MGS『マスターコレクション Vol.1』は“決意”を感じる「保存版」だーー“あの”セーブ読み取り設定からマスターブックまで徹底レビュー

“コレクション”要素その3:シナリオブック・マスターブックだけで日が暮れる

 MGS1~MGS3のシナリオは過去に書籍として発売されたことはあるが、シナリオブックは物語とほぼすべての無線が文字になって記されている。当然ページ数は膨大だ。

『MG』&『MG2』……101ページ
『MGS1』……403ページ
『MGS2』……587ページ
『MGS3』……679ページ

 また、特筆すべきはマスターブックだ。こちらもまずはページ数をお伝えしたい。

『MG』&『MG2』……17ページ
『MGS1』……87ページ(心霊写真ガイド含む)
『MGS2』……96ページ(ドッグタグガイド含む)
『MGS3』……128ページ(マップ付きケロタンガイド含む)

 冗談ではなく日が暮れる。マスターブックにはそれぞれの作品の概要や主要人物から細かな人物の紹介、小島秀夫がふんだんに落とし込んだ隠し要素からコレクタブル要素の情報などを網羅している。ストーリーの内容だけでなく、その作品の何が優れていたのか、なにが革新的だったのか、その後の作品へどのような影響を与えたのかを、雑誌を読む感覚で知ることができる。ファンであればこれを読んでいるだけでノスタルジックな気持ちになるはずだ。ただし、ゲームプレイ中に閲覧することはできないので注意したい(攻略情報などは有益なだけにいつでも見られないのは残念だ)。

 特にMSX2で発売された作品に関しては、正直現在プレイするのは厳しい。ドットがなにを表現しているのかわかりにくかったり、そもそも説明が不足していてなにをすれば良いかわかりにくかったりと、ルーキーにはややハードルが高いだろう。もちろんプレイしてその手で体験するのが望ましいが、難しいと感じたらマスターブックを読んで次の作品に手を伸ばすのも悪くはない。

“コレクション”要素その4:連続してプレイするとわかる時代の変化

 ここまで述べてきた通り、『メタルギア ソリッド: マスターコレクション Vol.1』は、“コレクション”の名を冠するにふさわしい出来映えだ。特に『MGS1』のセーブデータ編集や、読むだけで日が暮れるマスターブックなどは、ファンからするとうれしい内容ばかりだ。

 開発者の素性は未だ知るよしもないが、リメイク作品『メタルギア ソリッド デルタ: スネークイーター』(PS5/Xbox Series X|S/Steam:発売日未定)に向けた「オリジナルの意思を継ぐ」という決意表明のようにも感じる。

 また、連続してプレイすると時代の流れを感じることもできる。MSX2からPS1への進化はいわずもがな、『MGS2』と『MGS3』も舞台がそれぞれ人工建造物とジャングルで違うため(後者は当初PS3に向けて構想されていたということもあり)「小島秀夫の表現したかったもの」と共に、ハードの歴史を感じることになる。徐々にリッチになっていくグラフィックやゲームシステムは、歴史を知るか否か問わずプレイしてほしい体験だ。

 そして、もう一度あの名作たちをプレイするきっかけを与えてくれたことに感謝したい。筆者はどの作品も10年以上ぶりにプレイしたが(『HDエディション』すら12年前であることに驚いている)、やはり小島秀夫の作品は色褪せない。いや、「時代にそぐわない表現」に関する注意書きを見るに、褪せているのかもしれない。しかし、このように現行機での発売をファンから熱望され、語り継ぐべき遺伝子として現代に蘇っていることは事実だ。

 『Vol.2』の情報はまだ明かされていないが、長らくPS3に閉じ込められていた『メタルギア ソリッド 4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』の移植に期待したい(『スナッチャー』や『ポリスノーツ』などもなにかの間違いで移植されないか)。

 とにかく、『メタルギア ソリッド: マスターコレクション Vol.1』は、「メタルギア」シリーズの歴史を振り返りたい、知りたいと思うなら、絶対に手に取るべき保存版であることを、最後に強調する。

©Konami Digital Entertainment

メタルギアの原点『MGS3』はなぜ今リメイクされるのか 「Δ」が示唆する文化的遺伝子の伝承

人の人生は 子供たちに遺伝情報を伝えるだけじゃない 人は遺伝子では伝達できないものを伝えることができる 言葉や文字や音楽…

関連記事