インターFM執行役員ピーター・バラカン氏インタビュー(後編)

「音楽業界が厳しくても、音楽の需要は必ずある」ピーター・バラカンが提案するラジオの役割

『ピーター・バラカン公式ブログ』では、氏が出演するイベント情報も発信している。

――音楽にとっては厳しい状況が続くいま、そこでインターFMの果たすべき使命とは何だとお考えでしょうか?

ピーター:僕は今でも音楽に対する需要は必ずあると思っています。良い曲は常にあるし、多様性も昔とは比べられないくらい豊かになった。ただ、僕らプロの人間ですら完全にはついていけないくらいだから、普通の人からしたら、もうお手上げ状態なんじゃないでしょうか。聴きたい曲がどこで手に入れられるのか? そもそも自分は何が聴きたいのか?それはどこで調べたらいいのか? もう検討もつかないくらいまでに世の中には曲が溢れています。だからきっと、みんな何かを薦めて欲しいと思っているんじゃないでしょうか。「こういう面白い曲があるよ」と薦めてあげることは歓迎されると思う。それがまさにインターFMの果たすべき役割じゃないかと思っているんです。

――最近ではSpotifyなど新しい形の音楽サービスも出てきました。

ピーター:ヨーロッパやアメリカでは聴き放題サービスが広がってきていて、ああいうものが出てくることでリスナーは今までよりも手頃に音楽を聴くことができるようになった。ただしさっきお話した問題、何から聴いたらいいのか分からないという問題は残ると思う。それを補完できるのがラジオなんじゃないでしょうか。僕はああいうものが入ってきたほうがラジオにとってもいい刺激になると思っている。ある程度の競争はあるけど、競争というよりは共存できるものではないかと思っているんです。音楽に対する愛情がある人達がやっている以上、僕は何の問題もないと思います。

――最後に、ピーターさん流のラジオの楽しみ方を教えてください。

ピーター:音楽というものは誰でもある程度は好きなものだと思います。もしも自分が何を聞いたらいいか分からない、そんな風に感じているならラジオを聴いてみてください。そして流れたものを好きだと思ったらラジオ局のウェブサイトを覗いてみるとか、DJが曲についてあまり喋らなければ「この曲のこと気に入ったんだけどもうちょっと教えて」とメールを送ってみたりツイッターでつぶやいてみる。もう一度聴きたいと思ったならリクエストしてみればいい。これらは全部、お金も時間もかからないことだし、DJにとってもリスナーから反応があるのはとても嬉しいことなんです。

 DJをやっていて僕はいつも実感するんだけど、ラジオは2Wayメディア、リスナーと共に番組を作っているものなんです。実は音楽の情報を一番教えてくれるのもリスナーなんですよ。それをDJは音楽の形で還元する、すごく有機的に進んでいると僕は思うんです。みなさんのような音楽のことを好きな人がそうやって関わってくれればラジオはどんどん良くなるし、それがまたみんなのためになる。ラジオで音楽と出会い、CDを買ったりコンサートに行くことで、きっとその人の生活にも潤いが出てくるものだと僕は思う。だからぜひ一緒に音楽を盛り上げていきましょう。
(取材・文=北濱信哉/撮影=金子山)

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