レオス・ヴィンセントが体現する“一流への道筋” パッションでにじさんじを引っ張る、狂気の科学者

にじさんじで鍛えたエンタメ力で “本物”と同じ土俵で対峙しはじめたレオス・ヴィンセント

 そんな彼の魅力・狙いが全開となった企画が、つい先日彼のYouTubeチャンネルに公開された『にじさんじスポーツ王決定戦』である。

 タイトルでピンときた方もいるはずだが、この企画はかつてTBSで放送されたテレビ番組『スポーツマンNo.1決定戦』をオマージュした内容となっている。主催であるレオスを含め、同期のオリバー・エバンス、春崎エアル、成瀬鳴、ベルモンド・バンデラス、長尾景、風楽奏斗、渡会雲雀の8人が出場している。

 かつて番組内で競技された「タッグ・オブ・ウォー」を始めとし、同系列番組『筋肉番付』で人気があった「ストラックアウト」なども種目にありつつ、くわえてこの企画独自の競技が追加されるなど、懐かしさと新鮮さがないまぜになった企画となった。

にじさんじスポーツ王決定戦【【実況:古舘伊知郎】】

 多くの人を何よりも驚かせたのは、本企画の実況として本家『スポーツマンNo.1決定戦』で実況役を務めた古舘伊知郎が担当したことにある。

 古舘は2024年を迎える今年、御年70歳の大ベテラン(!)。近年では2015年12月に『報道ステーション』を降板して以降、テレビの舞台からフェードアウトしており、この企画で久しぶりに古舘の声を聞いた!という方もいたはずだ。『スポーツマンNo.1決定戦』そのものも、2009年を最後に放映されておらず、いわば「平成らしい懐かし番組」の一つとして数えられる名番組である。

 無事に企画動画を投稿したあとのレオスの振り返り配信では、古舘サイドとレオスサイドとのミーティングの場を設け、直談判したときのエピソードが明かされている。

「古舘さん、わたくし、制作会社、マネージャーで集まって、大元の『VTuber』についての説明、技術的な説明をしたんです。そのとき、古舘さんからは言い方はちょっと違うけど『わたしは、本物のアスリートが汗流して全力でぶつかり合ってるのをその場で実況してきた。VTuberの皆さんがやられるとのことですが、本物のスポーツ選手がやっている、熱量をぶつけ合ってるものに対して、VTuberが勝っているものはなんですか?』とハッキリ言われたんです」

「これをマネージャー任せにしたり、半端な返答をしたら多分(オファーを)うけてもらえないだろうなと思った。なのでまずVTuberの説明から入って、『ハッキリ言って劣化版だと思います』と話しつつ、色んなエンタメを届けていくうえで、自分が一番アツく見れた時代のものを、VTuberとして等身大かつ全力で挑んで、いまの視聴者に届けたい、と伝えた。そのアツさを伝えるために、どうしても古舘さんにやっていただきたいと話しをした。どちらかというと、ロジカルじゃなくて熱量を伝えたんですね」

 レオスのパッションを静かに受けきった古舘は、「(私は)原始仏教の研究を最近しているんですが……」と断りをいれつつ、「つまりVTuberというのは、ある意味では仏教における“不滅”を体現している存在で、みている視聴者にとっての“偶像”となることで求心力を得ているんですね」と理解したようで、これを経て古舘はオファーを快諾してくれたという。おもわずレオスも「古舘さんの中で原始仏教とVTuberが繋がった!?」と内心驚いた。みごと古舘の実況アナウンスが決定したのだ。

【#にじさんじスポーツ王決定戦】を振り返る【レオス・ヴィンセント 】

 この企画動画が投稿されると、にじさんじの先輩・鷹宮リオンは「みんなもちろん頑張ってるのもすごいし、古舘さんの語彙力がすごかった。感動したもん」と感服したように語り、それ以外でも大小さまざまな反響が寄せられ、大きな話題となった。

 にじさんじのタレントらを始めとしたVTuberたちは、2017年~2018年の黎明期のころからテレビ・ラジオ番組の企画やタレント達のモノマネ・オマージュでリスナーの興味をひき、ファンを徐々に生み出していったという一面がある。古舘からの鋭い指摘はもちろんその通りだと筆者は想いつつも、オマージュの元ネタである本人たち……古舘の言葉を借りれば“本物”たちと対面し、彼らとともに活動をするほどとなったことも事実である。

 レオスの場合、「VTuberとしてエンタメを生み出していこう」というスタンスをすこしずつ尖らせ、にじさんじの影響力が年々影響力を増していったアッパーなムードにピタリとハマったと評して良いだろう。

 そして、レオスのパワフルな“一発カマしたろう”というスピリットは、その後後輩にも伝授していくこととなる。2023年2月3日に配信されたにじさんじ5周年記念配信において、先輩・椎名唯華と当時デビュー間もない獅子堂あかりとの3人でチームを組んだ際、彼は獅子堂ににじさんじ特有の悪ふざけ・ボケのカマし方を獅子堂に伝えたようだ。

「『初めのうちにギャグ路線でいくと次もそれを期待されちゃって、大変になっちゃうかなと思うんですよ』って獅子堂がいってたら、『そんなんじゃダメですよ! 1発かましとかないと!』ってレオスが言ってて、熱かったね。」(椎名)

「あかり的には、レオス先輩はご挨拶した先輩の中で良い意味でいちばんイカれてる先輩だった。質問をすると想像の上を“行き過ぎてる”答えが返ってくる。『こんな感じでいいですかね?』って聞くと『そんなんじゃダメだ』って言われる。結局、それ(教えてもらって挑戦したこと)が面白くウケてたからね、あかりは甘かった」(獅子堂)

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 そんなレオスは現在、テレビ朝日の深夜番組『金曜日のメタバース』に新レギュラーメンバーとして出演、番組内の新たな編成・新セットに合わせる形でその存在感を示している。VTuberが深夜番組とはいえテレビでレギュラーを張る時代になるなんて……と、一昔前ならば想像もつかない出来事に驚いたファンも多いだろう。

 持ち前のエッジさ・パッション・ハイエナジーで、エンタメの聖地ともいえるテレビ番組の世界へと達したレオス・ヴィンセント。2024年、彼は本物との邂逅と対峙を経て、VTuber~バーチャルタレントの限界・可能性を拡張するエンターテイナーへと成長を遂げつつあるようだ。

にじさんじで一番グローバルなひと オリバー・エバンスが“断絶の世”でもたらした功績

現在のVTuberシーンにおけるトップランナーの一つであるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている…

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