AIが解決した、映像エディターの自主制作における悩み tapehead.labに聞く、生成映像と作家性
「“実写風”だろ」の指摘は「それはそうだよなと僕も思います」
――1年前が大昔のように感じますね……。歴史を目撃している気分です。ところでtapeheadさんといえば、実写とアニメを組み合わせた作風が先駆的だったと思いますが、それについても教えてください。
tapehead:きっかけは、Xで人気の852話(hakoniwa)さんという方が、自分の落書きを実写に合成して動かしているのを見たことでした。それがめちゃくちゃ面白くて、自分でもやってみようと思ったんです。合成した1枚絵があれば動くということだったので、「Midjourney」で試してみたら、本当に動いたので驚きました(笑)。それから、実写アニメ合成の作品をいろいろ作るようになりましたね。
とはいえ、実写とアニメ合成自体は今までいくらでも使われてきた手法です。ただ、面白いのは実写の下絵に対してアニメを合成する、という従来のやり方ではないこと。それがすごく画期的なんですよ。制作の過程が全然違う。
――アナログで合成をやってきたプロの人たちからすると、文句を言いたくなるようなことでもある?
tapehead:そうですね。そもそもAIで下絵も撮影しているから「これは実写じゃないだろ。“実写風”だろ」という声もあります。それはそうだよなと僕も思います。そういう議論はたくさんあると思いますよ。
―—アニメ作品『GENETOPIA』が「コロテックAIアニメコンテスト」のグランプリに選ばれましたね。この制作について教えてください。
tapehead:『GENETOPIA』はチームで制作した7分のアニメなのですが、制作期間としては3週間くらいでした。僕は映像周りのAI生成とディレクションを担当していましたが、今まではひとりで制作してきたので、チームでの制作は新鮮でしたね。MV制作とは全く考え方が違うので大変でしたが、勉強になりました。
いい映像の質感の出るプロンプトを研究してシェアしたり、チームで制作することで最終クオリティが随分と上がったと思います。音響に関してもサウンドクリエイターに入ってもらったので仕上がりがよくなりました。AI生成も一部使っているのですが、基本的には従来のサウンドデザインの手法を駆使して行なっています。映像作品としての音の仕上げは、まだまだAIだけだと難しい面があるなと。
―—なるほど。ちなみに私は昨年、MV「Lazy Talk」でtapeheadさんを知りました。これについても教えてください。
tapehead:一番反響があった作品ですね。MVを上げる前、絵が少し動いているだけの動画をXに投稿したときも楽曲に対する反応がよくて、曲だけでここまで反応があることは滅多にないので驚きました。
―—音楽はどのように制作されているのですか?
tapehead:基本的に「Suno」しか使っていません。プロンプトも基本的にはLLM(「ChatGPT」と「Claude」)に作ってもらってます。音楽的な語彙がある人間ではないので「こんな感じの曲を作りたいからプロンプトを考えて」と。
それから「違う、もっとこう」というやりとりを繰り返して、それを最終的にSunoに入力して、曲を生成しています。ただ、最近は他の人が公開しているプロンプトを研究して、自分のやり方に落とし込むというのも試しています。
――Sunoで出力した後にDAWなどで編集はしない?
tapehead:僕、DAWも使えないんですよ。ステムを足したり、削ったりする程度。何度か「Suno Studio」も試してみたのですが、思い通りにいかなくて……。たくさんのテイクを生成して、いいところをDAWではなくアドビの「Premiere Pro」で繋いでいます(笑)。
――映像や音楽、文章など、それぞれの界隈でAIに関する議論もありますが、映像業界で働く人間として違いを感じたりしますか。
tapehead:映像の場合、「これはAIで動かしてるからダメだ」と明確に言っている人は少ない気がします。映像の動きとか編集って、属人性が見えやすいものではないので。
――アニメ『超時空要塞マクロス』の板野一郎さん的な演出は?
tapehead:あの演出は、アニメにおいて何度も参照されてきましたよね。でも、それに引用したところで同じものはできないんですよ。
映像制作はとても複雑で、音楽や全体の構成、カメラワーク、アングルなどが組み合わさった総合芸術でもある。一部だけをマネしたところで、リファレンス元の表現に近づけるわけではない。そういう意味では、イラストなどの絵柄が、一番の属人性——作家性があらわれる部分になるのかなと思います。
プロの現場におけるAI映像の活用について思うこと
――実際、プロの現場でもAIは使われだしているのでしょうか。
tapehead:そうだと思います。部分的に使っている作品・企業は映像業界全体として増えているはずです。「全部AIで作りました」というわけではなく、VFX作業の一部などで普通に使われているレベルだとは思いますが。
――先日、Netflixが作品制作でAIを活用しているというニュースがありました。
tapehead:使った方がクオリティが高くて、早くできる部分もあるんですよね。そういった事例は、じつは色々生まれているんだと思います。5年後くらいには、議論されることもなく全員使っているんじゃないかな、と。
――今後さらなる革新が映像業界に訪れると思いますか。
tapehead:映像の観点でいうと、「AIだからできる映像」というのはそんなにないと思っています。正直、やろうと思えばCGで何でもできるので。ただ「AIがなかったらわざわざ作らないだろう」という映像に対しては需要があります。
コストや工数も含めて、誰も手を出さなかった部分に、AIであれば気軽に手が届く。そこから新しい映像表現が生まれるとまではいかずとも、新しい流行みたいなものが生まれる気はしています。
――といいますと?
tapehead:YouTubeが出てきた時も同じだったと思うんです。個人が撮影して発表する場ができたことで、いいものも悪いものも含めて色々な動画が出てきたじゃないですか。それによって、従来の映像制作者たちが作らなかったであろうものが「コンテンツ」になった。さらにそれが文化として成熟して、YouTuberという職業やジャンルができた。同じようなことが、AIによって起きるんじゃないかという予感はあります。
―—いま個人的に注目しているAIクリエイターは?
tapehead:AIで言うと、minimaさんが素晴らしいですね。音楽はもちろん、絵と映像も含めて「作家性のあるAIクリエイター」というのは少ないんです。実際、私が真似をしようと思っても無理でした。どうやって作っているのか、本当に謎です。
―—tapeheadさんご自身の、今後の展望を教えてください。
tapehead:特に野望があるわけではないので、面白そうな技術が出てきたら遊ぶような感覚で、これからも制作していけたらと思っています。
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