恋人から社員、出場者まで...人気YouTuberの“オーディション動画”が多様化している理由

　「きまぐれクック」チャンネルにて、現在準備中の鮮魚店併設型飲食店の各部門責任者を決めるオーディションの様子がYouTubeで公開された。きまぐれクックのオーディションは、一体どのようなものだったのか。今回は、これまでYouTubeで話題になったオーディション動画を紹介しながら、オーディション動画の変遷を辿ってみたい。

　華麗な包丁捌きでさまざまな魚を調理する「きまぐれクック」（メインチャンネル登録者数1,360万人／2025年4月25日時点）のかねこは2月28日、サブチャンネルに投稿した動画で、「お店やります」と突如発表。自ら出資し、新鮮な魚の販売のほか、美味しい海鮮が食べられる飲食スペース、解体ショーなどが行えるイベントスペース、オリジナルグッズを揃えた物販スペースを擁した店舗を、地元である愛知県常滑市に建設する予定であることを明かしたのだ。

　そんななか4月21日に投稿されたのが、実際に店舗で働くことになる各部門の責任者を決めるオーディション動画だ。審査員はかねこと、店舗の運営サポートなどを担うSANKO MARKETING FOODS社の担当者2名が担当し、会場には店舗マネージャー、鮮魚コーナー責任者、飲食コーナー責任者の応募者のなかから、最終試験に臨む8名が集合。審査内容は各部門によって異なるものの、サクドリから原価4,000円のブリフィーレを粗利率40％、500円で売ることを想定し、切り身にするといった問題や、お造りを予算内で作るもの、アニサキス探しなど、経験と知識が必要なものばかりだ。

　採用試験というだけでも緊張するが、今回は慣れないキッチンかつカメラが回っているという特殊な環境下。8名は緊張しながらも奮闘しているが、なかにはかねこのこれまでの動画をみて、勉強してきたという応募者もいた。しかし、今回の合格者は「ゼロ」。かねこは「責任者となると極端な話、魚の知識も料理の腕も、僕よりもできる方がいいと思っておりましたので、かねこさんの動画をみて一生懸命練習しましたっていうレベルの方だとちょっと責任者は難しい」と発言。「今回のお店、人生かけてつくろうと思っている店舗なので、妥協はできませんでしたね」と説明し、正社員での内定を数名に出したことを報告している。

　オーディション動画で人気の企画といえば、恋人オーディションだ。ヒカル（登録者数498万人）のチャンネルで2024年5月に投稿された、人気YouTuber・エミリンの彼氏オーディションは再生回数239万回を超えるヒットコンテンツ。最終審査では14名のなかから選ばれたハイスペックで個性的な3名が宮古島を舞台に、デートや対話を重ねてエミリンに猛アピール。現在エミリンはこの最終審査で彼氏候補に選んだ“あだちくん”と恋人関係にあるが、オーディション時はエミリンの選択やオーディション参加者たちに関するコメントが殺到し、連日大きな注目を集めていた。

　そして毎回大きな話題となっているのが、格闘家やYouTuber、実業家の顔をもつ朝倉未来が手掛ける「BreakingDown」のオーディション動画だ。同イベントのオーディションがYouTubeで初めて公開されたのは、2022年3月のこと。第4回大会の出場者を決めるこの動画では、のちにBreakingDownのスター選手となったこめおが初登場し、視聴者は瓜田純士や応募者にくってかかるこめおに釘付けに。同動画は現在、再生数1,020万回を超えており、YouTuberが手がけるオーディション動画のなかでも歴史的ヒットコンテンツとなっている。

　かつてYouTuberたちのオーディション動画というと、その多くは恋人を探すというもの。いまでも恋人オーディション動画は新しいものが次々と投稿されているが、きまぐれクックや朝倉の事例をみると、最近は一緒に働く仲間を探すリクルートものや大会出場者を決めるものなど、内容の幅が徐々に広がってきていることがわかる。とくにきまぐれクックの場合、店舗がオープンした暁には、実際にオーディション動画に登場した誰かと会えるという楽しみがあり、オーディション動画がその後の事業に少なからず影響を与えることは間違いない。オーディション動画は今後もYouTuberが手がける事業にあわせ、さまざまなコンテンツが誕生していきそうだ。