『MAN WITH A "BEST" MISSION』インタビュー

MAN WITH A MISSIONはなぜモンスターバンドに成り得たのか Jean-Ken Johnnyに聞く、10年の葛藤と不変の信念

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ーーMWAMが登場してからの10年を振り返ると、日本の音楽シーンが大きな変化を迎えたタイミングでもあったと思うんです。と同時に、音楽の聴き方もフィジカルからデジタル、さらにサブスクリプションサービスと変化を重ねてきました。

Jean-Ken:そうですね。特に我々が活動を始めた2010年という年もそうでしたし、そこからの10年は本当にめまぐるしかったですし。特に僕は音楽シーンそのものよりも、インフラの激変ぶりが単純にジャンルにも影響を及ぼしたのかなという印象を受けますね。

ーー例えば、音楽の聴き方の変化が制作など活動に変化を及ぼすことは?

Jean-Ken:やっぱり、単純に心理的な影響はものすごく大きかったですね。自分が音楽を手に取って聴いていたのは、それこそCDというものが一番多かったわけで、それがデジタルに取って代わるとなると技術的な面で音が変わるだとか、そういった影響はもちろんあるんですけど、聴かれ方として「単曲買い」という発想が増えたことによって、取捨選択がものすごく無感情にできてしまうようになった。そこにずっと「勿体ないな」と感じていたし、今も感じています。考え方的にすごく古いオオカミなのかもしれませんけど、そこで効率化や利便化してしまうと音楽を発見するときの無駄な喜びというものが削除されてしまうんじゃないかなと。

 ただ、そういった方向にユーザーが流れてしまうというのは仕方ないことですが、それに合わせて音楽が変わってしまうというのは本末転倒のような気がします。我々は「作品」だと言い張りながら音楽を作っていても、結局購入する側には「アイテム」でしかないという考え方をする方ももちろんいらっしゃいますので、そこでのバランスや葛藤というのはこの10年ずっと抱えています。

ーーサブスクリプションサービスが普及したことで、新しい音楽をどんどん見つけられるという点では便利な世の中になりましたけど、一方でイントロだけを聴いて「イマイチかな」と思ったらすぐに飛ばせてしまう。その影響もあってか、海外のヒットチャートに目を向けると最近は2~3分とコンパクトな楽曲ばかりが上位を占めています。

Jean-Ken:本当におっしゃる通りだと思います。人間が抱かなければいけない感情というものまでを効率化してしまっているというか、選んでいる感情の処理速度まで制御しようとしている。効率化や利便性ばかりを求めて、人が無駄だと思っているものを勝手に削除してしまっている動きを、僕は生きものとして勿体ないなという気がしています。

ーーそんな中で、MWAMとして作品を制作するときに一番こだわるポイントは?

Jean-Ken:やっぱり「人に届ける」ということ、これはずっと変わらないのかな。音楽を作る上でそこが常に頭の片隅にあって、絶対になくならないですし。結局、音楽というのは人に聴いてもらって初めて音楽として成立すると思うんです。100万人が100万通りの感情を抱くから、初めて音楽に意義が生まれる気がするし、万人が聴いて共鳴するというのが一番大事だと思っている。と同時に、自分自身の心が震えるかどうか、自分の心が震えたものがちゃんと投影できているかも重要になってきますよね。自分がいまだに憧れているロック像、その自分のかけらの一部が曲に投影できているのかどうかが第一前提なのかなと思います。そうじゃないと、作り届ける意味がなくなってしまいますからね。

答エハヒトツ、コノ姿ガスベテヲ払拭スルンデス

ーー聴いた人と共鳴・共有するという意味では、ライブも重要になってくると思います。MWAMは気づけばアリーナツアーや阪神甲子園球場でのスタジアムライブなど、かなりライブの規模が大きくなっています。自分たちのライブがここまで受け入れられた理由について考えることってありますか?

Jean-Ken:理由は深く考えたことはなかったですね。自分たちの活動の中で、何かの蓄積が功を奏してこうなっているとか分析はもちろんしますけど、それでも何か理由があるとすれば……一番は「そこに立つことを想像していた」ことなのかなと思います。音楽を初めて聴いたときから、バンドをやりたいと思い始めたときから根拠のない自信みたいなものがあったような気がしていて。例えば、自分が映像で観たウッドストック・フェスティバルのすさまじい会場で、「人が波打っている中で演奏する曲を作るんだ」みたいな、青臭いガキが豪語するような夢を頭の中で反芻していることは、恥ずかしながらいくらでもありましたしね。今はおぼろげながら想像していた場所に立てているけど、それでも「もっとデカいところで何かをしている」という想像をいまだにしちゃうんです。

ーーなるほど。MWAMは今や大型音楽フェスの常連でもありますが、いわゆるロックフェスだけでなく、いろんなジャンルがごった煮になったフェスや、コアなジャンルに限定されたフェスなど、どこにでも出ていける強みがありますよね。なぜそんな存在になれたんでしょう?

Jean-Ken:答えはひとつ、この姿がすべてを払拭するんです(笑)。自分たちは声を大にして「ロックバンドです、ロックをやっています」と言いますけども、それ以上にこの見てくれがジャンルなんかどうでもよくさせているというのは絶対にあると思うんですね。これが受け入れられるひとつのきっかけになって、さらに音楽によりフォーカスを当てるきっかけにもなっているような気がします。

ーー確かに。この強みはMWAMならではですものね。

Jean-Ken:面白いもので、あまりにも突拍子もない姿ですと、逆に音楽にフォーカスするんですよね(笑)。これがいわゆる通常のアーティストだと、「今日はどんな衣装、どんな髪型なんだろう?」とか気になるじゃないですか。我々、そこは気にされませんから(笑)。だから、逆に音楽にフォーカスするという。

ーーとなると、例えばMWAMのことをまったく知らない人が、このベストアルバムを通して初めてMWAMの楽曲に触れたとき、どう感じるのかがすごく興味深いなと思って。

Jean-Ken:結局人間って、「どんなバンドなのかな?」と見た目を想像すると思うので、まさかこの姿だとは思わないでしょうね(笑)。

ーー(笑)。しかも、曲ごとに幅広いサウンドで味付けしていますし。だからこそルックスが想像できない存在でもあるのかなと。

Jean-Ken:それこそ少しだけ先ほどの質問に戻りますけども、「自分たちの軸ってなんだろう?」と突き詰めると、その混沌としたハイブリッドさなのかなと。我々が今生きている時代もそうですし、自分たちがずっともがいて生きてきた時代も、混沌としている感情をずっと抱えていると思うんですね。自分で想像しがたい、本当に解析しようのない、説明しようのない葛藤って誰しもが抱くと思うんですけど、ではなんで葛藤を抱くかというと、まっさらな心理というものが絶対にあると信じているから。その心理というのをいまだに引きずっていたりもして、それらが楽曲の歌詞だったり音楽のハイブリッドさに表れているのかなと、今話していて思いました。

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