鈴木愛理が3月20日に4thアルバム『28/29』をリリースした。2022年2月リリースの前作『26/27』以降に発表された「ハートはお手上げ」「最強の推し！」といったシングル曲はもちろん、ライブでのみ披露されていた楽曲群なども収められており、まさにタイトル通り鈴木の28歳から29歳までの2年間を封じ込めた、マイルストーンのような作品となっている。そこで本稿では、鈴木愛理という表現者が刻んできた2年間の足跡を大まかに振り返ってみたい。

　この期間の大きなトピックとしては、まず2022年6月に芸能デビュー20周年、翌2023年10月にCDデビュー20周年を迎えたことが挙げられる。2002年当時、8歳だった鈴木は『ハロー！プロジェクト・キッズ オーディション』に合格。翌2003年にモーニング娘。の田中れいな、キッズの同僚だった夏焼雅との3人組ユニット・あぁ！の一員としてデビューシングル『FIRST KISS』をリリースした。これを皮切りに、その後鈴木が℃-uteおよびBuono!の一員としてみるみるうちに頭角を現し、アイドルシーンにおいて類いまれな存在感を示していくことになったのは周知の通りだ。

　20周年という大きな節目を鈴木自身もかなり重要視していたようで、コンサートでは20年間の芸能生活を総括するような内容を繰り広げた。2022年11月から2023年1月にかけて行われたライブツアー『鈴木愛理 LIVE PARTY No Live,No Life??』で披露された“20周年メドレー”は、前述の「FIRST KISS」のほか、キッズ時代に参加したモーニング娘。やミニモニ。の楽曲、そしてもちろんハロプロ時代の主戦場であった℃-uteやBuono!の楽曲、さらにはソロデビュー後の楽曲までを時系列で追う内容。しかもそれが3本に分割されてセットリストの要所に組み込まれたとあって、さながら話数の多いテレビアニメをコンパクトにまとめた劇場版三部作のような巧みな構成でファンを喜ばせた。また2023年はハロー！プロジェクトの発足25周年にもあたるということで、9月にはそれを記念するライブイベント『Hello! Project 25th ANNIVERSARY CONCERT』が開催。鈴木はそこで田中、夏焼とともに「FIRST KISS」をサプライズ披露している。

　そんな節目だからなのか、はたまた単なる偶然の巡り合わせなのかは知る由もないが、この2年間は鈴木にとって大いなる飛躍の年になったと言っていいだろう。無論、それ以前からハロプロやアイドルに関心のある層にとっては「鈴木愛理」という名前のバリューは絶大なものがあったが、その認知度や影響力が一般層にまで拡大、浸透した感がある。

　中でも象徴的だったのは、南海キャンディーズ・山里亮太がMCを務めるバラエティ番組『あざとくて何が悪いの？』（テレビ朝日系）に2023年10月より新MCとして抜擢されたことだ。この番組はもともと山里、田中みな実、弘中綾香アナウンサーの3MC体制で人気を博したコンテンツとしてよく知られている。それが山里と鈴木の2人体制になるということは、すなわち局の編成に「田中と弘中アナという強力な2人が抜けた穴を鈴木1人で十分に埋められる」と判断されたということにほかならない。このキャスティングがテレビ局の上層部を納得させたという事実は、現在の鈴木が2人に比肩しうる存在であると一般的に認知されていることの証明であると考えていいはずだ。そこには、2021年より続く音楽教養番組『クラシックTV』（NHK Eテレ）でピアニスト・清塚信也とともにMCを務め好評を博している実績も少なからず影響していることだろう。

　また、アニメ／アニソンシーンにおける彼女の存在感も順調に拡大の一途をたどっている。2022年4月クールで放送された『かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-』では自身初となる単独名義でのアニメタイアップを獲得し、今回のニューアルバム『28/29』にも収録された歌謡ポップナンバー「ハートはお手上げ」（作詞：高橋久美子／作曲：水野良樹／編曲：本間昭光）でエンディングを飾った。さらに同年12月に劇場アニメとして先行公開され、翌2023年4月よりテレビ放送されたスペシャルアニメ『かぐや様は告らせたい-ファーストキッスは終わらない-』でも鈴木がエンディングを担当。そのシンフォニックなピアノバラード「heart notes」（作詞：meg rock／作曲・編曲：杉山勝彦）も、もちろん『28/29』の中でじっくり聴くことができる。

　アニメ関連でいうと、ほかにも2022年8月には世界最大級のアニソンイベント『Animelo Summer Live 2022 -Sparkle-』にソロとして2年連続となる出演も果たしており、12月にはかねてよりオーイシマサヨシとともにMCを務める配信番組『オーイシマサヨシ×鈴木愛理のアニソン神曲カバーでしょdeショー!!』の有観客イベントも初開催。なお同番組では、2023年6月放送回で鈴木がYOASOBI「アイドル」（アニメ『【推しの子】』オープニングテーマ）のカバーを披露したところ、瞬く間に1000万回再生を突破するなど大きな注目を集めた（2024年3月下旬現在は1400万回再生を突破）。その縁も手伝ってか、2023年11月にはAmazon Musicの「もう聞いた？」キャンペーンCMにて『【推しの子】』の登場人物・星野アイとの共演が実現。鈴木は「え、そんな世界線ってあるんですか？」という驚喜の公式コメントを発表している。