NANAのテック・アルテミス 仕事に役立つBizテック観測所(第43回)
Apple『iPhone Duo』投入でいよいよ折りたたみスマホ「戦国時代」に 役者が揃った2026年下半期を解説
Appleが折りたたみiPhoneこと『iPhone Duo』を発表した。閉じた状態ではパスポートほどの大きさで、開くと7.6インチのディスプレイを利用できる。日本では36万円台からで、10月16日に予約受付を開始し、10月23日に発売される。
初めての折りたたみiPhoneとして話題になっているが、折りたたみスマートフォンというカテゴリー自体にはすでに7年ほどの歴史がある。2019年にSamsungが初代『Galaxy Fold』を発売して以来、SamsungやHuaweiを中心に市場が形成され、Motorola、Honor、Xiaomi、OPPOなども参入してきた。
初期の折りたたみスマートフォンは、高価格に加えて耐久性や使い勝手への不安もあり、「新しいものを試したい人」が選ぶ端末という印象が強かった。ところが各メーカーが世代を重ねるにつれ、薄型・軽量化やヒンジの改良、ディスプレイの耐久性向上などが進み、折りたたむことで何が便利になるのかも少しずつ明確になってきた。
閉じれば通常のスマートフォンに近いサイズで持ち運べ、開けばタブレットに近い大画面を使える。複数のアプリを並べて操作したり、大きな画面で写真や動画を楽しんだりと、通常のスマートフォンとは違う使い方ができる。各社がこうした体験を磨いてきたことで、折りたたみスマートフォンは「珍しい端末」から、具体的な用途を持つ製品へと変わりつつある。
その中でも2026年に存在感を増しているのが、閉じた状態ではスマートフォンに近く、開くと横長の大画面になる「パスポート型」だ。Huaweiなどが以前から展開してきた形で、Samsungも2026年の『Galaxy Z Fold8』で採用した。
『iPhone Duo』も同じ方向にあるため、Appleが今回まったく新しい形を市場に持ち込んだわけではないが、同社の参入によって折りたたみスマートフォン市場はいよいよ群雄割拠の様相を呈してきた。いまや「折りたたみスマホ戦国時代」と呼べる段階に入っている。
日本では選択肢が限られていた折りたたみスマホ市場
世界の折りたたみスマートフォン市場では、SamsungやHuaweiをはじめ、Motorola、Honor、Xiaomi、OPPOなど複数のメーカーが製品を展開している。縦折り、横折り、さらに大画面化したモデルなど、メーカーごとに方向性も分かれてきた。
ところが日本市場に目を向けると、事情はかなり違う。日本ではSamsungとMotorolaの存在感が大きく、Googleの「Pixel Fold」シリーズやOPPO、nubiaなども加わっているものの、世界で展開されているすべての折りたたみスマートフォンを購入できるわけではない。特にHuaweiやXiaomiの最新モデルなど、日本では正規販売されていない製品も多い。
つまり世界では「どのメーカーの折りたたみを選ぶか」という競争が進んでいたのに対し、日本では長らく「そもそもどの製品を選べるのか」という段階にあった。
SamsungのGalaxyが牽引してきた日本市場
日本市場で折りたたみスマートフォンを語るうえで、Samsungは外せない存在だ。
「Galaxy Z Fold」シリーズでは横開き、「Galaxy Z Flip」シリーズでは縦開きという2つのスタイルを展開し、特にFoldシリーズでは開いたときの大画面を生かしたマルチタスクや専用機能を世代ごとに磨いてきた。折りたたみ機構を珍しさだけで終わらせず、普段使うスマートフォンの操作に組み込んできたわけだ。
2026年の『Galaxy Z Fold8』では、その方向性がさらに広がった。従来のFoldシリーズとは異なるパスポート型のデザインを採用し、閉じた状態ではワイドなカバーディスプレイ、開くと7.6インチの大画面を利用できる。重量も約201gまで抑えられている。
一方、従来のFoldシリーズが目指してきた大画面・生産性重視のスタイルは『Galaxy Z Fold8 Ultra』として展開され、約6.5インチのカバー画面から約8.0インチのメインディスプレイへ広がる構成になった。SamsungはFoldシリーズを一つの方向に絞るのではなく、異なる使い方に合わせて選べる段階へ進めている。
Motorolaも日本市場で存在感を高めてきたメーカーのひとつだ。縦方向に折りたたむ「razr」シリーズでは、コンパクトさに加えてデザイン性も打ち出してきた。2026年にはMotorolaとして初めて横開きの『razr fold』も投入し、8.1インチの大画面を備えるモデルをラインアップに加えている。
こうしたSamsungやMotorolaの取り組みに加え、GoogleやOPPO、nubiaなども日本で製品を展開してきた。メーカーごとに、仕事やマルチタスクに使える大画面を重視するのか、閉じたときの携帯性やデザインを重視するのか、あるいはカメラやAI、サービスとの組み合わせを重視するのか、折りたたみスマートフォンの価値は少しずつ分かれている。
Appleが持ち込むのは「iPhoneの折りたたみという選択肢」
こうして各メーカーが製品を展開してきた市場に、Appleが『iPhone Duo』を投入する。
ハードウェアだけを見れば明らかな後発だ。パスポート型という形状も、折りたたみスマートフォンという仕組みもAppleが初めて作ったものではない。では、なぜAppleの参入が大きな意味を持つのか。
理由は、Appleがすでに巨大なiPhoneユーザー基盤を持っているからだ。これまで折りたたみスマートフォンに興味があっても、iPhoneからAndroidへの乗り換えが前提になることが、選択肢を狭める一要因になっていた。
『iPhone Duo』ならiOSを使い続けながら折りたたみの大画面を選べる。さらにiCloud、Apple Watch、Mac、iPadなど、すでに使っているApple製品との連携も含めて検討できる。
ここにAppleならではの強みがある。SamsungやGoogleなどが長年かけて折りたたみスマートフォンを育ててきたのに対し、AppleにはiPhoneを中心とした巨大バックボーンがある。『iPhone Duo』は折りたたみスマートフォンそのものを新しく発明する製品というより、これまでAndroid側にあった選択肢をiPhone市場にも持ち込む製品と考えたほうが分かりやすい。
それでも今回の参入は、日本の折りたたみスマートフォン市場にとって一つの転機になりそうだ。これまで折りたたみに興味を持ったiPhoneユーザーは、Androidへの乗り換えを前提に端末を選ぶ必要があった。『iPhone Duo』の登場によって、ついにiPhoneを使い続けながら折りたたみという選択肢を検討できるようになるからだ。
36万円台という価格で、何が変わるのか
もっとも、Appleが参入したからといって、折りたたみスマートフォンが一気に一般化するとは限らない。『iPhone Duo』は日本で36万円台からで、通常のiPhoneと比べればかなり高価だ。閉じれば持ち運びやすく、開けば7.6インチの画面を使えるという利便性に、どれだけの価値を感じるかはユーザーによって変わる。
折りたたみ機構を持つことで、通常のスマートフォンにはない使い方ができる一方、サイズや重量、操作感などにも違いが出てくる。実際に使い始めたとき、毎日のスマートフォン利用の中でどれだけ折りたたみを開く機会があるのか。36万円台という価格差を払ってまで選ぶ理由になるのか。こうした部分は、スペック表だけでは判断しにくい。
ただ、日本のユーザーが比較できる選択肢が増えること自体には意味がある。これまでは「折りたたみスマートフォンを買うかどうか」が大きな判断だったものが、メーカーや製品ごとの違いを見ながら考えられるようになる。
折りたたみスマートフォンは、すでにメーカーによって考え方がかなり違う。大画面を仕事やマルチタスクに使いたい人もいれば、閉じたときの携帯性やデザインを重視する人もいる。Appleの場合は、そこにiOSやApple製品との連携という条件が加わる。価格だけでなく、普段どの端末やサービスを使っているかによっても、選択肢の見え方は変わってくる。
折りたたみスマホの「戦国時代」が到来
各メーカーがさまざまな形を試しながら、7年かけて育ててきた折りたたみスマートフォン市場。そこにAppleが『iPhone Duo』を投入する。
Appleが折りたたみスマートフォンというカテゴリーをゼロから作るわけではないが、それでも、iPhoneという巨大なユーザー基盤を持つAppleの参入は、日本市場にとって大きな変化になる。
36万円台という価格を考えれば、誰もが普通のiPhoneから『iPhone Duo』に乗り換えるとは考えにくい。一方で、折りたたみスマートフォンに興味がありながらAndroidへの移行をためらっていたユーザーにとっては、初めて比較できる製品になる。
これまで各メーカーが育ててきた折りたたみ市場に、iPhoneという巨大な選択肢が加わることで、日本でも「折りたたみにするか、しないか」だけでなく、「どの折りたたみを選ぶか」を考える場面が増えていく。7年かけて積み上げられてきたカテゴリーが、ようやく日本でも本格的な競争の段階に入ろうとしている。
折りたたみスマートフォンを取り巻く競争は、ここからさらに本格化していくだろう。むしろ、本当の戦いが始まったとも言えるかもしれない。