THE ORAL CIGARETTES、苦悩の先に見出した“強さ”と“美しさ” ホールツアーと3カ月連続リリースがもたらした音楽的深化

「未完成であることが美しい」自身の“足りなさ”を肯定して生まれた「VOICE」

――そして、その自由さがあるから、次に「VOICE」がくるっていうことにもより意味が出たような気がします。「LIMIT」と「VOICE」って振り幅としては対極みたいな曲ですけど、ホールツアーに向けて書いたというこの曲はどういうふうに生まれてきたんですか?

山中:先ほど話した、自分自身がすごく苦しかった時期に、それでも3カ月連続で出すって決めてたし、ホールツアーのテーマも決めなきゃいけなかったので、嫌でもパソコンの前に行かなきゃいけない時間がずっとあって。やればやるほどどんどん自分の力のなさに心が沈んでいっちゃうんですけど、毎日朝から晩まで机に座って向き合っていると1日に1、2回ぐらいは「この感じすごくいいかも」みたいな、リスナー的な音楽的喜びを感じられる瞬間があって。「これの連続をやるしかないよな」って、ひたすらこれを求めて出るまでやろうみたいな感じでやってたんです。そうやっていく中で、1番ぐらいまで作り終わったんですけど、そのときに「VOICE」に対しても作った自分に対しても、ちょっとした“足りなさ”を感じたんです。でもそれがすごくよかったんですよね。

――“よかった”?

山中:完璧じゃなさすぎる楽曲っていうところに対してすごく腑に落ちた瞬間があったんです。「これ、今の俺すぎるやろ」みたいになって、音楽を表現する人間として、それがちゃんと楽曲に出てるっていうことはもしかしたらすごく美しいことかもしれないって思ったんです。今まで自分の音楽の能力だったり、理想像みたいなところに対して、マイナスに捉えちゃってた部分を強みに変えようって転換できた。その感覚をそのまま歌詞でもメッセージとして伝えることで、いろいろな人の背中を押すきっかけになればいいなって。そのタイミングでホールツアーのテーマも決定して、「未完成であることが美しい」っていうことを全力で伝えていこうという想いになっていきました。

鈴木重伸

――その不完全で未完成な部分っていうのは、言葉を変えると余白というか可能性だと思うんです。で、拓也くんがその部分を「俺はこうなんだよ」って肯定してさらけ出すことが、そのまま誰かを救うことになるかもしれないという。それがこの曲の美しさであり強さですよね。大層なメッセージとか強い正義を振りかざすんじゃなくて、弱さでつながれる曲っていう。その思いはきっと「LIMIT」とも通じるもので、あの曲ではそれが怒りとなって出ていたけど、それを優しい方向で表現するっていう。

鈴木:だから、この曲に対する立ち位置は難しかったです。力強さもあるし、メロウでもある。そういう曲に対して僕は最初、音の隙間をガチガチに詰めにかかったんですよ。でもこの曲はそうじゃなくて、引き締まった、バンド然とした最低限の中で成立するもので。僕はいろいろやりすぎちゃってたんです。その認識の誤差がスタートにあって、すごく難しかった。ほんまに何回もトライアンドエラーしながら、拓也にもしつこく「こっちで合ってる?」って聞きました。

山中:何度も電話したよね(笑)。

鈴木:結果、すごくいい形に落とし込めたものの、そこは自分の中でも反省点じゃないですけど、制作のときには課題として感じていましたね。

――でも、その感覚もすごくわかるんです。この曲って、壮大に、ドラマティックにしようと思ったらいくらでもできる曲だと思うんですよ。そうするやり方もきっとあると思うし、それによって生まれるものもあると思うんだけど、でもこの「VOICE」はむしろソリッドなバンドサウンドになっていて、この曲にとってはそこに意味があったんだろうなって。輪郭がはっきりした4人の音が鳴っていて、その存在がちゃんと伝わってくるっていう。ドラムもそんな感じがします。

中西:この曲ってすごく壮大な曲ではあるけど、下で支えるものがたくさん必要で。頭のパターンがサビでもずっと続くんですけど、実は四分裏にキックが常にいるっていう、ドラマーからするとすごくテクニカルなドラムになっているんです。リズムとしては常に大きいビートの曲なんですけど、その裏でずっとキックを鳴らしているというのが難しくて。それをどう捉えるのかで悩みました。実はすごい繊細な曲なんだっていうのがありました。

中西雅哉

山中:それがめっちゃ面白かった記憶があって。まさやんから返ってきたデータを見て、「あ、結構変えたな」と思ったんです。でも、自分の中で「ここは絶対に残したい」みたいなところ以外は、自分が折れる瞬間がないとバンドじゃないってずっと思ってやってきてたから、ここはまさやんっぽいし活かそう、って思って。でもその後に、1回メンバー3人で意見をまとめて俺に最後投げてきてって言ったら、あきらが元のドラムに戻してきたんですよ(笑)。やっぱ元の方がよくない? みたいな感じになって、あきらから「俺はやっぱりこっちのビートの方が好きなんだけど、まさやんになんて言おう」みたいな連絡がきて。「ありがとう、でもまさやんと喋って!」みたいな(笑)。

――板挟みだ(笑)。でもそれぐらいいろいろな解釈ができる曲だと思うし、だからこそバンド全員で納得する必要があったんでしょうね。

あきら:でも、僕も元のドラムが忘れられなくて、それゆえの良さがあるなと思ってまさやんに話したら、まさやんはドラムを変えたつもりはないって言っていて。結局、変えてしまってたんですけど、狙いは元のやつを再現したかったっていうことだったんです。だからみんなの狙いは結果的には一緒のものやったんですよね。

――そういうことだったんだ。

あきら:でも、この曲、今ライブで演奏してて思うんですけど、まだリリースもしてないときに披露して、初めて聴いて泣いてる人とかもいて。それが伝わってるっていうことだと思って、僕も少しうるっときたりしたんです。そういう相互反応というか、流れがすごい美しくて。この楽曲には拓也の苦悩が込められているので、シゲが言っていたように壮大にしすぎるのは違ったっていうのも本当に腑に落ちるし、拓也の頭の中にあったものをライブで再現して、苦悩の結晶みたいなものをお客さんに届けられるっていうのは、音楽を作る上でいちばんピュアなアウトプットなのかなと思いますね。

VOICE

「好きに立ち返る」――ルーツと向き合い、苦悩を救った「Stay the way you are」

――これはオーラルの音楽に対してすごく信頼をして、それに向き合ってくれる人たちとの密な関係の中で初めてすごく説得力を持つ曲だと思うんです。だからこれをもっと開けたものにしようとして壮大にしていったりとか、ドラマティックなアレンジにしてたりするとずれていっちゃう。ゆえにこのソリッドな音である必要があったんだと思うし、だからこそ伝わったときの感動もひときわ大きかったんだと思います。そして3カ月連続リリースのラストが「Stay the way you are」。これは「LIMIT」「VOICE」ときて結論のような曲だなと。

山中:「Stay the way you are」は「VOICE」と同時並行で作ってた楽曲ではあるんですけど、“好きに立ち返る”みたいなところをもう一回やりたかったんです。さっき話した「VOICE」を作る前の葛藤の一つであったのが……本当にそのジャンルのファンであると、そのジャンルってキャッチーでなくていいと思う部分ってたくさんあったりするんですよね。「こんなところにこんなコード進行いらんわ」みたいな。そういうのを、自分の音楽でも体感することがあるんです。「これ、サビにこんなにちゃんとしたメロディつけん方がかっこよかったな」みたいな。それなのに、それをやっちゃう自分がいて、すごく葛藤していたんです。どうしてもキャッチーにしちゃう、みたいな。で、それを活かしてやろうって思ったのが、この楽曲だったんです。

――うん。

山中:「VOICE」である程度自分の心も少し楽になったので、かっこいい曲作りたいなっていうので、もともと俺がバンドキッズだった頃に、兄貴とライブハウスに行って観ていたバンドだったり、「このバンドかっこいい」「音楽やりたい」「楽器弾きたい」と思わせてくれたバンドたちの音源を、ライブハウスの店長に電話して送ってもらって。それをいちから聴き直して自分の“好き”をもう一回見つけるみたいなことをしたんです。俺が「かっこいいのになんで売れへんかったんやろう」って思ったバンドの音楽を売ったろうと思って。インディーズ時代に見てた、自分が好きだったテイストを大きい輪っかの中で鳴らしてみようって作った楽曲が「Stay the way you are」なんです。

――この曲、ヒーロー感というか、主題歌感がめちゃくちゃあるよね。それは背景にそういう思いがあるからなんでしょうね。苦悩の果てにこういうピュアなものができたというのは素晴らしいと思います。

山中:俺もこれで完全に気持ちが救われた感じはあります。

――これができたことで、「LIMIT」や「VOICE」を作ったことにもより意味が生まれたという気がします。

あきら:「Stay the way you are」、めっちゃかっこいいですよね。カオティックではあるものの、すごいTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也というのを感じられるので。本当に当時拓也がはまってかっこいいと思っていたインディーズバンドをより尖らせたみたいな印象があるし、大きい音で鳴らせる破壊力っていうのがサビにはあって。すっごいスカッとするんですよね、このサビを聴くと。なんか、スポーツでシュートを決めたときとか、剛速球を投げた人の感情の昂まりみたいなのを感じるサビだし、サビの最後の歌詞もすっごい気持ちいいので……「おかえり」みたいな(笑)。

鈴木:ギターも、楽曲の中でノイジーなところもあれば、きれいなところもあって。この混じり方が曲の中でちゃんとまとまってるっていうのが、ほんまにすごいなと思ってます。お客さんの盛り上がり的なところにちゃんと目を向けている箇所もあるし、まだライブではやれてないんですけど、すごく風景が目に浮かぶ楽曲だなと思いますね。

Stay the way you are

――ライブで聴くのが本当に楽しみな曲だなと思います。そのライブでいうと、ぴあアリーナMMでのファンクラブ限定ライブ『BKW!! Premium Party ~THINK OUT LOUD~』があり、その後には『WANDER ABOUT 放浪 TOUR 2026 関東 編』、そして来年には『ALL-STANDING ARENA TOUR 2027「DOPE PURPLE HOLE」』も決まっています。

山中:まず『BKW!! Premium Party ~THINK OUT LOUD~』は、『AlterGeist0000』のタイミングでアリーナツアーをやったときに「アリーナ気持ちいい」ってなって。で、「自分たちの作りたいアリーナの景色を作っていくように頑張ります」みたいなことをMCで言ったんですよ。俺らはライブハウスで育ってきたのもあったから、スタンディングでぐちゃっとなってる楽しさも知ってるし、椅子でゆっくり観て楽しむ姿も、どっちも尊重したい。どっちも混ぜられたらいいな、と思っていて。で、今回の『BKW!! Premium Party』はそれをファンが叶えてくれる1日っていう。俺らからしたら、それも叶えてくれてありがとうやし、今まで長い間、すごく濃く応援してくれてほんまにありがとうっていう、ほんまにファン感謝祭。みんながただただ「ファンでよかった」って言って帰ってくれたら、それだけで大満足みたいな。

――なるほど。

山中:『WANDER ABOUT 放浪 TOUR 2026』に関しては、あと関東と北陸と関西だけになったので。もともとライブハウスの復興っていう目的から始めたけど、それが結構シーンの活性化にもつながってきたなって思うし、自分たちが誘った若手が頑張ってくれてたらすごく嬉しいっていうのも感じてる部分なんです。今回に関しては、「はよ帰ってこいよ」っていうことでまずコイちゃん(Kenta Koie/Crossfaith)のソロプロジェクト AFTERVOIDを呼んで、あとはTYOSiNっていう、俺らより上の先輩なんですけど、ずっと俺が尊敬してる人がやってるバンド。もともとラッパーだったんですけど、かっこいいバンドだし、もっと売れてほしいって普通にファンとして思うから、その2つと一緒に回ります。もう普段からのツレなので、すごく楽しいツアーになるんじゃないかなっていうので楽しみにしてます。

――アリーナツアーについては?

山中:東名阪のオールスタンディングのアリーナツアーは、もともと対バンでやろうと思ってたんですよ。でもホールツアー始まる前にみんなを呼んで「ごめん、対バンツアーでやろうと思ってたけど、ワンマンにしたいかも」っていうのをお話しさせてもらって。それはやっぱり自分たちのこれからの活動のやり方をもっと広げていきたいっていうのがあったんです。真の仲間と一緒に切磋琢磨してっていうのをずっとやってきた何年間があって、それの延長でこのアリーナも考えてたんですけど、俺ら的にはもう十分やったかもって思いました。ここからは内輪ではなく、俺たちがもっとちゃんと上がらないといけない、行くところまで行かないといけないっていう。それで腹をくくって、オールスタンディングのワンマンライブに変えました。めちゃくちゃ気合い入ってて、全部やりたいことやろうと思ってるし、全員が「オーラルやばすぎ」って、ちょっと呆然として帰っていくぐらいのやつをやろうかなって思ってます。

 

■リリース情報
配信シングル「Stay the way you are」
2026年9月16日(水)リリース/配信中
配信サイト:https://oral.lnk.to/StaythewayyouarePR
特設ページ:https://theoralcigarettes.com/feature/stay_the_way_you_are

配信シングル「LIMIT」
2026年8月19日(水)リリース/配信中
配信サイト:https://oral.lnk.to/LIMITPR
特設ページ:https://theoralcigarettes.com/feature/limit

配信シングル「VOICE」
2026年7月1日(水)リリース/配信中
配信サイト:https://oral.lnk.to/VOICEPR
特設ページ:https://theoralcigarettes.com/feature/voice 

■ライブ情報
『THE ORAL CIGARETTES ALL-STANDING ARENA TOUR 2027「DOPE PURPLE HOLE」』
2027年2月21日(日)ポートメッセなごや 第1展示館
2027年3月4日(木)幕張メッセ国際展示場1-2ホール
2027年4月25日(日)インテックス大阪 5号館

『THE ORAL CIGARETTES「WANDER ABOUT 放浪 TOUR 2026 関東 編」』
2026年11月4日(水)千葉 稲毛K’s DREAM
2026年11月6日(金)埼玉 HEAVEN’S ROCK熊谷VJ-1
2026年11月7日(土)神奈川 横浜F.A.D
2026年11月9日(月)茨城 水戸LIGHT HOUSE
出演者:THE ORAL CIGARETTES / AFTERVOID
※11月4日千葉公演はAFTERVOID(DJ Set)での出演
2026年11月11日(水)東京 FEVER
2026年11月12日(木)栃木 HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
2026年11月15日(日)群馬 高崎club JAMMERS
出演者:THE ORAL CIGARETTES / TYOSiN

『THE ORAL CIGARETTES「BKW!! Premium Party ~THINK OUT LOUD~」』
日程:2026年10月12日(月/祝)
会場:ぴあアリーナMM
開場:15:30 / 開演 17:00

FC限定先着販売:https://theoralcigarettes.com/news/detail/3215

■関連リンク
公式HP:https://theoralcigarettes.com/
公式X:https://twitter.com/oral_official
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