今が私の“アイドル人生”のピーク

――緊急事態宣言の頃は、どう過ごしていたんですか？

中井：ゲームをしていました。でも、自分を見つめ直すきっかけにもなって。それでCloudyCloudy（NGT48内のユニット）やお洋服のブランド（Recandy）を作ろうと思ったし、あの時期がなかったら、周りへの感謝もないままだったと思います。

――NGT48を再び盛り上げるために、何をするか考えたこともありました？

中井：グループが前に進めない限り、中にいる私もこのまま。それまでは自分のことでいっぱいいっぱいで、結果的にはNGT48の入口になっていましたけど、ここで私がグループを蔑ろにしたら、バラバラなまま。今NGT48を盛り上げることを自分がやらないといけないのだと、ちゃんと気づけたのがその時期でした。

――メンバーとの関係も変わりました？

中井：みんながどう思っていたかわかりませんけど、私はちゃんと向き合うようになりました。前は自分が良ければ満足だったのが、それではダメだと。一緒に公演に出ていても、誰が何を頑張っているとか、何を好きとか全然わからなくて。メンバーが盛り上がっている話にも、私はついていけない。これが今までの代償かと思いながら、自分も輪の中に入るように意識し始めました。せっかく仲間がいるのにずっと目を逸らして、もったいないことをしてきましたね。グループで何かを乗り越えるにも、私1人だけ同じことを感じられなかった。なので、メンバーをちゃんと見たうえで、自分の立ち位置を考えるようになりました。

――小越春花さんたち後輩にも、すごく慕われていますよね。

中井：そう言ってくれているだけかもしれませんけど（笑）。でもそういう子たちが私とコミュニケーションを取ろうとしても、前までは私が一方的に壁を作っていました。東京でお仕事をしていると、グループ内で浮いている感じがして、ずっと後輩との距離感が掴めなかったんです。それが最近、やっと掴めるようになってきました。

――NGT48では、地方グループとしてのやり甲斐も感じましたか？

中井：地元の人に愛されることが、NGT48が前を向くための必要条件だったので。誠心誠意向き合った結果、今は新潟のいろいろな企業さん、メディアさんがNGT48にすごく協力してくださって、ネットワークもできました。メンバーもそれぞれ、新潟のいろいろなところで活躍しているのを見ると、私たちが頑張ってきたことは間違ってなかったと思います。

――新潟のローカル局の番組は、いわゆるバラエティ番組とは違いますか？

中井：愛を持って接してくれるのを、私は人一倍感じるタイプで、新潟のテレビ局の方には、それがすごくあるなと。私のキャラクターやNGT48での活動を踏まえたうえで、お仕事を振ってくれて、中井りかのままでいられる台本を作ってくれる。普段から地元での私を見てくれていないと、できないことですよね。誰にでもわかりやすい中井りかを誇張してくれるのも、ひとつの愛かもしれませんけど、私はそれだと疲れてしまったので。新潟の人たちは温かいなと感じます。

――8年間のアイドル活動を通じて、人間としての成長も大きかったですか？

中井：学生の頃、私は人間関係を作るのがめちゃくちゃ下手だったので、女の子だけのグループに入って大丈夫なのかと思っていました。人前に出ることもそんなに好きではないし、なぜアイドルになろうとしたのか、今でも不思議です。どこかで自分の殻を破りたかったんでしょうね。私は他のことでは頭が回るのに、マネージャーでも誰でも1対1で対峙するとパニックになってしまって。まともなコミュニケーションを取れるようになったのは、ごく最近です。

――学生時代はクラスで孤立していたんですか？

中井：小学校では基本一人ぼっちで、中学で調子に乗り始めて、高校ではバイトしかしていません。友だちはいましたけど、人間を信用できないから、利用価値のある人しか周りに置かないというか。「人間関係リセット症候群」というのを最近聞きますけど、私は本当にそれでした。だけどアイドルになったら、ファンという今までのカテゴライズにない人たちがいて。

――確かに、特別な存在ですよね。

中井：メンバーは友だちやバイト仲間のカテゴリーに入れられます。でも、ファンという第三者から見られていることを意識したとき、今までと同じ人との関わり方ではよくないと思い始めました。最初は自分を作ってましたけど、だんだんちゃんと向き合えるようになって。そこでようやく社会性を学んで、まともに話せるようになったんです。人との関わり方を学んだのは、アイドルになって得た一番大きいものかもしれません。

――いろいろあったアイドル人生でしたが、いい形で卒業できそうですね。

中井：本当に最高の環境で卒業できます。自分らしく頑張ってきて、周りでメンバーが見てくれて、全部が揃ったところで、アイドルを楽しく終えられる。振り返ると、今が私のアイドル人生のピークなのかなと思います。