音楽家・大友良英がラジオ特番で明かした、あまちゃん音楽のハイブリッド性

 2013年大晦日、『あまちゃん』の”幻の157話”が紅白歌合戦の中で15分間登場し、多くのあまちゃんファンを感激させた。そこで披露された楽曲のすべてを手がけ、“あまちゃんスペシャルビッグバンド”のメンバーとして演奏にも加わったのが音楽家の大友良英。フリージャズやノイズ・ミュージックの鬼才として早くから知られ、現在は世界を股にかけて演奏活動を行っているミュージシャンだ。近年では自らの演奏活動に留まらず、映画やテレビドラマの劇伴も多数手がけ、これまでに参加した作品は300作以上。実験音楽だけでなく、あらゆる音楽に精通していることでも知られている。

 そんな大友のスペシャルラジオプログラム『大友良英・ハイブリッド音楽館〜世界も音楽もひとつなんかじゃないぞー!』が2014年1月1日午後2時からNHK-FMにて、2時間45分に渡って放送された。この番組は、世界の様々な音楽と音楽が混ざり合うことで出来た“ハイブリッド音楽”を、大友と大友の盟友であまちゃんビッグバンドのメンバーでもあるドラマーの芳垣安洋、そして首藤奈知子NHKアナウンサーの3人で紹介していく特別番組。普段テレビやラジオで流れることのない音楽が語られる、懐の深い音楽プログラムとなった。

 音楽は“半端にどこかに所属していない、どこにも居場所のないもの”こそが面白いという大友。ブラジル発祥のサンバから中華音楽、そしてそれらの要素がすべて含まれるという中村八大作曲の坂本九の代表曲『上を向いて歩こう』まで、各ジャンルの中でも異彩を放つ音楽が次々に紹介された。例えば、アルゼンチンの作曲家アストロ・ピアソラの『孤独の歳年』(指揮、バンドネオン:アストル・ピアソラ/バリトン・サックス:ジェリー・マリガン)。タンゴ界に革命を起こしたと言われるピアソラの音楽はまさに大友のいう“ハイブリッド音楽”。彼は伝統的なアルゼンチンタンゴに、クラシック、ジャズ、そして今でいうロックの要素を掛け合わせ、全く新しいタンゴの概念を作り出した異才だ。大友は『孤独の歳年』を「タンゴかといえばタンゴではないし、ジャズかといわれればジャズではない。ドラムセットも入ってるけど、ロックでもない。映画音楽みたい」な曲と解説し、聴き手もタンゴというバイアスをかけずに聴くことで、ただ良い音楽だと感じられるのではないかと語った。

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