コンビニで未だコピー機が活躍しているのはなぜ? ローソンのコピー機が”マルチ”な理由に迫る

 日々エンタメ×テクノロジーについて発信するリアルサウンドテック編集部。腕利きの執筆陣による読み物も好評ですが、一方で若年層の読者も多い媒体として、参考にしているのは現役大学生たちの声。連載「Z世代のリアルレビュー」では、編集部にインターンスタッフとして勤務する現役大学生ライターの視点から、毎週さまざまなトピックをお届け。今週は、数年前は元ローソンクルーとしてアルバイトをしていた大学生、今世くいながお送りします。

 大人も学生も1日に1度は触れる機会のあるであろうお店、コンビニ。最近ではカフェにも負けず劣らずの美味しいコーヒーが飲めたり、モバイル充電器のレンタルサービスが普及していたり、時代の流れや流行が可視化された場所とも言えるでしょう。

 簡単な生活必需品なら大体揃ってしまう上に、流行と共に店内も刷新され続けていっているコンビニですが、数十年変わらず店内に置かれている機械があります。それこそ、今回紹介するマルチコピー機です。

 自宅や職場で簡単にコピーが取れる現代で、コンビニに置かれているマルチコピー機の何に需要があるのか。今回はそんな店内にあるマルチコピー機の生い立ちから現在の在り方についてまで、ローソン本社にお邪魔してお話を伺います。

 ローソンのマルチコピー機の担当の方にご案内いただき、なんと、本社付近のローソン店舗にてマルチコピー機のサービス体験もさせていただいたので、そのレポートもしていきたいと思います!

ローソン エンタテインメントカンパニーマネジャー井戸田 英孝(いどた ひでたか)さん

──まずは、マルチコピー機の歴史や成り立ちからを教えてください。

井戸田:1983年に、ローソンはコピー・印刷サービスを開始しました。はじめは紙から紙へのコピーだけでしたが、その後に電話回線を用いたファックス。その2つだけの基本サービスでした。ただ、2013年にコピー機の入れ替えを行ったと同時にネットワークを繋げたことで、できることや展開の幅が広がったことが、1つの転換期でした。

──できることの幅が広がったとのことですが、現在利用者の方が使っているサービスの割合などはどうなっているのでしょう?

井戸田:『コンテンツサービス』という、アイドルや芸能、漫画やゲームなどのコンテンツ画像をステッカーやブロマイドという形でプリントできるサービスがここ数年で伸長しました。コンテンツサービスでは、新聞や検定の問題集なども販売されていたりします。

 あとは行政サービスといって、マイナンバーカードを使って住民票の写しなどを打ち出すサービスが伸長しています。ほかにはネットワークプリントという、お客様がクラウド上にあげたデータをプリントできるサービスもここ数年利用が増えています。

※最近では、PIXIV FANBOXと提携したクリエイター支援プリントの施策もSNSでも話題に https://print.fanbox.cc/

──コンテンツやIPとコラボした施策が増えている中でも、コンテンツサービスがどういうものかについて教えてください。

井戸田:ローソンでは、『ローソンプリント』というものをやっています。ローソンでコラボキキャンペーン施策を行っているコンテンツのブロマイドやローソングループで出資している映画の場面写ブロマイドなどをやらせていただいています。

 ほかにも『ドラゴンクエストX』のコラボで、ゲーム内の”思い出アルバム”の写真を用いて名刺やカレンダーをプリントできるサービスなどがありました。

https://x.com/DQ_X/status/932874388377976832

──コンテンツサービスで印刷できるブロマイドには、何種類の中からランダムで排出される商品もありますよね

井戸田:そうですね、ランダムのプリントは10年くらい前から始めました。ランダムのブロマイドの中には、サイン入りのものが入っていたり、当たりだと”当たり”という文言が入っていたり、という試みをしていたりします。

──本当に、ただのコピー機からは離れた機能が備わっているんですね……! 今取り扱っているコンテンツの数はどれくらいなのでしょうか

井戸田:ローソンではコンテンツサービスにおいて16のサービスを提供しており、取り扱い商品数は総数40万点以上 。ローソン限定サービスのローソンプリントでは約1万点の商品を取り扱っています。スマートフォンで名刺を作って、店舗のマルチコピー機で印刷できるサービスもあります。

──それはぜひやってみたいですね……!

というわけで、ローソン店舗に設置されているマルチコピー機で実際に名刺を作ってみることに。手元のスマートフォンからマイ名刺のサービスにアクセスし、LINE連携をして名刺データを作成。そこからマルチコピー機に番号を入力し、実際に印刷してみました。

 所属企業名、名前、連絡用アドレスを記入したシンプルな名刺ですが、すぐに印刷できてしまいました。なんとこの間、5分程度。かかったお金もプリント代金の数十円のみでした。

 出先で名刺を忘れてしまい困ったときなどにもとても有難いサービスなのではないでしょうか。社会人の方ならきっと覚えておいて損はないはず。他にも、簡単でいいから名刺が欲しい!という学生の方にもおすすめできる機能でした。

 コンテンツサービスは前述の通り、膨大なコンテンツを取り扱っており、メニュー画面を軽く触ってみるだけでも、楽譜から婚姻届けまで、取り扱っているものの幅の広さに驚かされます。

──できるようになったことの多さからしても”コピー機”という呼び方が適切なのかも分からなくなってきましたね。

井戸田:そうですね。最初はコピー機だったのが、今ではマルチコピーという呼び方になりました。先ほど言った通り、ネットワークに繋がりできることの幅が広がったことで、マルチプリンターという名称になっています。ただ、お客様の中には混乱される方もいると思うので、いまだにマルチコピー機と呼んでいます。

──さきほど、2013年にコピー機の刷新があったと仰っていましたが、これまでのローソン店内でのコピー機の進化の歴史についてもう少し詳しくお聞きしたいです。

井戸田:基本、コピー機は機械を変えないと大きなサービスの変化がありませんので、先ほど言ったインターネットを繋げた2013年と、新しくシールプリントができるようになった2020年に大きな入れ替えがありました。

 シールプリントができるようになったことで、お子様のいる方が学校で使う持ち物に貼るような、いわゆるお名前シールをプリントしてご利用なさっているという使用例を聞くようになりました。他にも、推し活用のうちわ作成にサービスをご利用なさっているお客様もいるようです。

──コンテンツ量が多いだけに、利用者の目的も多岐に渡っているのですね。最後に、何か利用者の反応として印象に残っているものなどはありますか?

井戸田:北海道の最北端・稚内にローソンを出店した際にはATMやLoppiのほかにマルチコピー機の多彩な機能が非常に助かるという声を頂きました。娯楽は地域に限らず求めるものなので、身近にあるコンビニで多様なサービスを受けられるのは、都心以外の地域で非常に注目される理由になっていると感じます。

 郊外ではご高齢の方が役所へ行くのも大変という実態があり、住民の利便性向上のために、役所内にマルチコピー機を設置したいという自治体もあったりします。現在ローソンのマルチコピー機では、マイナンバーカードを利用して、各種証明書が全国のローソンで取得できる行政サービスを提供しています。

 今後、マルチコピー機の行政サービス面を強化していくことで、役所まで足を運ばずとも、自宅から歩いて数分のコンビニで行政サービスが受けられることがもっと広がれば良いなと考えています。

 今回のインタビューを通して、時代に合わせて役割を変えてきているマルチコピー機の多方面での活躍や需要を知ることができました。主にコンテンツプリントの印象が強かったマルチコピー機が、思っていたよりもずっと広い世代の人たちに必要とされていることは、こうしてお話を伺わなければ知ることはできなかったと思います。

 コンビニの身近さや便利さに、マルチコピー機は必需品と言っても過言ではないでしょう。時代に合わせて姿を変えていくコンビニの在り方をとくに体現しているマルチコピー機が今後どうなっていくのか、個人的にも楽しみにしたいです。

あのころ若者をアツくさせた“80'sガジェット”が蘇る 「#コミカルデバイス」とは一体?

原色やスケルトンをふんだんに使ったデバイスたちを見て、「懐かしい!」と感じる人もいれば、「これなに?」「初めて見た」と感じる若者…

関連記事