NANAのテック・アルテミス 仕事に役立つBizテック観測所(第44回)
新型『Ray-Ban Meta』『Meta VR Glasses』発表 多様化するグラス型デバイスを体験してきた
Metaは9月24日に開催した「Meta Connect 2026」で、AIスマートグラスの新モデルや次世代のグラス型VRデバイスなどを発表した。
AIスマートグラスについては、ラインアップの大幅拡大が案内。EssilorLuxotticaとのパートナーシップによって、年末までに100種類以上のスタイルを展開する。これまでも展開してきた『Ray-Ban Meta』の次世代モデルに加えて、カメラを省いて音楽や通話に特化した『Ray-Ban Meta Audio』も登場する。
そしてVRデバイスには、新たにグラス型のデザインを採用し、約100gという軽さを実現した次世代VRデバイス『Meta VR Glasses』が登場。発売は2027年春を予定している。
発表に先立ち一部の報道関係者を対象としたプレビューが実施された。本稿ではこれらの新製品について解説した上で、普段から『Ray-Ban Meta(Gen 2)』や『Meta Quest 3』を使っている筆者の目線から、それぞれの製品の注目ポイントについて紹介していきたい。
第3世代『Ray-Ban Meta』とカメラなしの『Ray-Ban Meta Audio』が登場
『Ray-Ban Meta』シリーズは、アイウェアブランドのRay-Ban(レイバン)とMetaの共同開発によって生まれたAIスマートグラス。初代モデル、第2世代モデルが登場しており、日本では2026年5月に第2世代モデルが上陸していた。
今回発表されたのは、その第3世代モデルにあたる『Ray-Ban Meta(Gen 3)』だ。本体が先代モデルよりもスリムになり、テンプルチップ(ツルの先端部分)を調整できるようになった。バッテリー駆動時間も最大9時間となり、先代モデルから1時間伸びている。
側面には「アクションボタン」を搭載。ワンタップで「Meta AI」を呼び出せるほか、好きな機能を割り当てることもできる。
今回のプレビューでは、Meta AIの機能のひとつである「ライブ翻訳」も体験した。スペイン語と日本語を使った会話で、実際にどこまで通じるのかを試してみた。
利用するには、スマートフォンで「Meta AI」アプリを開き、翻訳機能から自分と相手の言語を選んで開始する。今回は相手がスペイン語、筆者が日本語で会話した。相手がスペイン語で話すと、スマートグラスのスピーカーから日本語の翻訳音声が流れ、筆者が日本語で話すと、その内容がアプリ上にスペイン語で表示された。
筆者はスペイン語をほとんど理解できないが、実際に会話してみるとやり取りはきちんと成立した。海外旅行など、言葉の壁がある場面では活躍する機会がありそうだ。
最後に筆者が「Perfecto!(素晴らしい)」とスペイン語で伝えると、相手も楽しそうに笑ってくれた。翻訳の便利さだけでなく、スマートグラスを介して自然に会話できる面白さも感じられた。
カメラは12MPで、3K Ultra HD動画を撮影可能。動きのある場面を撮影するのに適したダイナミックフォトにも対応する。
音声関連の機能も強化されている。6マイクアレイによってバックグラウンドノイズを90%以上カットでき、2026年後半には一般向けデバイスとして初めてDolby Atmosによる360度空間音声の録音・再生にも対応する予定だ。
フレームの種類も増え、従来からある「Wayfarer」にはラージサイズを追加。さらにRay-Banを代表する「Aviator」と、キャットアイ型の「Zena」が加わり、合計27バリエーションを用意する。
『Ray-Ban Meta (Gen 3)』は9月24日から日本を含む各国で発売されており、価格は7万8980円(税込)から。
また、Aviatorの誕生90周年を記念した『Aviator Limited Edition』も発売する。ヴィンテージ調のミルキーベージュフレームにTransitions Gen Sのブラウンレンズを組み合わせたモデルで、価格は10万3180円(税込)。
既存の『Ray-Ban Meta(Gen 2)Optics』にも期間限定カラーを追加する。Blayzer OpticsにはBrick BrownとTransparent Ocean Blue、Scriber OpticsにはTransparent Dark Oliveを用意する。
ディスプレイを搭載した『Meta Ray-Ban Display』についても展開を拡大する。カナダと英国で販売を開始し、フランス、イタリア、ドイツでは予約受付を開始する。日本での展開は現時点では案内されていない。
そして『Ray-Ban Meta (Gen 3)』と同時に登場したのが、Meta初のオーディオグラス『Ray-Ban Meta Audio』だ。カメラを搭載せず、音楽や通話などの用途に絞っている。
Metaが実施した調査によると、既存の『Ray-Ban Meta』ユーザーの間で最も人気かつ頻繁に使われている機能が「オープンイヤーでの音楽鑑賞や通話」だったという。このニーズに着目し、オーディオ体験をさらに突き詰めたモデルとして立ち上げたのが『Ray-Ban Meta Audio』だ。
重量は43gで、MetaのAIスマートグラスとしては過去最軽量。最大12時間の連続再生に対応し、充電ケースを使えば最大48時間再生できる。
フレームは「Clubmaster」とレクタングル型の「Burbank」の2種類で、全23バリエーション。調整・交換可能なノーズパッド、調整可能なテンプルチップ、オーバーエクステンションヒンジを採用し、度付きレンズにも対応する。
米国では349ドルから販売し、10月13日に出荷を開始する。日本では2027年に発売する予定だ。
『Ray-Ban Meta(Gen 3)』に関しては、「5月に第2世代モデルを買ったばかりなんだけど……」と筆者のSNSアカウントに悲痛なコメントが届いていた。筆者も5月に第2世代モデルを入手したばかりなので、この気持ちはよく分かる。
ただ、第2世代モデルから大きく使い方が変わるようなアップデートではないため、第2世代モデルを使っている人は、必ずしも買い替える必要はないと個人的には感じている。筆者も今回は買い替えず、そのまま第2世代モデルを使い続ける予定だ。
同時に発表された『Ray-Ban Meta Audio』に関しては、筆者としては納得の新製品だった。というのも、筆者も『Ray-Ban Meta』を普段から使っているが、カメラを使うよりも、音楽を聴いたり、スマートフォンを取り出さずに通話したりすることが多いからだ。イヤホンやヘッドホンとは違う「メガネ型のオーディオデバイス」として使い分ける人も出てきそうだ。
『Ray-Ban Meta』シリーズのほかに、『Meta Glasses』にも新モデルが登場する。新スタイルの「Capri」「Nova」を追加するほか、専用ケースチャーム14種類とデジタルフォトカードが付属するLISAとのコラボレーションモデル「Adventurer LISA Edition」「Capri LISA Edition」を展開する。
また、Kylie Jennerとのコラボレーションモデル「Starfire」には新色Ivoryを追加。ブラックフレームとグレーレンズ、プラグインケースを組み合わせた「Meta Adventurer」も登場する。
価格は「Capri」「Nova」が5万600円、LISAやKylie Jennerとのコラボレーションモデルが6万8200円、「Meta Adventurer」が4万2680円だ(いずれも税込)。いずれも予約注文が始まっている。
米国ではフレーム、レンズ、ケースを自由に組み合わせられる「Mix & Match」も始まる。販売地域もシンガポール、韓国、メキシコ、UAEなどに広がり、ブラジルでも近日中に販売を開始する。
約100gの『Meta VR Glasses』で、VRデバイスの用途はさらに広がる
今回の発表で大きな存在感を放ったのが『Meta VR Glasses』だ。Metaが10年以上にわたって開発してきた次世代のグラス型VRデバイスで、重量は約100g。同社の『Meta Quest 3』の約5分の1まで軽量化している。
従来のVRヘッドセットは、ディスプレイやセンサー、プロセッサー、バッテリーなどを頭部にまとめて搭載する構造が一般的だった。高性能になるほど本体も重くなり、長時間装着していると首や肩への負担も気になる。
筆者自身、『Meta Quest 3』と『Apple Vision Pro』を使っているが、どちらも長時間使っていると、どうしても肩や首に負担を感じることがある。映像に没入している間は気にならなくても、外してみると肩が凝っていた、ということも少なくない。
『Meta VR Glasses』は、こうしたVRヘッドセットの重さを根本から見直している。顔に装着するグラス部分にはディスプレイやセンサーなどを収め、プロセッサーやバッテリー、ストレージといった重量のある部品は、ポケットやバッグに装着する外付けの「パック」に分けた。グラスとパックは光ファイバーケーブルで接続する。
グラス本体には軽量なマグネシウム合金ボディを採用。約100gという重量なら、少なくとも現在のVRヘッドセットよりは装着時の負担を大幅に抑えられそうだ。
グラスをかける感覚でVRコンテンツを楽しめるのであれば、長時間の映画鑑賞やPC作業でも使いやすくなりそうで、個人的にもかなり気になるところ。バッテリー持続時間は、高解像度メディアの連続再生で最大3時間、バッテリー本体は45Wの急速充電に対応する。
ディスプレイにはmicro-OLEDの「5K Infinite Display」を採用。37PPDの表示密度と薄型パンケーキレンズを組み合わせ、Dolby Visionにも対応する。フレームに内蔵したスピーカーではDolby Atmosの空間オーディオを利用できる。
操作はコントローラーを必要とせず、アイトラッキング、ハンドジェスチャー、Meta AIによる音声操作で行う。視線で項目を選び、手の動きや声で操作するといった使い方ができる。
今回『Meta VR Glasses』も体験してくることができたのだが、アイトラッキングやハンドジェスチャーの精度が高く、『Apple Vision Pro』にかなり近い感覚で操作することができた。
ジェスチャーの中で便利だと感じたのがスワイプ操作だ。『Apple Vision Pro』では指をつまむ「ピンチ」状態でスワイプするのに対し、『Meta VR Glasses』は握り拳の上で親指を動かすことでスワイプできる。これだと誤操作が起こりにくいため、扱いやすく感じた。
PCとの連携も可能で、テーブルの上に仮想のキーボードとタッチパッドを表示し、MacやWindows PCと接続すれば、複数の仮想ディスプレイやウルトラワイド画面を目の前に展開できる。目線を下げることで表示をオフにするプライバシーモードも備える。
コンテンツも充実させる。Meta VR GlassesはVRデバイスとして初めてIMAX Enhancedの認定を受け、DisneyとはDisney+での3D作品配信や「Disney Immersive Cinema by ILM」を展開する。『アベンジャーズ』『ブラックパンサー』などの3D作品を楽しめるほか、映画の世界に入り込んだようなVR Enhanced体験も提供する。
Peacock、HBO Max、Paramount+でも3Dコンテンツを配信するほか、Billie EilishとJames Cameron監督によるコンサート映画『Hit Me Hard and Soft: The Tour』の3D版も独占配信する。
スポーツではESPNの「Immersive Sports」が8K・180度ビューに対応。MLB、NBC Sports、UFCなどから年間100以上のライブイベントを提供する。
さらに、3Dを使った新しい通話体験にも対応する。スマートフォンで自分自身を撮影して作成したフォトリアルな3Dデジタル表現を、WhatsAppやZoomなどの通話相手の空間にリアルタイムで表示できる。表情だけでなく空間オーディオにも対応する。
ゲーム関連では、『Beat Saber』が2027年春に大型アップデートを予定している。ビジュアルを刷新するほか、コントローラーを使わず、素手でエネルギーを操ってノートを切る新モード「Flux」を追加する。
このほか、コントローラーフリーで遊べる『Cardmada』『Dice Throne Digital』『Dragon Grove』『逆転裁判5 VR』『Tetris Effect: Mixed Realities』『ツーポイントホスピタル』なども登場し、「Xbox Cloud Gaming」や携帯ゲーム機との接続にも対応する。
『Meta VR Glasses』は2027年春に発売予定で、価格は1299.99ドル。日本での価格はまだ発表されていない。
実機で感じた、Metaが広げるグラス型デバイスの可能性
今回のMeta Connectでは、AIスマートグラスやVRデバイスをめぐるMetaの展開が一段と広がった。
カメラとAIを重視した『Ray-Ban Meta(Gen 3)』に加えて、音楽や通話に機能を絞った軽量の『Ray-Ban Meta Audio』が登場。さらにメガネ型デザインを採用したことで、これまで大きなヘッドセットを装着しなければ体験できなかった映像体験や仮想空間上でのPC作業、ゲームがより気軽に楽しめる『Meta VR Glasses』が控えている。
今回、各製品の実機に触れてみたが、どれも製品としての完成度が高く、オーディオ機能をメインに使うユーザーに向けた『Ray-Ban Meta Audio』、軽量なグラス型デバイスでVR体験をより身近にする『Meta VR Glasses』など、納得感のある新製品が多かった。
今回のプレビューで特に印象に残ったのが「ライブ翻訳」だ。ライブ翻訳自体は現在使っている『Ray-Ban Meta(Gen 2)』にも搭載されているが、同機能が使えるようになってから、まだ英語が通じにくい国へ取材に行く機会がなかった。今回のプレビューで本格的に試すことができ、これなら英語が母国語ではない地域でもお互いの言葉で自然に会話できて心強いと感じた。
また、グラス型の『Meta VR Glasses』は、筆者が普段から使っているヘッドセット型の『Meta Quest 3』や『Apple Vision Pro』と違い、装着するまでのハードルが低い。普段はVRを使う時間をある程度確保してからヘッドセットを装着しているが、メガネをかけるような感覚で使えるのであれば、自宅だけでなく外出先に持ち運び、映画を観たり、仮想ディスプレイでPC作業をしたりすることも現実的になりそうだ。
今回の「Meta Connect 2026」では、これまでAIスマートグラスやVRデバイスを使っていて感じていた「もう少しこうだったら」という部分に、それぞれ違った形で答えてくれる製品が出てきたように思う。これらを実際の生活や仕事に持ち込んだとき、これまでとは違った使い方がどこまで広がるのか、ぜひ試してみたい。