ふみの、憧れのZeppで巻き起こした大合唱 シンガーソングライターとしての多彩さ、揺るぎない歌で魅せた初ワンマンツアー

 シンガーソングライター・ふみのが、初のワンマンライブツアー『僕のすべてを知ってるような君だから』を開催。東名阪のZepp会場3公演を見事にやり遂げた。

 筆者は9月27日のZepp DiverCity(TOKYO)公演を観たのだが、何より驚いたのは、デビューから8カ月という早さでZepp規模のステージを完全に自分のものにしていたことだ。会場後方までまっすぐに伸びてくる歌声と、自然に引き寄せられてしまう立ち居振る舞いや盛り上げの上手さ。夏の間に各地で路上ライブやフェス出演を経験してきたこともあってか、すっかりステージ慣れしている姿は頼もしいばかりだった。人生の“あと一歩”をそっと後押ししてくれる1stアルバム『僕のすべてを知ってるような君だから』の世界観も相まって、聴き手の手を取って一緒に駆けて行くようなふみの自身のエネルギーが、とても気持ちよく響き渡るライブだったと思う。

 幕開けは、アルバムのオープニングトラックでもある「18」。迫力溢れる歌唱で、18歳の頃のリアルな葛藤や心の叫び、そこから生まれた小さな祈りをしっかりと歌い紡いでいく。続く「生きろ」ではエレキギターを手にギターソロを豪快に演奏し、「どっちがいい?」直後のMCではオーディエンスに話しかけてコミュニケーションを取り、アルバムで好きだった曲についてアンケートを取るなど、序盤から積極的に盛り上げていくふみの。可愛らしい恋愛描写を描いた「White lie」や親友へ贈ったという「ホットライン」では、隣の人に話しかけるような親密さと透き通った歌声の魅力を存分に発揮し、多彩な感情を表現しながらも声の芯がブレないことを感じさせた。冒頭5曲、早くもカラフルな景色が展開されていく。

 前半の大きな見どころとなったのが、「路上ライブツアーの雰囲気を知ってほしい」という気持ちから設けられた弾き語りコーナー。アコースティックギターを手に椅子に腰掛けたふみのは、アルバムに収録されていない未発表曲を立て続けに披露していく。まず「友達の唄」は、先ほどの「ホットライン」のバージョン1に当たる楽曲とのこと。会場をゆったり見渡しながらアッパーで力強いギターストロークを奏で、「ホットライン」からの曲調の変化も含めて楽しませた。「1階!」「2階!」「友達と来た人?」「恋人と来た人?」「ひとりで来た人?」「親子で来た人?」「姉妹で来た人?」「兄弟で来た人?」……と再びオーディエンスに問いかけた後は「娘の娘」を披露。祖母の娘である母、その娘であるふみのが、まるで母親の想いを代弁しながら祖母に語りかけるような歌にも聴こえ、主観と客観が入り混じるような独特なワードセンスにふみのらしさが光っていた。グッズ紹介を経て披露された「ただいま」は本人もMCで語っていた通り、『No No Girls THE FINAL』の最終審査ソロステージも彷彿とさせるピアノ弾き語りから始まる切ないバラード。三者三様の未発表曲に、オーディエンスもじっと目と耳を凝らして聴き入った。

 「変化が嫌いだけど、変われない自分のこともすごく嫌で」ーーそんな言葉から披露されたのは、環境が変わったデビュー後、周囲と自分を比べてしまって葛藤した経験から生まれた「満腹」。ピアノとボーカルのみのミニマムな編成で奏でられ、そのままピアノのアウトロに導かれるように「よくあるはなし」へと繋がっていった。どんな自分もありのまま受け入れた上で、〈貴方〉のことを素直に信じることができたら……。「満腹」で歌われる願いは、「よくあるはなし」の〈それでもあなたに近づきたくて/どんな黒も白に見える〉〈どうしてまた今日を/選んで生きる?〉という切実な想いに重なっていく。アルバムとは逆の曲順ながらも、ふみのの内面がステージ上で立体化され、観客に共有されていくような感覚はライブならではの体験だ。だからこそ、続く「うたかた」の〈うつろい 花咲き/あとはそう/君がいれば完璧でしょう〉もまた、ひときわ開放的なフレーズとなって響いたのだろう。

「時が経つのが早く感じると、1秒1秒何を頑張ってきたのかわからなくなってしまうけれど、みんな必死に生きているなって思うから。そんな私たちに」

 そう言って奏でられた「東京」では、ふみのの想いに共振したオーディエンスとの美しいシンガロングが巻き起こる。さらに、タオル回しにジャンプにコールアンドレスポンスに、たっぷり盛り上げた「ロックスター」では、バンドサポートメンバーの紹介パートで「生きろ」よりも激しくギターソロを弾いてみせたふみの。「『私がロックスターだ!』っていう堂々とした気持ちよりは、『ロックスターになりきりたい』『自分を信じて自由に生きたいよね』みたいな感じ」だとインタビューで語られた同曲だが(※)、実際にフロアを煽ってさながら“ロックスター”となったふみのを見ていると、迷いを抱えながらも、懸命に生きることを肯定する楽曲本来のエネルギーが、より力強い熱をもって響いてくるように感じられた。そして、本編ラストに選ばれたのはデビュー曲「favorite song」。「デビューしたよー!」と改めて大きな声で報告する嬉しそうなふみのの姿、〈こんな日を待っていたんだ/君に私を届ける日を〉という“この瞬間”のための宝物のような歌詞、この日一番の大合唱。熱気は最高潮を迎えた。

 アンコールでは新曲「素直未満」(『らんま1/2』第3期オープニングテーマ)を初披露。イントロからアッパーなギターサウンドがメロディアスに鳴り響き、アルバム曲ともまた異なるパンキッシュな疾走感をZeppに運び込んだ。今回のツアーグッズTシャツに着替えて、キャップを被ったふみのも弾けまくっていて楽しそう。自身の人生のストーリーを妥協なくアルバムに落とし込めたからこそ、伝えたいこと目がけてまっすぐに駆け抜けるような「素直未満」の爽快さに至ることができたのではないかーーそんな想像が膨らむくらい、未来にワクワクできる素晴らしい新曲だった。

 アコギ、エレキギター、ピアノを駆使して自ら幅広い音を奏でたり、ハンドマイクで静謐なバラードを歌い上げたかと思えば、ステージを縦横無尽に駆け回ったり。初のワンマンライブツアーにして、シンガーソングライターとしての魅力を全開にした濃いステージとなった。また、「人生で初めて観に来たライブがZepp DiverCity(TOKYO)の2F席の一番後ろだった。今日ようやくステージに立つことができて嬉しいです」と喜びを露わにしたシーンもあったが、我々が『No No Girls』や1stアルバムで垣間見たように、音楽に憧れた一人の少女は様々な人生経験と紆余曲折を経て、この場所まで辿り着いた。だからこそ、表現したいこと、届けたいこと、挑戦したいことがまだまだある。そんな気概を、パフォーマンスや歌声から存分に感じられたライブでもあったのではないだろうか。『僕のすべてを知ってるような君だから』から「素直未満」、そしてその先へ。ふみのの新たなステップに大いに期待が高まる。

(※)https://realsound.jp/2026/09/post-2534833.html

<セットリスト>
M01.18
M02.生きろ
M03.どっちがいい?
M04.White lie
M05.ホットライン
M06.友達の唄(未発表曲)
M07.娘の娘(未発表曲)
M08.ただいま(未発表曲)
M09.満腹
M10.よくあるはなし
M11.うたかた
M12.東京
M13.ロックスター
M14.favorite song
ENCORE
M15. 素直未満

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