『戦国アクションパズル DJノブナガ』インタビュー
中田ヤスタカが考える、ゲーム音楽制作論 「僕じゃないと取れないバランス感がある」
「誰かにとっての初めてになりたいって、最近常に思っている」
ーーそうだとすると、中田さんの楽曲は普段、J-POPの領域においてキャッチーさやフックの強さが際立っていますが、ゲーム音楽を作るにあたって、あえてその“引っかかり”を消したこともあったのでしょうか。
中田:ゲーム中には効果音もたくさん入ってくるんですけど、その音階も僕が指定してるんですよ。なぜかというと、ゲームをプレイする中で、すべての要素が合わさったときにグラフィックも音楽も「背景」にならないようにしたくて。楽曲の展開も、Aメロからスタートしてサビに行くのが普通なんですけど、プレイヤー次第で曲の流れがどうなるかわからないというゲームなので、それも大きく作用していると思います。
ーーいま話してもらったように、ゲーム音楽というのは、そのタイトルが持つ操作の難度やユーザーの環境など、ハード面での要素も音楽に影響してきます。その面で一番面白かった・苦労したポイントはありますか?
中田:うーん。今回はちょうど良かったかもしれません。例えばリアルなキャラクターで実写に近い世界観だと、こういう音楽にはならなかっただろうし、バキバキのDJものでもこうならなかった。いま、僕自身が「カッコつけてクールにしようとしすぎていないものがカッコいい」というモードに入っているので、その状況とはバッチリ噛み合いました。こういうポップな武将キャラがたくさん出てくるなかで鳴るダンスミュージックというのは、作っていても楽しかったです。
ーー自身の現在のモードが色濃く反映されていると。
中田:昨年の同じ時期は『何者』の劇伴でピアノの弾き語りみたいなものも作ったけど、それとも今のモードはまた違いますし。いまソロアルバムとして作っている音楽も、今回みたいにチップチューン風にするとその音に耳が行くかもしれないけど、もう少しビット数を挙げたーー32ビットとか64ビットみたいなものを使っていて。例えばストリングスも、壮大にしようと思えばできるんですけど、「その当時のハードウェア音源ではこれが限界でした!」みたいなものをあえて使ってみたりしているので、タイミング的には本当にちょうど良かったです。なので、今回作った音楽は、僕のソロアルバムにも繋がっていると思ってもらえれば。
ーーそれを聞くと、ソロアルバムに向けて期待が膨らみますね。そのうえで今回の音楽を聴くと、中田さんのルーツや通ってきた道が色濃く表れながら、近年のトレンドも取り入れているなと感じるんです。CAPSULEの『ハイカラ・ガール』『phony phonic』『MORE! MORE! MORE!』『WAVE RUNNER』が一緒になって、そこに近作であるPerfume「if you wanna」のようなフューチャーベースサウンドまで合流してきたような。
中田:なるほど……。自分が20代の時には、3年前とか5年前のことを思っていたかもしれないけど、いまはもうデビューから20年が経とうとしているわけで。自分が何をやってきたとかどうとか、知らない世代もいるんですよ。だからいちいち説明するのも面倒だし、「全部新曲で良いよ!」と思っていて。自分が中3だったら、「中田ヤスタカは以前にこういうのをやっていて〜」なんて体験しないじゃないですか。同じ人をいいなと思っても、わざわざ10年前や20年前の曲を聴きたくもならないだろうし。いま好きになったらそれより後にリリースする作品を良いと思ってくれる。僕もずっと新人の気持ちで作り続けたいし、世の中の人はそうなりつつあるんじゃないですかね。
ーーサブスクリプションサービスも普及して、様々な時代の音楽を並行に参照できるようになりましたし。
中田:そう。自分がチョイスしたいなと思うものだけでサウンドを作っていきたいし、自然とそうなっているというか。何でも選べるようになったからこそ「この人がこれを作って、それに影響されてこの人がこれを作って」というのがより短いタームで起こるようになっていて。みんな「昨年は、2年前は〜」って言うけど、僕にとってはもっと長い期間で見た同じ一つのタームにしか思えないから、その一つのタームに自分の全部を入れたくて。
ーー特にクラブミュージックにおいては、サブジャンルの移り変わりと増加のタームがどんどん短くなっていますからね。
中田:いま流行っている音楽は、僕自身がルーツになっているジャンルもあると思うんですけど、だからといって「自分がルーツだぜ」とは言わないでやっていきたいんですよね。かつてエレクトロが世界的に流行したときに、音楽業界の人に聴かせると「80年代にこういうのあったよね」って色んな人に言われたことを思い出すんです。そんなことを言われても、「俺は新曲として作ってるんだから、80年代の話されても面白くないんだけど」と感じるわけですよ。もちろん、モチーフにはしていたけど、それを自分世代の感覚で聴ける状態にしたいと考えてやっているし、その時代のものをそのまま聴いても良いと思わないから新曲として色んな要素を足しているわけですから。
ーールーツの大事さもわかる反面、その感覚もすごく理解できます。
中田:もちろん、ルーツになったものはルーツとして楽しめばいいし、自分自身も昔作った音源を引っ張り出してくることもあるけど、それをそのまま聴かせたくはないわけで。いつも新曲がベストバランスであり、一番面白いものだと自分は思ってるし、それに共感してくれる人と一緒にいたいんです。今回のプロジェクトも、これがきっかけで初めてちゃんと音楽を聴こうと思ってくれたら最高だし、それが何歳でも嬉しい。いまはそういうモードかもしれないですね。僕がその誰かにとっての初めてになりたいって、最近は常に思っています。
(取材・文=中村拓海)
■リリース情報
『戦国アクションパズル DJノブナガ』
9月13日より事前登録受付スタート中
事前登録サイトURL
■ライブ情報
『中田ヤスタカDJ TOUR 2017』
日程・会場
<第一弾 情報>
9月22日(金)仙台LUXS
9月23日(土)京都WORLD
10月14日(土)岡山YEBISU YA PRO
11月11日(土)大分Club FREEDOM
11月25日(土)山梨 KOFU101
12月9日(土)静岡 CLUB 51 - fifty one -
12月15日(金)札幌 Riviera
12月16日(土)新潟NEXS
12月22日(金)東京 ageHa
■関連リンク
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