9Lana、物語に息を吹き込む表現力の覚醒 “歌役者”としての真価を存分に発揮した1st Online Live『DOLLS』
2024年にメジャーデビューし、その幅広い歌唱表現力から“9つの声質を操るカメレオンボイス”と称されるシンガー・9Lanaによる『1st Online Live「DOLLS」』が、10月3日にオンライン配信にて開催された。2020年の歌い手活動開始以降、その唯一無二の歌声がネット上で話題を呼び、活動約2年でSNS総フォロワー数は10万人を突破。メジャーデビュー以降は日本のみならず、海外からも注目を集めている実力派シンガーだ。配信当日は国内のみならず、アメリカ、ドイツ、韓国、シンガポール、マレーシア、ブラジル、ペルー、メキシコ、イタリア、スペイン、フランスなど、世界各地から彼女のステージを見届けるべく、大勢のリスナーがネット上に集結したという。
本公演ではタイトルに冠された「DOLLS=人形たち」をテーマに、街外れの小さなおもちゃ屋を舞台にした世界観の中で、実にバリエーション豊かな楽曲群の物語が次々と展開された。“歌役者”と評される彼女の魅力が存分に発揮された、記念すべき初オンラインライブの模様をレポートする。
ライブは紫と黒を基調としたオープニングムービーからスタート。イラストの描線から演奏ステージの三次元空間が現れ、妖しげな紫の照明とスモーク、ビート感あるジャジーなSEの中で、バックバンドメンバーと今日の主役・9Lanaが登場する。BGMの終了と同時にステージ中央に落ちたライトの下には、キービジュアルの衣装に扮した1体のドールが鎮座。直後、オープニングナンバーとなる「Let me battle」で本公演は華やかに幕を開けた。彼女の初タイアップとなった、TVアニメ『ポケットモンスター』エンディングテーマである。
ステージの真ん中に配置されたドールと、それを囲むように並ぶ楽器隊。舞台の奥、ステージ全体を見渡せる場所にはもう一段高いセットが組まれており、そこに設置されたアンティーク風の華奢な脚の机と椅子に、9Lana本人が座している。彼女の全身には影が落ちるようにライティングされており、加えて面前に設置されたリフレクションフィルターでその表情を窺うことはできない。そのセッティングはまるで彼女が、物語の主役であるドールに、声を吹き込む“影武者”の役割を担っているかのようだ。
そんな中、本公演でまずひとつ目新しかった光景は彼女の歌唱する“体勢”だろう。通常多くの歌手がステージで立って歌唱するのは、単純に“その方が歌いやすく発声もしやすい”からである。9Lanaのようなダイナミックかつ力強い歌声であれば、なおさら立ち姿勢での歌唱を選ぶことも多いはず。しかし、あれだけの迫力ある声量・声圧を、彼女は椅子に腰かけた姿勢で発揮し始めたのだ。驚くべきことに、その後も彼女は本公演の大半を座ったまま歌い続けたのだった。
特徴的な張りのある歌声を用いた「Let me battle」に続き、吐息を含んだウィスパーボイスやファルセットを活用し、気だるげな甘さ漂う「GAME」へ。続く「DYNA MIND」からはバックバンドにストリングスも加わり、ラテン調の華やかで躍動感あるサウンドの中、ヒーカップやグロウルなどの攻撃的な歌唱で情熱的な世界観を巧みに表現する。ダンサブルな楽曲群から一転、訥々とした等身大さを思わせる初オリジナル曲「右ポケット」、壮大な音像の中でダイナミックかつ伸びやかな歌声を響かせる「足跡 - Brave the unknown -」ではそれぞれに、どこか彼女の“少女性”のようなものが声の隙間から顔を覗かせる。
ここで一度、冒頭と同じSEを挟み、公演は中盤戦へ。舞台中央のドール横に配置されたテーブル席へ9Lanaが移動したのち、披露されたのはグルーヴ感が肝となる「Never Give Up」と、怒涛のリリックが強烈な「なんでもしたいからッ!!。」だ。彼女の作品の中では特にテクニカルな歌唱が必要な勢いある2曲を歌い切り、再度ライブはシックな雰囲気のパートへ。いじらしさの滲むキュートな歌詞が印象的な「真似事」、軽快なミドルテンポながらも温もりと切なさを感じさせる「言っといてよ」は、両曲ともに1コーラスの歌唱のみ。だが、どこか非現実的でフィクション感のある激情型歌唱を得意とする9Lanaの、素朴で人間らしい一面を感じさせる穏やかな時間が流れるワンシーンとなっていた。
緩やかなひと時も束の間、ソリッドで重厚感あるバックバンドの演奏で再び場面転換が行われる。舞台中央にあったドール、椅子と机、そして9Lanaの姿はいつしかなくなり、代わりにその場所には一段高いステージセットと、あたかも特等席のような机と椅子が用意された。鳴り響く演奏の中どこからともなく再登場し、舞台中央で着席する9Lana。当初ステージの真ん中にいたドールに“成り替わる”ように座したところで、ライブもいよいよ終盤戦へ突入だ。オリエンタルで絢爛豪華な賭場の情景をエッジの効いた声で歌い上げる「チンチロリズム」、直近の彼女の看板作となるTVアニメ『BLEACH 千年血戦篇-禍進譚-』エンディングテーマ「螺旋」、そして本公演唯一のカバー曲であり、彼女の名を広める出世作となった「プロポーズ」(内緒のピアス)を立て続けに歌い上げていく。
特に「螺旋」の物寂しさが残るアウトロの余韻を、そのまま「プロポーズ」の繊細なイントロへ繋げた流れはあまりにも美しく、間違いなく本公演のハイライトのひとつだったことだろう。彼女のYouTube投稿曲の中でも、5000万回再生超という随一の数字を誇る「プロポーズ」だが、その一番の見せ所となるサビで発揮される驚異の歌唱表現の幅広さには、画面越しでもビリビリとした気迫が伝わってくる。ライブアレンジならではのダイナミックな生バンドの演奏も相まって、“歌役者”としての膨大かつ圧倒的なエネルギーを聴衆に見せつけたのち、ライブはあっというまに最終曲目へ。ラストナンバーは代表曲「BALALAIKA」。演奏途中にはギターと歌唱だけのミドルテンポアレンジも加わっており、最後まで飽きさせないメリハリの効いたパフォーマンスで魅せた。
一切のMCを挟まずストイックに全13曲を披露し終え、流れるSEと共にまずはバックバンド陣が退場。ひとり残された9Lanaも追ってステージから退場し、去り際には袖幕の隙間からこちらへひらひらと手を振ってくれた。公演の終了を告げるエンドロールのBGMは、先日のアニメ放送時の初解禁も好評を呼んだ「螺旋」のアコースティックアレンジ。終演後にはリスナーへのサプライズとして待望のオリジナルフルアルバム『Puppet』リリース決定も発表され、次の楽しみを残して彼女の初オンラインライブは無事に幕を閉じたのであった。
唯一無二の表現力と極彩色の声色を併せ持ち、楽曲の物語に息を吹き込むシンガー・9Lana。まだまだ今後の活躍と進化を大いに予感させる彼女は、国内外問わず、きっと大勢の聴衆をエネルギッシュに巻き込みながら我が道を突き進んでくれるに違いない。
『9Lana 1st Online Live「DOLLS」』セットリスト
https://9lana.lnk.to/1stOnlineLive_setlist