ななえ、看護師志望から“未経験”でサックスの道へ ライブ配信で掴んだ転機、TeddyLoidとの「Night Trip」

ライブ配信で変わった音楽観、シティポップへ広がった表現

――夏生奈苗名義では、2017年にシンガーとしてデビュー。2018年にリリースしたシングル『夏のメモリー』の収録曲「Na Na Na」は、『開運!なんでも鑑定団』(テレビ東京系)のエンディングテーマに起用されましたね。昭和歌謡やロカビリーのテイストを中心に、リリースを重ねていた印象です。

ななえ:そういうサウンドをメインにやってきましたね。ロカビリーとは何なのかずっと知らなかったんですけど、当時、一緒に制作していた方に「こういう曲が好きなんです」と伝えたら、「ロカビリーが好きなんだね」って。それで「あっ! 私って管楽器がいっぱい入ってる感じのロカビリーが好きなんだ」ってわかりました。

――シンガーとしての活動も楽しんできました?

ななえ:はい。コロナ前までは、全国を回ってたくさん手売りをしていたんです。歌もサックスも両方できるのが自分らしさで、それを珍しいと言っていただける感じで。あと、両方できると他のバンドとかとコラボしやすくて、名前も覚えてもらいやすかったです。

夏生奈苗 "夏のメモリー" (Official Music Video)

――シンガーとしては、m-floの☆Taku Takahashiさんがプロデュースした「シリウス」を今年の5月にリリースしましたね。シティポップテイストのサウンドです。

ななえ:今後はシティポップ方面でいこうかなと思っています。ライブ配信を始めてから6年になるんですけど、そこで自分が変化していったところもあって。みんなが好きな曲をたくさん覚えて演奏できるようにして、反応も見ていく中で、「いいものはいいなあ」って思えるようになったんです。それまでは、自分が好きなものだけを貫くのがいいことだと思っていたんですけど、柔軟になりました。ライブ配信を始めて3年くらい経った頃に、「シティポップ、いいなあ」ってなってきて。

――歌う曲でも、そういうサウンドに取り組んでみようと?

ななえ:はい。今までは1曲の中に詰め込む情報量が多くて、聴く方も疲れる感じがあったのかもしれないなと。そうじゃなくて、もっとライトな感じというか。ドライブとかでシャッフルで再生されたときに、「なんかこれ、ノれるね」みたいに自然に聴けるものにしたいと思うようになりました。シティポップだったらサックスも合うし、懐かしさを感じつつ新しさも感じられる音楽ができるので。そういうお話をして作っていただいたのが「シリウス」でした。

ななえ「シリウス」Music Video

――シティポップの良さを知るきっかけにもなったライブ配信は、どのような経緯で始めたんですか?

ななえ:コロナで現場のお仕事が一気になくなってしまった頃、周りがみんなライブ配信をやっていたんですよね。「私にはできないかもな」と思ってたんですけど、思い切って始めました。

――YouTubeに動画をアップするようになったのもその頃ですか?

ななえ:YouTubeの方が先ですね。音楽理論の発信を始めたのが最初でした。ホームページを作って、教室を始めようかなと思ったんですけど、次第に曲を吹いた動画もアップするようになって。YouTubeで画面に向かって喋る練習をしてから、Pocochaにいった感じでしたね。

――Pocochaも、すぐに手応えを感じました?

ななえ:はい。私のような感じの演奏スタイルでやるライバーさんは少なかったみたいで。私は楽譜を一切見ないで演奏するので、画面から目を離さないんですよ。楽譜を見ずに演奏することで、より自分の声として届けられるというか。それに加えて画面も見ているので、リスナーさんの反応を見逃さないんです。それがよかったのかなと思っています。

――配信に力を入れ続けてきた理由は、どのようなところにありますか?

ななえ:自分を知ってもらいたかったからです。ソロでリリースしていた頃は、知ってもらうために自分から各地に行って、お金も時間もたくさんかけていたんです。流しみたいに通りに並んでいる居酒屋を回って、「吹かせてください」と言って演奏をして、CDを売ったりしていたので。楽しかったけど、大変ではあって。

 でも、配信は家で吹いているのを全国から観に来てくれるんです。「なんて素敵な仕組みなんだろう!」と(笑)。ひとりフォロワーさんが増えるだけでも嬉しくて、「もっと知ってほしい!」と続けていたら、気づけば今の形になっていました。

TeddyLoidとの「Night Trip」で踏み出す次の一歩

――ライブ配信やYouTubeでの活動も引き続き力を入れている中、シンガーとしての新曲「Night Trip」もリリースされます。TeddyLoidさんのプロデュースですね。

ななえ:Pocochaのイベントで優勝して、TeddyLoidさんに楽曲を作っていただけることになったんです。

――楽曲を作っていただくにあたって、TeddyLoidさんとはどのようなことをお話ししました?

ななえ:「歌謡曲風もお得意なのかな?」と思ったので、最初に「歌謡曲風かシティポップ」という提案をしてみたら、「シティポップの方がいいんじゃないでしょうか」ということで、そうなりました。当時、自分の方向性について迷っていたところもあったんですけど、そう言っていただいたことで今後の方向性も定まりました。

――「シリウス」は、80’sのテイストが色濃いサウンドでしたよね。それと比べると、「Night Trip」は音色やビートも含めて、より現代的なサウンドという印象です。全体的にクラブミュージック、ダンスミュージック色も強いです。

ななえ:そうですね。メロディラインも完全に令和です。車で聴いたらノリノリになりました。低音の感じが気持ちよくて。

――聴いていると、都会の夜のドライブがイメージできます。歌詞も含めて、他にTeddyLoidさんへお伝えした希望とかはありました?

ななえ:昔、「こうしたいです」というのを言いすぎて、「もっと信用してお任せすればよかった」と反省したことがあったんです。なので今回は、ざっくりしたことだけお伝えして、あとはお任せしてみたかったんです。そうじゃないと自分の成長も止まっちゃう気がして。

――具体的には、どんなイメージを伝えたんですか?

ななえ:サウンド感についてです。「懐かしさを感じるけど、新しさも感じるシティポップ」ということだけでした。それで作っていただいたのを聴いたとき、「さすがです!」と思いました。イントロを聴いた時点で、すごく嬉しくなりましたね。

ななえ「Night Trip」

――途中で出てくるポエトリーリーディング風の〈その横顔に ノイズも消える/夜が速度を 上げていく〉は、今までにやってこなかったタイプの歌唱スタイルですよね?

ななえ:はい。ちょっと恥ずかしかったんですけど、こういう表現も今の自分に繋がっていると思います。かっこよく言えるようにいっぱい練習しました。

――新しい歌唱法という意味では、「シリウス」でラップにも挑戦していましたね。

ななえ:ラップも今までやっていなかったので、すごく練習しました。「シリウス」のとき、審査でm-floの「come again」でラップのパートがあったんですよ。それを練習していたおかげで、「シリウス」ではスムーズにラップできました。

――VERBALさんのラップ、ものすごく難しいですよね?

ななえ:めっちゃ難しかったです。歌詞の意味を理解するために、ChatGPTにたくさん質問しました(笑)。ラップの詞は独特なので、ちゃんと理解しなきゃだめだなと思って。そういうのも楽しいんです。成長して、進化している感じがするので。

――「Night Trip」は、サックスのフレーズも印象的です。

ななえ:イントロのテーマになる部分は、もともとデモに入っていて。シンセの音がかっこよくて、「このままでいいんじゃないか?」と思ったんですけど、一応サックスを録って、「使っても使わなくていいです」とお伝えしました。いい感じに音色を加工していただけましたね。加工されるのは嫌な奏者が多いと思うんですけど、私の場合は「どんどん色を付けてください」とお伝えしていました。歌謡曲とかをやったときは、加工は絶対になかったので、新鮮で楽しかったです。

――「シリウス」「Night Trip」と2曲続けてシティポップですが、この方向性は、今後も続きますか?

ななえ:はい。やっぱりサックスと歌がハマりますし、今の時代にも合っている。その一方で懐かしさもありますし、海外の方々にも聴いていただけると思うので。今後もそのサウンド感を、より追求していくつもりです。

――「Night Trip」も、歌とサックスの両方が際立つシティポップサウンドですよね。間奏のサックスソロのドラマチックなメロディも大きな聴きどころです。

ななえ:昔の昭和歌謡の間奏は、メロディを口ずさめたんですよ。ギターソロとかも。私もそういうのを大事にしています。歌メロみたいなメロディを作るのはすごく難しいんですけど、なるべく印象に残るようなフレーズを心がけています。誰でも口ずさめるような感じでやりたいなと。

――サックスと歌を融合させた活動をななえさんと同じようなスタイルで続けているミュージシャンは他にいますか? インストアルバムの中で、歌う曲を1、2曲入れることはありますけど。

ななえ:私みたいな感じは、あまりいませんね。基本的にボーカリストが他にいる形でやると思うので。

――ものすごく物理的な話になってしまいますが、歌いながらテナーサックスに持ち替え、間奏ですぐに吹くとなると、体力的にもかなり大変そうですよね。

ななえ:そうなんです。ライブハウスは地下が多いじゃないですか? 酸素が薄い中で歌って、重いテナーサックスを持ち上げて、歌った直後に間奏を吹くのは結構大変です(笑)。

――酸素吸入のマスクとか、ステージに置いているんですか?

ななえ:置きたいと思ったことは何回もあるんですけど、今のところ置いたことはないです。息が続かなくて失敗したことは何回かあります。全力でいきすぎると持たないので。

――独特なこの表現スタイルを積み重ねながら、どのような存在になっていくことをイメージしていますか?

ななえ:ライブ配信で大成した、一番身近なサックスプレイヤー、サックスシンガーになりたいと思っています。普通のアーティストさんはかっこよくて近づきがたい感じがあって、それが魅力だと思うんですけど、私は親戚の子というか(笑)。地域の人気者みたいな距離感でやってきたいです。そして、ライブ配信でここまできたので、これからも発信を続けて、たくさんの人に知ってもらって、いろいろなことに挑戦していきたいです。

――挑戦してきたい具体的な目標はありますか?

ななえ:サックスシンガーとしては、オリジナル曲でアルバムをリリースして、今までにできなかった大箱の会場でのライブに挑戦したいです。全然売れなかった駆け出しの頃にお世話になった関係者の方々、支え続けてくれたリスナーの皆さんを招待したいという思いもあります。

 そして、サックスプレイヤーとしての目標もあるんです。インストのカバーアルバムを作りたくて。昭和歌謡やムードテナーの曲をたくさん収録した、イージーリスニングのカバーアルバムをリリースしたいです。それは昔からずっと思っていますね。

 ライブに関しては、全国のイベント会場や観光地で、直接お客さんを見ながらやりたいですね。温泉施設とかでも直接手売りをしていきたいです。あと、私は2022年からライバー事務所を経営しているんですけど、所属しているライバーのみんなと作品を作ったり、イベントも企画して、その人たちを導けるようなロールモデルになりたいですね。

――ななえさんの活動を参考にしながら、配信の活用の仕方を学んでいるミュージシャンはたくさんいると思います。

ななえ:ライブ配信は、自分から挑戦できるんですよ。私もそうだったんですけど、昔は一生懸命練習しても、誰にも見つけてもらえないまま終わっていく感じだったんです。一生懸命練習しつつも、「まだまだだから」と表になかなか出なかったり。でも、ライブ配信は自分からどんどんできるんです。「誰かに見つけてもらう待ち」じゃなくて、見つけてもらうための活動を自分から発信していける。だから、「やった方がいいよ!」と伝えたいですね。

■リリース情報
「Night Trip」
2026年10月14日(水)デジタルリリース
作詞・作曲・プロデュース: TeddyLoid
フジテレビ系全国ネット「全力!脱力タイムズ」10~11月度エンディングテーマ

主要配信サービス:https://jvcmusic.lnk.to/NightTrip

■関連リンク
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