10月10日、松村北斗が主演を務める実写映画『秒速5センチメートル』が公開された。原作は、新海誠監督による2007年公開の同タイトルのアニメーション映画。新海と親交の深いキャストが揃う本作実写版だが、中でも新海と松村の親交は特に深い。

　新海から「最も信頼する俳優」（※1）と評される松村北斗。映画のホームページでは「内面を深く映し出す、説得力のあるキャスティング」としてこの物語の主人公・遠野貴樹役に松村を起用することは、企画当初から決定していたと明かされている。

　松村と新海の関係は、2022年公開の映画『すずめの戸締り』で宗像草太役を演じてから始まったもの。当時、声優初挑戦であった松村だが、オーディションで見事に役を勝ち取った。新海は彼の声を「松村北斗くんの声の美しさは、彼の内面の豊かさが源泉だと思います。表現への追及と、絶え間ない内省と、切実な使命感。北斗くんのそういう精神性が、草太というキャラクターにぴったりと重なりました。彼の声の芝居は鮮烈です」（※2）と絶賛していた。

　その後『すずめの戸締り』関連でイベントなどに出席する際、新海のX（旧Twitter）にて作中で草太が姿を変えられた際の椅子を写真に収め、「ほっくん」と松村に見立てて投稿していたこともある（※3）。さらに松村が岩井俊二監督の映画『キリエのうた』に出演することが決定した際には「自分得でしかありません」と喜びの声を投稿していた（※4）。

　今回の制作に際しても「僕の一番好きな声の北斗くんと、やっぱり一番好きな声の吉岡さんが出ている」「そんな二人が同じ画面で会話を交わしているのは、僕にとっては特別なご褒美みたいなものでした。贅沢なものを観させていただきました」（※5）と新海が好きだと語る吉岡秀隆の声に似ている松村の声にも同じように惹かれているのだとコメントを残している。落ち着きがありながらも凛として芯があり、しかしどこか物憂げな雰囲気のある松村の声は、俳優としての魅力のひとつだろう。

　ほかにも、実写映画『秒速5センチメートル』の監督・奥山由之、新海、松村の鼎談では「まさか自分の新作の前に北斗くんが『秒速5センチメートル』の主演なんて幸せなプレゼントがあるなんて想像もしてなかった」（※6）と話していたことも。9月17日に行われた今作の完成披露試写会では、「貴樹がどういう男なのか、明里がどういう女性なのかは、よく分からないまま作っていたんです」「でも、本作を観たら、北斗くんと高畑さん、奥山監督から、『貴樹はこういう男です』『明里はこういう人です』と、教えていただきました」（※5）と、松村とヒロインを務める高畑充希の2人を評し、松村に惚れこんでいる様子だ。

　松村は今回のオファーに、はじめは怯む気持ちもあったようだが、製作陣の熱意に加えて、新海からの「北斗くんで見たい」という言葉を受けて挑戦しようと考え、この作品に挑んだようだ（※1）。映画の完成後に松村は新海とプライベートで会った際に、新海にとって“不完全”だった『秒速5センチメートル』を実写化することで「救われた」「北斗くんでよかった」と言われたと明かしている（※7）。この新海の言葉は今の松村に自信を与え、背中を押しているはずだ。

　SixTONESとしてデビューしてからの松村は、声での出演になった『すずめの戸締り』での活躍はもちろん、『ホリック xxxHOLiC』（2022年）では『第46回 日本アカデミー賞』新人俳優賞を受賞、今年2月に公開された『ファーストキス 1ST KISS』での演技も話題となり、着実に俳優としてのステップアップを果たしている。そのステップアップの要因のひとつは、製作陣からも愛される存在感なのかもしれない。来年SixTONESはデビュー“6”周年を迎える。松村もグループ活動のみならず、俳優としてもファンを楽しませるはずだ。

※1：https://realsound.jp/movie/2024/09/post-1788199.html
※2：https://realsound.jp/movie/2022/09/post-1121908.html
※3：https://x.com/shinkaimakoto/status/1641177464733851648
※4：https://x.com/shinkaimakoto/status/1650843447404933121
※5：https://www.toho.co.jp/movie/news/5cm-movie_20250917
※6：https://www.youtube.com/watch?v=0rAEA0WW5mk
※7：https://eiga.com/news/20251007/7/