2020年12月10日に発売したオープンワールドRPGの『サイバーパンク2077』。アメリカの西海岸に存在する都市・ナイトシティを舞台に、主人公・V(ヴィー）は裏家業の世界で名を馳せるため、戦いに身を投じていく……というストーリーになっている。

　このゲームでとくに注目されたのが、タイトル名にもある「サイバーパンク」な世界観。『ブレードランナー』『AKIRA』『攻殻機動隊』など名作が多いジャンルで、この『サイバーパンク2077』もそんな作品のひとつだ。こうしたサイバーパンク作品ではしばしば「人体改造」が当たり前の行為としてあつかわれる。機械を組み込むことで強靭な肉体を手に入れたり、直接武器を装着したりすることで戦闘能力をあげることができる世界観は、育成要素のあるRPG作品との相性もよい。

　ちなみに、筆者は2022年に配信されたNetflixアニメーション作品『サイバーパンク: エッジランナーズ』を視聴して初めてサイバーパンクの世界観に触れた。華々しいネオン、技術の発達した人工物、どこか退廃的な世界観……その雰囲気にすっかり魅了されてしまった。ストーリーを進めたり戦闘をするのももちろん楽しみのひとつだが、この世界観を見て回るためだけにプレイしている人も少なくないのではないだろうか。そのくらい、心を惹きつける要素で構成された作品だと感じる。

　この素晴らしい世界観を、斬新な切り口で紹介しているYouTubeチャンネルがあるので紹介したい。ゲームの世界観や要素について、専門家をゲストに迎えて詳しく掘り下げていく動画シリーズが人気の「ゲームさんぽ /よそ見」で、チャンネル登録者数は2023年10月23日時点で15.7万人である。

　2023年9月30日に投稿した「【1番オシャレなNPCを探せ!!】業界人と行くゲーミングおしゃれSNAP2023／サイバーパンク×ゲームさんぽ#01」という動画では、数々のファッション雑誌を手がけた編集者・大平かりんと、外資系ブランドなどで広報を担当する頭山亜季がゲストで出演。ファッション業界関係者のなかでも、とくに注目を集めるプロ中のプロである。

細部までこだわったディティールを見逃さない

　動画の内容を振り返っていこう。さっそく『サイバーパンク2077』の世界を見ていくことにしたふたり。主人公・Vがアパレルショップの周りを歩いていたところ、黄色のコートを着た男性に遭遇。大平は「すごいですね、ディテール」と、シャツのボタンを留めている糸の色にまで注目、細部までつくり込まれた衣装に感動している様子だった。

　また、大平が着こなしについても「シャツとか掛け違えてますよ」「アイテムというよりスタイリングがすごい」と驚きの声を漏らした。「撮影前に行うファッションシューティングでも、スタイリングで掛け違えるといった“崩し”をあえて取り入れて、キャラクターを出すことがある」と、プロならではのコメントも。リバーシブルで赤いステッチが入った個性的なコートに対しては「普通に試着したい」と感想を述べた。たったひとりのキャラクターのファッションでさえもここまで熱く語っているところを見ると、あらためて本作が徹底した世界観づくりをおこなっていることが伝わってくる。

ファッションから読み解く“ヨーロッパの色”

　その後、場面はクラブへと移り変わる。すると、ウエストポーチを身に着け紫色のタイツを履いた男性キャラクターに遭遇した。

　頭山は「80年代のエアロビの感じだよね」とコメントしつつ、靴がスニーカーではなく高さのあるショートブーツを履いてるところに注目。大平は「こういう組み合わせがヨーロッパっぽいよね」とコメントし、日本やアメリカではスニーカーをチョイスする傾向にあると解説した。つづけて「世の中のトレンドをそのまま受け取らないところがあって、ちょっと間違えてない？　みたいなものも好きだから履く。それが新鮮で、ヨーロッパのおもしろいところ」と分析した。

　『サイバーパンク2077』はポーランドで制作された作品ゆえに、こうした風土の影響が作品にも現れているのかもしれない。大友克洋や士郎正宗らをはじめとする日本のクリエイターが「サイバーパンク」ジャンルに与えたであろう要素も感じつつ、それだけではない各国のエッセンスやトレンドが入り混じった世界観。それが唯一無二の『サイバーパンク2077』らしさにつながっている。まさかその背景を、キャラクターが履いているブーツから紐解くことができるとは、さすがファッション業界のプロである。

　このように、多角的な視点から楽しむことができる『サイバーパンク2077』。ゲームさんぽの『サイバーパンク2077』シリーズは第3回まで公開されているので、気になる方はぜひ視聴してみてほしい。