2022年12月3日と4日に、配信サイトのTwitch上にて『無理ゲーRTAマラソン〜IMPOSSIBLE RTA MARATHON』が開催された。RTAとはリアルタイムアタックの略で、現実時間をもとに対象ゲームのクリア時間を競う競技を指す。本イベントはその祭典であり、Twitchのレイド機能（視聴中の配信が終了した際、別のチャンネルに自動で切り替わる機能）を使用し、複数の配信者が難しいゲームや対象作品の高難度モードに挑戦していく。

　本稿では、本イベントでもとくに特徴的だったPS3版『メタルギアソリッド3 スネークイーター』（以下、MGS3）の部を紹介しよう。

見つかったら即ゲームオーバーの「EUROPEAN EXTREME」を、ノーキル＋迷彩効果皆無のタキシードで挑む

　PS3版『MGS3』は、2004年にPS2で発売された同作のHD版にあたる。前作や前々作で主人公を務めたソリッド・スネークから変わり、後に「ビッグボス」と呼ばれる伝説の英雄、ネイキッド・スネークが登場しているのが特徴だ。アメリカとソ連がくり広げた冷戦を題材にした物語はもちろん、森林が生いしげるジャングルを始め、環境との同化具合によって発見される確率が上下する「カモフラージュ」という新要素を取り入れた潜入や、動植物の捕獲、負傷した部位の治療といったサバイバル要素などが当時話題となった。全シリーズ中で本作が最高傑作という意見は、現在でも多い。

　走者・ぶらっきー氏が挑むのは、そんな同作の最高難易度「EUROPEAN EXTREME」。スネークの体力が少ない、敵が強いなど制約は多々あるが、なにより敵に発見されたら即ゲームオーバーという仕様が強烈だ。さらに、すべての敵を殺さずにクリアするノーキルプレイに加え、迷彩効果がほとんどないタキシードを装備するという徹底ぶり。タキシードは本編のクリア特典だからなのか、本イベントのRTAではクリア済みのデータを使っていた。

　ぶらっきー氏は敵兵たちの視角や巡回ルート、仕様上の弱点などを熟知しており、見つかったらゲームオーバーという緊張感のなか、真っ黒なタキシード姿のスネークを巧みに操作し、日中のジャングルを悠々と走っていく。麻酔銃を1発当ててからのローリングというコンボを駆使したり、蜂から逃げる兵士の後にぴったりついていっしょに吊り橋を渡ったりしているうちに、わずか5分30秒ほどで本作の序盤をクリアしてみせた。

　タキシードが迷彩服としてほとんど機能していない点を利用し、あえて気取られることで敵兵を誘き出すという今回のルールならではの戦法も使い、どんどん先に進むぶらっきー氏。最初のボスであるオセロットとの戦いを制し、その後の洞窟を抜けると、今度はコブラ部隊のひとり、ザ・ペインとの戦闘になる。

　蜂を自在に操る強敵、ザ・ペインとの戦いでは、氏はグレネードによる蜂の無力化のほか、麻酔銃の速射テクニック（1発ごとに装填が必要な武器は、撃った瞬間に装備画面で着脱すると弾が一瞬で装填されるという技）を用いたスタミナを削る戦法を実践し、瞬く間に勝利してみせた。なお、本作のボスには体力とスタミナという2つのゲージがあり、スタミナを削って倒した相手はキル数には含まれない。

　事前に拾っておいたアイテムの段ボールで身を隠しながら、ぶらっきー氏はソ連兵や研究者がいる場所をサクサク進む。本来なら研究者に扮して潜り込むはずの場所にも、タキシードのまま段ボールと麻酔銃を武器に突入。音による誘導、敵の視認範囲を把握したうえでの立ち回りなど、さまざまな操作テクニックを駆使し、誰にも見つかることなく目的を達成していった。

　配信も後半戦へ。4人目のコブラ部隊員であるザ・フューリーとの戦闘が近くなると、今回の部で解説を務めたきせあき氏はその難しさについてコメント。『MGS3』のRTAではザ・フューリーが壁になる傾向があるようで、空中を飛びながら火炎放射器で炎を振りまいてくる攻撃や、行動パターンが不安定なところが要因として大きいようだ。実際のバトルでは、ザ・フューリーがぶらっきー氏も初見となる行動パターンを見せたほか、火炎放射器による猛攻で氏をギリギリまで追い詰めるなど、事前の解説に違わぬ強さを見せつけた。

　その後は、本作の宿敵であるヴォルギン大佐や、核搭載戦車・シャゴホッドとの死闘もこなしていき、1時間14分18秒でクリア。見つかったら即ゲームオーバーの難易度に縛りを課すというストイックな挑戦を、見事成しとげた。

　その一方で、走者であるぶらっきー氏が用いたテクニックの内容や仕組み、さらにRTA中はスキップされていた物語の展開を補完したりと、配信中はきせあき氏による解説も光った。かなり丁寧に話していたので、『MGS3』を知らない人でも十分楽しめるだろう。気になる人はぜひアーカイブ配信を確認してみてほしい。『MGS3』のアーカイブはぶらっきー氏のTwitch配信サイトで見られる。