阪市さんとも、すごく良い形で今、いろいろとやらせてもらっている感じです。

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――そういったソーシャルの活動をされる際、ケンチさん自身が現役のアーティストであること、メディアに登場する機会が多いことが、ひとつポイントになっているように思いますが、それだけにいろいろと大変なこともあるんじゃないですか?

橘:うーん……僕の場合、大変なことはほとんどなくて。スケジュールの調整がちょっと大変なことぐらいかな(笑)。僕は本当にメリットしかないなって思っています。テレビに出たり、現役でステージに立っていたりする人のほうが、各地域に行ったときに「おっ」って思ってもらえるじゃないですか。「あ、見たことある人だ」って。それを良い意味で、僕らは使わせてもらっているというか、名前と顔はある程度知ってもらっているから、第一関門を突破している感じがあるんですよね。

――というと?

橘:普通は、私はこういう会社のこういう者ですってところから話を始めるけど、それをしなくてもいいというか。そういう意味で第一関門は突破していて、プラスアルファで「こういうソーシャルな活動もやっているんです」ってなると、「あ、そんなこともやってるんですね」って、興味を持ってもらえるので、良い意味で相手の感覚がひっくり返るようなところがあるんです。そこからていねいに話を進めていくと、みなさん話を聞いてくれて……そこは僕の年齢的なところもあるというか、一応ある程度のキャリアは積んでいるので、僕より年上の方々も結構面白がって話を聞いてくれるようなところがあって。だから僕は、メリットしかないなって思っています。

――そこで「メリットしかない」と言い切れるところが、この役職にケンチさんが抜擢された理由でもあるんでしょうね。

橘:そうですね。そこは、僕の性格というか性質があるのかもしれないです(笑)。そもそも、いろいろな人の話を聞くことが好きで……そう、「自分はアーティストなんだ」って強く思っているようなタイプの人は、ちょっと難しいかもしれないです。僕は、そういうタイプじゃないので(笑)。あと、先ほど言ったように「LDH ASIA」の頃からこういう仕事を少しずつやらせてもらえるようになって、そこで気づいたことが本当に多かったんですよね。たとえば、自分のところに来た案件を、単に自分がやりたいからやる、やりたくないからやらないとかじゃなくて、その話は誰が誰とどういう話をしながら、何を目的として自分のところに回ってきたんだろうとか、その経緯みたいなものを知ると、「だったら、やったほうがいいよね」という感覚にもなりますし、そういうことが今はわかるようになっていて。やっぱりスタッフ的なことに関わると、ビジネスにおいて大事なところがだんだんと見えてくるようになるじゃないですか。その経験が今の仕事をする上で役立っているところはあると思います。

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