『fragment』インタビュー

片平里菜×小西君枝が語り合う、心を豊かにする人との出会いと“音楽と食”の共通点

味も料理も、記憶を大事にしたい(小西)

ーー考えてみると、高校生の頃に書いた「夏の夜」と上京していろんな経験をした中で生まれた「からっぽ」が同じCDの中に共存しているのは、興味深いことですよね。

片平:確かに。デビューしてからは5年だけど、曲の年齢はもっと幅広いですものね。10代後半から20代半ばまで。でも、キミちゃんみたいな大人の女性に共感してもらえることはめちゃくちゃ嬉しいです。

小西:共感しまくりだよ(笑)。女の子の気持ちを描いているというのもあるかもしれないけど、懐かしさで「ああ、そうそう!」というのもあるし、今の自分ではっと気づくこともあるし、年齢は関係ないかなと思う。

ーー食にもありますよね、「そうそう、この味!」みたいなことが。

小西:懐かしい味を久々に体感すると、子どもの頃を思い出したりとかね。記憶に残るってすごいことですよ。だから私は味も料理も、記憶を大事にしたいと思っているんです。

ーー音楽の場合、ベストアルバムを作るということは自分の過去とも向き合うことになるわけですよね。

片平:ふふふ。結構自分の音楽に泣かされることはありますよ。当時の情景がフラッシュバックして、「ああ、こんなに大切な時間を過ごしていたんだな」ってあとになって気付いたりとか。それこそこの5年間というのは、アルバムタイトルとかこのアルバム自体が放っているオーラどおり、すごく大切な時間。右も左もわからなくて失敗したこともあったし反省もあるけど、それがなかったら何も学べなかったし、逆にいろいろ経験できたことが強みに変わったと思います。だから、このアルバムをもってまた活動できるのは最強だと思います。本当に愛おしくてたまらない作品になりました。

ーー各ディスクに付けられた「darling」「honey」というサブタイトル自体が、すべてを物語っていますものね。

片平:そうなんです。特別洗練されているわけでもないし、まだまだ未熟だなとは思うんですけど、惰性で作ったものはひとつもない。そう思うと、可愛くてたまらない曲たちですね。しかも、それぞれの曲に対して自分だけじゃなく、いろんな人が気持ちを入れ込んでくれているんだから、より大切なんです。

ーー先ほど小西さんがおっしゃったように、音楽も食も結局は思いがすべてなんでしょうね。曲も料理も人と人のつながりがあってこそですし。

小西:ひとりでは生きていけないですし、人との縁やつながりは大事だなと思います。

片平:うん、人ですね。私はこの1年、人にめちゃくちゃ癒されましたから。実家とか地元にいたときは周りに人がいるのが当たり前だったから、どちらかというとひとりの時間を大切にしたくて、積極的にひとりになりたがったけど、東京ではひとりが当たり前だから人との出会いや良い縁やつながりは大切にしたいなと思って、逆に自分から求めるようになったし。それで、どんどん好きな人が増えていって自分の世界が広がった。曲を作る人って自分が出会った人や自分が見てきた、聞いてきたことがすべてだから、余計に大切なんです。

自分が選んだ世界をどれだけ広げていけるかが大事(片平)

ーー片平さんをデビュー時から見てきて感じるのは、そうやって人を引き寄せる魅力が人一倍強い人なのかなってことでして。

片平:かまってちゃんなのかなあ(笑)。確かに自分から求めてはいますよ。キミちゃんのこともお店に入って「いつも素敵だな」と思って見ていて、でもお仕事中だし話しかけられないしなって壁はあったけど、ただ買って帰るだけじゃ味気なくて会話したかったから。だって、楽しいほうがいいじゃないですか。もちろん孤独な時間も大切だけど、同じ時代を過ごすんだから、なるべく人と生きたいと思うし、勿体ないなって。私、人見知りですって自分から言っちゃう癖があるけど、そのままだともったいないと思うんです。

ーーその感覚は、今回のベストアルバムの収録曲にも通ずるものがありますよね。いろんなアーティストさんがアレンジや演奏で参加していて、それこそTHE BACK HORNと再レコーディングした「最高の仕打ち」なんてまさにそういうつながりから生まれたものですし。人とのつながりから生まれた音楽の、最初の集大成がこのアルバムなのかなと。

片平:曲ごとに顔ぶれが違いますし、本当にそうですね。結局、私は人がいないとひとりでは何にもできないんだと思います。

ーー人に対する思いの強さが、活動の原動力にもなっていると。

小西:それがなかったら、今の仕事はしてないかもしれないですね。だったらほかの仕事でもいいなと思うし。結局、私は人が好きなんですよ。

片平:確かに。私も同じです。

小西:里菜ちゃんと一緒で、人が好きで寂しがりなんだと思う。人がいるのが嬉しいから、心を込めて自分ができることや得意なことを届けたいんです。

ーーそんな片平さんがここから6年目、7年目とどんな道に進んでいくのかも楽しみなわけですが。

片平:今は選択肢を広げすぎていて、迷っているというのもあって。それは幸せな悩みですけどね。今までは人に選んでもらうことが多くて、例えばデビューにしても大人が私を引っ張り上げてくれてこの世界に入ったわけですけど、そこからいろんな経験をさせてもらって、いろんな人と出会ってこれだけの曲を作って届けた。5年間でひととおり経験したことで、今度は自分が選んでいく番なのかなって。でも、それによって間口が狭くなるわけじゃなくて、自分が選んだ世界をどれだけ広げていけるかが大事なのかなと思います。

ーー20代前半での経験があったからこそ、その境地にたどり着けたわけですものね。

片平:はい。なので、これまで携わった方全員に感謝を伝えられるぐらい、大きくなりたいと思っています。

(取材・文=西廣智一/写真=伊藤惇)

■リリース情報
『fragment』
11月14日(水)
完全数量限定生産盤(2CD+DVD):¥4,500(税抜)
通常盤(2CD):¥3,000(税抜)
<CD収録曲>初回、通常共通
Disc1 darling(全13曲)
M1.女の子は泣かない
M2.誰にだってシンデレラストーリー
M3.Oh JANE
M4.CROSS ROAD
M5.夏の夜
M6.この涙を知らない
M7.愛のせい
M8.Love takes time
M9.煙たい
M10.Come Back Home
M11.amazing sky
M12.最高の仕打ち
M13.からっぽ

Disc2 honey(全13曲)
M1.HIGH FIVE
M2.誰もが
M3.baby
M4.ラブソング
M5.なまえ
M6.小石は蹴飛ばして
M7.Party
M8.異例のひと
M9.結露
M10.Hey boy!
M11.BAD GIRL
M12.心は
M13.始まりに

アルバム特設サイト

■ライブ情報
『片平里菜 live 2019 fragment live darling & honey』

day1 darling  
2019年2月10日(日)大阪 なんば Hatch

day2 honey   
2019年2月24日(日)東京 Zepp DiverCity

<チケット>
片平里菜オフィシャルサイトにて先行販売を12月1日(土)~12月10日(月)まで実施

片平里菜オフィシャルnote
片平里菜オフィシャルTwitter
片平里菜オフィシャルサイト

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