昔から良くないなと思っている仕組みが「新人の囲い込み」

アオワイファイ：昔のムラタさんのインタビューを読むと、音楽業界に対して「嘘やめませんか？」って提言してましたけど、今の音楽業界に対して何かもの申したいことはないんですか？

ムラタ：個人的にずっと昔から「これは良くないな」と思っている音楽レーベルの仕組みが1つあって。それが新人を囲うシステム。囲うだけ囲って大事な時期に何もできないまま世に放たれることがざらだし、今は自分1人でも色々やっていける時代なのに、最初から足枷をはめることで出るものも出なくなることも多いだろうから、もうそろそろね、とは思う。

アオワイファイ：僕もボカロPの知り合いが多いですけど、そういう囲われた側の話は結構聞きます。傍から見ていても「100匹囲って1匹でも育てばいいや」みたいな感じで、気付く人は「これは違うな」と思って辞めるけど、やっぱり気付かない人もいて。

ムラタ：あと近年はアニメやアニソンのヒットが話題になりますけど、僕からすると「市場規模の広がりはこれだけなのか……」と思うんですよ。日本の音楽産業をここから大きくしていくためには、それこそ韓国がK-POPで取り組んでいたように、アジアやヨーロッパ、北米、南米といった海外を視野に入れて戦う必要がある。特にスタッフ側は海外の友人なりコネクションを作った方がいいし、メディアにしても海外の媒体と交流して一緒にイベントを開催するなり、そういう細かいコミュニケーションが今後重要になってくると思います。今や言葉の問題はAIで対応できるようになってきましたし、せっかくJ-POPにフォーカスが当たりつつある今、ここで何か動かないとかな、とは思いますね。

ーーTOKYO LOGICとしても、近年はDTM特化型音楽スクールのTOKYO LOGIC ACADEMYや自社スタジオのTOKYO LOGIC UNDERGROUNDといった新しい動きが目立ちますが、今後、取り組みたいことはありますか？

ムラタ：今年度のミッションとして、音楽レーベルをしっかりやる、というのは考えています。自社だけでなく外部のアーティストとの制作もすでに動いていて。自分がレーベル出身なのでずっとやりたかったことでもありますし、やっぱり新しい人や経験に出会える機会が増えるので楽しいんですよね。他は、社員から外の会社との企画の話が立ち上がったりもしていますし、うちに入ってきたプログラマーがゲームを作るのが好きで、ヒドライバーの『HIGEDIUS』という自主制作CDのゲームを作ってゲームボーイのカセットで販売したりもしていて。あと自分がAIにハマっているので、そういうものをギュッと凝縮して何か面白いことができないか考えているところです。

ムラタがアオワイファイに求めていること

ムラタ：逆にワイファイに質問してもいいですか？　今は事務所に所属せず個人で活動している人も多いけど、事務所にいるのとフリーでは何がどう違うと思う？

アオワイファイ：マージンですね。

ムラタ：わかりやすい（笑）。でも、マージンの差があるのに、なんで事務所に所属しているのかを聞いてみたい。

アオワイファイ：TOKYO LOGICはサポートが手厚くて、楽器をプレゼントしてくださったり、楽曲提供の仕事であまりにも理不尽なリテイクのオーダーが来た時も盾になってくれますし、社内の雰囲気も良くて、クリエイター同士の関係性を含めて比較的フランクな感じで意見もしやすい、というのが大きいです。一般的な会社もそうですけど、最終的には自分の肌に合うかどうか、だと思うので。

ムラタ：なるほど。僕はもともと事務所やレーベルなんて必要ないと思っていた人間なんだけど、実際にやってきてやっぱり必要だなと思った瞬間があって。やっぱり1人だとこの業界の攻略はかなり難しいなと。資本効率も悪いというか……あとは、やらない人が多いんだよね。自分で自分の尻が叩けないというか……（笑）。

アオワイファイ：じゃあ事務所としては僕に何を期待しているんですか？

ムラタ：具体的にどうこう言うつもりはないけど、基本的に目標は高く持っていて欲しいし、より多くの人に自分の音楽を届けるためには何が必要なのか、常に自分と向き合って考えて欲しいとは思う。自分は自分のために何ができて、それは人のためにもなるのか。そういう自問自答を表現するのがアーティストだと思うので。で、最終的にはプライベートジェットで仕事をするところまでいきたい。「次の仕事はラスベガスでDJだから羽田に急ごう」とか、かっこよくない？

アオワイファイ：あまりにもかっこいいですね。

ムラタ：やっぱりそれくらいの夢を持ちたいし、そういう業界であってほしいんだよね。日本の音楽市場は9000億円超だけど、世界の音楽市場は8兆円あるっていう話だし。それこそYOASOBIも海外のフェスに出たりしているから、ワイファイもアメリカで「ブルーワイファイ」って呼ばれるくらいになろう（笑）。

アオワイファイ：いいっすね。僕は野球場で始球式をやるのが夢で、いつの日か阪神甲子園球場でその夢を叶えるために頑張っているんですけど、大谷翔平さんが現役の間にドジャースタジアムにも立ちたいです（笑）。

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