『Weekly Virtual News』(2026年10月20日号)

VRヘッドセットの名機『Valve Index』生産終了に寄せて――ヘビーユーザーに愛されたトラッキング方式は、今後どうなる?

 VTuber、XR技術、メタバース――様々な“バーチャル”に関するトピックは、日々多く生まれている。企業による巨大な施策から、個人によるマイクロだが熱気あふれる取り組みまで、その規模は様々だ。

 連載「Weekly Virtual News」では、一週間のうちに起きた“バーチャル業界”に関連する様々な話題をピックアップ。ただし……今週は筆者の独断と興味関心から、あるVRヘッドセットをめぐるトピックについてフォーカスさせていただきたい。

ValveのVRヘッドセット『Valve Index』が生産終了に

 日本時間10月14日、ValveからVRヘッドセット『Valve Index』の生産終了が発表された。以前から噂は流れていたが、ついに現実のものとなった。

 ヘッドセット本体、およびコントローラーともに、販売は在庫にある限りだという。ただし、国内正規代理店であるKOMODOでは、現時点では取り扱いが確認できない。

公式WEBサイトのスクリーンショット

 PC向けVRソフトウェア「SteamVR」を提供するValveが、2019年に発表したこのヘッドセットは、当時としてはハイエンドな画質、オープンイヤー型ヘッドホン、そして指の動きを静電容量式センサーで検知するコントローラーの組み合わせで、PC向けVRヘッドセットとして一躍人気商品となった。

 その人気は、2026年現在も愛用者がいるほどだ。ヘッドセットはもちろんだが、特に「Indexコン」の通称で親しまれるコントローラーは唯一無二の性能を誇るため、手放せない人が多くいる。筆者自身、2019年に本機を購入してからというもの、ヘッドセットこそ乗り換えたが、コントローラーは未だにValve Indexのものを重用している。

 とはいえ、全体的な性能はたしかに“旧式”となった。そして今年は、Valveより7年ぶりとなる新型VRヘッドセット『Steam Frame』が発売された。軽く、単体でも動作し、SteamOSも内蔵し、コントローラーは同じく指の動きを検知できる。Valveとしては、この新型の登場をもって、『Valve Index』が役目を完全に終えたと判断したのだろう。

いまもヘビーユーザーに愛される「アウトサイドイン方式」

 ただ、VRヘビーユーザーたちの間では、役目が終わったとは言えない。「Valve Index」は、ユーザーが装着したヘッドセット、コントローラーの位置を測定するトラッキング方式に、「ベースステーション」と呼ばれる外部センサーを設置するアウトサイドイン方式を採用しており、運用難易度の高さに見合ったトラッキング精度を誇る。この機能を支えるのが、Valveが開発した「Lighthouse」というシステムだ。

 一方、「Steam Frame」や「Meta Quest」シリーズは、ヘッドセット本体のカメラで位置を測定するインサイドアウト方式を採用している。その精度は決して悪くはないが、アウトサイドイン方式と比較するとやや劣ることが多い。

 このため、『VRChat』の一部ユーザー(例:パフォーマー、モーションアクター)など、精度を極限まで追求する層からは今もアウトサイドイン方式が求められる傾向がある。任意のヘッドセット、Valve Indexコントローラー、そして『VIVEトラッカー』か『Tundra Tracker』の組み合わせが、この層にとっては一つの“最強装備”だろう。

 しかし、業界全体を見てみると、やはりインサイドアウト方式の波が強いのが実情だ。筆者も長くVR業界を眺めているが、アウトサイドイン方式の新型は、年々少なくなっている。

 筆者が『VRChat』で出会う人々も、比較的新しいユーザーは「Meta Quest」シリーズか『PICO 4』を手に取っている印象だ。そこからベースステーションを買い、VIVEトラッカーの導入に至る人も、いるにはいるが、極めて少数だろう。

マニアックな需要に応えるメーカーも──アウトサイドインの灯火は残るか?

 もちろん、マニアックな(しかし羽振りはいい!)需要を支えるメーカーもまだ存在する。

 特に、アウトサイドイン方式VRヘッドセットの新鋭として存在感を発揮している「Bigscreen Beyond」シリーズを送り出しているBigscreen社は、「ベースステーションの生産が終了しそう」という噂の真偽を、生産元のHTCへ直接問い合わせたという。そして、「現時点では生産終了の可能性は低い」という回答を得られたとして、SNSで情報を共有している。

 さらに同社は、Valve Indexコントローラーに代わる、新たなVRコントローラーをリストアップし、発信している。

 こうした動きの背景には、「Bigscreen Beyond」シリーズがヘッドセット“のみ”の商品ゆえに、コントローラーやベースステーションが別途必要になるという商品特性が手伝ってのものと思われるが、他社商品の紹介も厭わないくらいには、この技術体系の消失への危機感があるのだろう。

 Bigscreen社だけでなく、国内メーカーのShiftallも、アウトサイドイン方式に対応する商品を今も出している。特にVRコントローラー『GripVR』は、「Valve Index」コントローラーに近しい意匠と機能を持つ、まさに乗り換え需要を見越した製品である。

 こうした流れがあるので、アウトサイドインの灯火はまだ消えない……とまではさすがに言い切れない。現行の潮流は、上記の通りインサイドアウト方式が主流だ。来年には、Metaからメガネ型VRヘッドセット『Meta VR Glasses』の登場も控えているが、これも外部センサーを必要としない。インサイドアウト方式の潮流は、やはり強大なように思う。

 ヘッドセットだけあれば動く、手軽で扱いやすい形へ進化するのがVRの理想形ではある。一個人としては残ってほしい技術ではあるが、いずれ灯火が潰えてしまった時に備え、この文章を記録として残しておきたいと思う。

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