EXILE THE SECONDはブラックカルチャーをどうエンタメ化した? DJ YANATAKEのライブ評
EXILE THE SECONDが、全国アリーナツアー『EXILE THE SECOND LIVE TOUR 2016-2017 "WILD WILD WARRIORS”』を現在開催中である。セルフプロデュースにより、音楽性とパフォーマンスの両方でLDHの新局面を提示するエンタテインメントは、長くクラブシーンで活躍してきたDJの目にはどのように映るのか。レコードショップ「Cisco」のヒップホップ・チーフバイヤーとして宇田川町の一時代を築き、Def Jam Japanを立ち上げるなど、日本のヒップホップシーンの重要な場面に関わってきたDJ YANATAKE氏に、3月10日の神戸公演を観てもらい、その感想を語ってもらった。(編集部)
EXILE SHOKICHIとの出会い
EXILE SHOKICHI君が昨年4月に1stソロアルバム『THE FUTURE』をリリースした際、僕はプロモーション用のDJ MIXの制作を担当させていただきました。SHOKICHI君の担当A&Rであるavexの櫻井克彦君は、昔から一緒にヒップホップシーンで活動してきた友達で、彼から依頼を受けたんです。『THE FUTURE』は、聴いてみたら思いのほかヒップホップ色が強くて、トレンドもしっかり押さえてある仕上がりだったので、DJプレイにも向いていました。その流れで、SHOKICHI君は僕がパーソナリティーを務めているラジオ番組『INSIDE OUT』(block.fm)に出演してくれて、どんな音楽に影響を受けてきたかを話してくれたのですが、ブラックミュージック全般、特にヒップホップにすごく詳しくて驚きました。僕のラジオはコアなヒップホップ番組なのですが、そのリスナーにも届くくらい深い話ができたのが印象深かったです。だから、SHOKICHI君がEXILE THE SECONDでどんなパフォーマンスをしているのかは、すごく気になっていました。
今回、神戸で鑑賞させていただいたEXILE THE SECONDのライブ「WILD WILD WARRIORS」は、僕にとって初めてのLDH体験で、とても刺激的でした。まず大前提として、長らくロックやアイドルポップスが主流になっている日本の音楽シーンで、ブラックミュージックを志向するアーティスト集団が、これだけの規模で完成されたエンタテインメント・ショウを作り上げていることに驚きました。ダンスを軸としたブラックカルチャーを、Jポップのフィールドにどう落とし込み、いかに拡げていくのか。LDHならではの回答を観ることができたのは、僕にとっても収穫です。
散りばめられたブラックミュージックのエッセンス
たとえば、開演前のDJタイム。友人でもあるDJ SOULJAHが、ビギー(ノトーリアス・B.I.G.)の曲から回し始めて、ドクター・ドレーや50セントなど、90年代ヒップホップのクラシックを繋いでいき、最後の方ではビッグ・ショーンの新譜までかけていました。ライブ前日の3月9日はビギーの命日だったので、そういう選曲になったんでしょうね。余興として気が利いているし、普段はUSのヒップホップを聴かない人も、心地よく楽しめる演出だったと思います。
ヒップホップに限らず、ブラックミュージックのエッセンスを感じさせる演出は随所に散りばめられていて、思わずニヤリとさせられるポイントも多かったです。特に印象的だったのは、SHOKICHI君がソロパートで明らかにマイケル・ジャクソンを意識したパフォーマンスを披露していたこと。衣装、ダンス、歌に至るまで、マイケルへのリスペクトが感じられて、さすがはSHOKICHI君だと感じました。それ以外にも、ジェームス・ブラウンの「Get Up (I feel Like Being A) Sex Machine」やカーティス・ブロウの「The Breaks」、アース・ウインド & ファイアー「September」まで、ソウル〜ディスコ〜オールドスクール・ヒップホップの代表曲とともにパフォーマンスするシーンもあって、まさに子どもから大人まで誰もが楽しめる、間口の広いエンタテインメント・ショウになっていました。日本のアーティストでは、久保田利伸の「LA・LA・LA LOVE SONG」をカバーしていましたね。
個人的にすごく気に入ったのは、クラシック中のクラシックである「Choo Choo TRAIN」のリミックス。曲の途中で、ジャズのエッセンスを取り入れたアレンジに変わるのですが、ゆったりとしたグルーヴのある歌い回しになっていて、すぐに音源が欲しいと思いました。僕のDJプレイでもかけたいくらい、洒落たリミックスでしたね。ああいう大人なアプローチができるのがEXILE THE SECONDの魅力だと思うので、バラードやダンスナンバーも良いのですが、ミドルテンポのグルーヴィーな楽曲はもっと増やしてほしいです。