AIは“「魔法の箱」ではなく「パートナー」 動画クリエイター・Mankyuが語る、キャラクターを“魅せる”動画制作術

できなかった表現をアイデアとして残しておくことも大切

ーー直近の制作のなかで、思い通りにいかなかった部分や、独自の工夫で乗り越えられた経験があれば、印象に残っているエピソードとしてお聞かせください。

Mankyu:AI動画制作で特に苦労するのは、一貫性の維持です。今回のライブMVでは、StartフレームとEndフレームを指定してシーンをつないでいます。ただし、その間をつなぐリファレンスは存在しないため、移動中に会場の構造が歪んだり、別の空間に変化したりすることがあります。

 そこで「無理に背景を維持し続けない」という工夫を取り入れました。バックステージを通る、トンネルに入るなど、途中に空間をいったんリセットできる場所を設けています。歪みをごまかすというより、モデルの弱点を"演出"として利用する感覚です。

 また、その時点ではできなかった表現をアイデアとして残しておくことも大切にしています。現在のモデルでは難しくても、次に登場するモデルでは実現できるようになることがあるからです。たとえば、少し前まで日本語を含む文字のモーションを意図どおりに動かすことは難しく、『Adobe After Effects』も使えない私は、リリックモーション(歌詞を動きのある文字で見せる演出)のあるMV制作を諦めていました。しかし、7月末に登場したMiniMax H3では、かなり高品質に文字を動かせるようになり、SNSでもリリックモーションを取り入れたAI動画をよく見かけるようになりました。

 昨日までできなかったことが、翌日にはできるようになる。それが頻繁に起こるのがAIの世界です。だから今はできないからと完全に諦めず、新しいモデルが登場したときに試せるよう、アイデアをストックしておくことも大事だと思います。

AIにより求められる能力や役割の境界が大きく変わっていく

ーーAI動画クリエイターの立場から、規制や著作権、産業構造の変化なども含めて、AIをめぐる業界全体の動きをどのように捉えていますか。

Mankyu:AIを肯定するか否定するかという二択ではなく、社会の中でどのように共存させていくかを考える段階に入っていると思います。著作権や学習データ、実在人物の扱いなどについては、既存のクリエイターや権利者、AIを使って制作する人の双方が安心して活動できる、分かりやすいルールが必要です。同時にAIを使ったことを隠さず、使用したツールや制作工程を可能な範囲で開示することも、信頼を築くうえで重要だと考えています。

 産業構造については、少人数や個人でも、これまでなら大きなチームが必要だった映像表現に挑戦できるようになる一方で、構成、演出、編集、キャラクター設計といった人間側の力は、むしろ重要になっていくと思います。単純に仕事がなくなるというより、クリエイターに求められる能力や役割の境界が大きく変わっていく、という捉え方をしています。

ーーAIに対するご自身のスタンスや距離感は、AI動画制作を始められた当初と現在とで、変わった部分はありますか。もしあれば、どのような変化なのか教えてください。

Mankyu:かなり変わったと思います。当初は「何か面白いものが出てくる魔法の箱」のように感じていました。なので、まず生成してみて、面白いものが出たら使う、という距離感に近かったと思いますが、現在は、もう少し制作パートナーに近い存在です。AIに考えてもらう部分、自動化する部分、自分で判断する部分を分け、できるだけ再現可能なワークフローとして設計するようになりました。

 また、当初は画像生成、動画生成、音楽生成といった各AIツールを役割ごとに「点」で使っていました。今はCodexやClaude Codeなどのエージェントを中心に、AI以外のツールも含めて、それぞれが有機的につながり始めています。その結果、表現の対象も動画だけではなく、ゲームやAITuberなど、より立体的でインタラクティブなものへ広がってきたと感じています。

ーーこれまでにAI動画のアワードで優秀な成績を残されています。これから作りたい作品や、今後のクリエイターとしての展望など、現時点で構想されていることや興味を持たれているテーマがあればお聞かせください。

Mankyu:AI動画について、具体的な中長期目標はあえて決めていません。その時々で「これを作ってみたい」「この技術を試してみたい」と思ったものを、個人でもすぐに形にできることがAIの最大の魅力だと思っているからです。実際、作りたいものは毎日のように変わります。

 強いて挙げるなら、短編アニメやゲーム制作には興味があります。動画だけで完結するのではなく、キャラクターや世界観を別の形でも体験できるものには挑戦してみたいです。私自身は、クリエイターを職業にしているわけではありません。だからこそ、特定の分野や形式に縛られず、これからもある程度自由に「その時に自分がやりたいと思ったこと」をAIを通して実現していけたらと思っています。

キャラクターの存在そのものを、どこまで立体的にできるか

ーー最後に、ご自身のAIを活用した制作環境について、今後アップデートしていきたい・次に試したいワークフローなどがあれば教えてください。

Mankyu:リアルタイム動画生成が徐々に現実的になってきているため、完成した動画を一方向に見てもらうだけではなく、自分のキャラクターがリアルタイムかつインタラクティブに動く仕組みを作ってみたいと思っています。

 たとえば、視聴者との会話や入力に応じて、キャラクターの表情や動き、演出がその場で変化するようなものです。動画、ゲーム、AITuberなどを明確に分けるのではなく、それぞれの要素が自然につながったキャラクター体験に興味があります。「動画を効率よく作る」という方向だけでなく、AIによってキャラクターの存在そのものをどこまで立体的にできるのか、試してみたいです。

■ 告知
【福岡開催】AI Video Creator MeetUp #1
2026/11/27 (金) 19:00 - 21:00
関連URL:https://peatix.com/event/5168373

福岡でAI動画に興味のある方向けのMeetUpを実施します。無料ですので、気軽にご参加ください!

■ 関連リンク
Webサイト:https://mankyu.pages.dev/
X:https://x.com/manaimovie

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