水樹奈々、ピュアな音楽愛と極上の歌で導いたオーケストラ公演 優しく、激しく、感情を伝えるトップアーティストの力
水樹奈々が9月22、23日に『NANA MIZUKI LIVE GRACE 2026 -OPUS Ⅳ-』を東京・国立代々木競技場 第一体育館で開催した。本稿では23日のDay2公演の模様をレポートする。
今回のライブは約7年半振り、4回目となるオーケストラライブで、100名以上の出演者が登壇するという豪華な構成だ。白を基調にしたクラシカルな背景の前にオーケストラセットが組まれ、開演前にはチューニングの音が鳴り響く。照明が落とされ、コンサートマスターと指揮者がステージに登場すると大きな拍手が巻き起こり、客席は青いペンライトに染められていった。
童話のような世界観のオープニングムービーが終わり、いよいよライブが開幕。青のボリューム感たっぷりなプリンセスドレスに身を包んだ水樹がステージに登場し、大歓声が巻き起こる。この日の1曲目は「Destiny's Prelude」だ。静かに力強く物語の始まりを感じさせる弦楽器の音色に、水樹も包み込むような優しさで歌い上げ、会場の温度が徐々に上がっていく。「みんな、思い切り盛り上がっていくよ!」と客席を煽り、コールにジャンプと早くも激しさを増していった「禁断のレジスタンス」、ストリングスの繊細な音に合わせ熱唱を響かせた「NEXT ARCADIA」と、立て続けにエネルギッシュなオープニングを飾った。
「楽しすぎる! 気持ち良すぎる! これを待ってた!」とシャウトし、“NANA'S SPECIAL ORCHESTRA”とオーケストラを紹介。MCでは、情熱あふれるミュージシャンとの共演を心から喜んでいる様子が垣間見られた。
アクティブなミニスカート姿へ早替えして始まった「Angel Blossom」では会場中がピンクのペンライトで彩られ、キュートな声色とストリングスの煌めきがガラッと空気を変えていく。希望に満ち溢れたようなハイトーンを響かせた「No Limit」、光り輝くミラーボールに合わせレトロなダンスチューンをゴージャスに歌い上げた「Friday Night Fever」、さらにストリングスとベースが織りなすどこか懐かしいテイストの「Nightfall」と続いていく。弦楽器を中心に、オーケストラがポップスにもたらすキラキラ感を前面に押し出したブロックとなった。
24時間以上かけて撮影されたという幕間映像は「Dancing in the velvet moon」のパフォーマンス映像が組み込まれ、オープニングムービーから一転、ゴシックホラー風なテイストで驚かせる。
そんな空気感をそのままにタイトなロングワンピースに着替えた水樹がストリングスカルテットとバンド・Cherry Boysを従えて再登場。アコースティック編成で披露されたのは、「シャレード」だ。情感たっぷりの水樹らしい歌唱を存分に味わえるパフォーマンスだった。「久しぶりの曲」と紹介されると大きな歓声があがった「空時計」は、アコースティックならではのナチュラルなテイストで表現。カルテットと歌声だけで紡がれた「innocent starter -MUSEUM STYLE-」では、神聖な空気感を漂わせた見事なアンサンブルで客席の心をつかむ。キラキラとした前向きなメッセージにあたたかさを添えた「7COLORS」もそれぞれの楽器を最大限に活かしたアレンジだった。
いよいよライブは後半へ。オーケストラが再びステージに登場し、「Trinity Cross」を壮大なアレンジで生まれ変わらせた。
オーケストラによるワーグナー「ワルキューレの騎行」が演奏され、荘厳で美しい音色を堪能できる贅沢な幕間を経て、水樹は花束をそのままドレスにしたようなゴージャスな衣装にチェンジ。さらにCherry Boysとコーラス隊も加わり、ステージ上には125名の人数が登壇。大迫力の「TESTAMENT -Aufwachen Form-」はコーラスや観客の声が加わり、場が一体となっていく。さらに優美なアレンジの「終末のラブソング」へ続き、水樹の伸びやかなビブラートが会場中に響き渡った。
水樹は「私がいちばんこの日を待っていたのかも」と喜びを語ったが、その言葉の通り全力で音楽を楽しむ姿を見せたクライマックス。荘厳なイントロから徐々に熱を帯びていく「Anchor Flame」、炎の特効とオレンジにともされたペンライト、そして観客の激しいジャンプで熱を帯びていった定番曲「ETERNAL BLAZE」、さらに「FINAL COMMANDER」とテンションの高い楽曲が続き、ボルテージは最高潮に達した。
最後は「星空と月と花火の下」。ストーリーテラーのような表現で切なさを携えつつ、歌声ににじむあたたかさや優しさが会場を満たし本編が終了した。
アンコールでは、ライブTシャツをアレンジした衣装で再登場。今年7月にリリースされたばかりの「CRIMSON BULLET」をエネルギーが途切れることなくパワフルに展開する。さらに「入魂の愛の一曲」と紹介し、10月21日に発売のニューシングル表題曲「暁の星」を初披露。新境地ともいえるディープで美麗な表現力に客席からは感嘆の声が漏れた。
来年夏のツアー開催も発表され、会場中が幸福感であふれるなか、アンコール最後に歌われたのは「SUPER GENERATION」。ここまでの熱狂をさらに上回り、会場がひとつとなっていった。
Wアンコールは、再びストリングスカルテットとのアンサンブル。約15年振りにライブで歌われたという「あの日夢見た願い」だ。〈これから先にはどんな私が待っているんだろう〉と瞳を輝かせ、会場中をいとおしげに見つめ優しく歌う姿からは、まっすぐな人柄と音楽への愛情が感じられた。
水樹奈々というアーティストのボルテージやテンションをそのままに、オーケストラがエレガントさや壮大さを付け加えながら温度感を着々と上げていくという、かなり独特なオーケストラライブだったように思う。ステージに立っているすべてのミュージシャン、そして観客、それぞれの音楽に対するピュアな情熱がぶつかりあった3時間弱。この圧倒的な熱こそが、彼女がトップアーティストである所以なのだと全身で体感したライブだった。