TikTokなどのショート動画に適した芸人・芸風は存在する? マーケティングの専門家に聞く「気軽にコメントできるネタ」の重要性

統一性が大事

――ネタの方向性が違うように思えますが、意外と共通点がありますね。

小里:特にどちらも企画を統一していることは大きいです。コンテンツが全く異なる企画ばかりですと、フォローするメリットは低くなります。統一した企画を続けることはネタ切れになるリスクもありますが、実直に継続しているところは、TikTokを活用したい人の参考になるはずです。

――ちなみに、ねづっちさんがYouTubeで苦戦していた要因は何なのでしょうか?

小里:やはりTikTokとYouTubeのユーザーニーズの違いが大きいです。YouTubeの場合、TikTok同様に「暇つぶし」や「隙間時間」といったニーズは共通しても、その尺は数秒単位ではなく、最低でも10分程度のコンテンツが受け入れられやすい。10分ほどの舞台でのネタも投稿していますが、派手なエンタメ性がないため、コアなファンを超えた大衆向けの拡散は期待できません。実際、現在のYouTubeチャンネルの再生数を見ても数百万、数十万再生されているのはいずれもショート動画です。通常投稿は多くても1~2万回の再生数に留まっています。

――ねづっちのYouTubeチャンネルにアドバイスするとしたら、どういうことを伝えますか?

小里:YouTubeのライブ配信をもっと多用すると良いです。リアルタイムで“視聴者からのコメントをもとに即興謎かけする”というコンテンツはウケますし、スパチャなども増えるのではないでしょうか。

 また、ねづっちさんとラバーガールさんのどちらも、TikTokのコメント欄にYouTubeリンクを張り、TikTokで興味を示したユーザーをYoutubeでファン化する、という流れを作るとYouTubeもより伸びるのでは、と考えています。

TikTokで集客がトレンド

――たしかにねづっちさんもTikTokで人気を博し、YouTubeの登録者を伸ばしている印象を受けます。最近はTikTokで集客して、YouTubeで収益化を図ることは珍しくないのですか?

小里:はい。これについては現在の潮流と言っても良いでしょう。コムドットさんに代表される新世代YouTuberは、まさにこれをうまく活用しています。現代のYouTuberは、過去に比べて参入者が増えたレッドオーシャンです。この中で勝ち上がるための一つの手段として、TikTokでリーチを取得してYouTubeに流すという方法があります。TikTokはYoutubeとは違い、フォロワー0人でもバズる可能性のある“新規優遇型SNS”です。このような戦略は有効であり、今後は当たり前になるかもしれません。

――TikTokが注目されて数年経ちましたが、ユーザー心理に変化は見られていますか?

小里:ここ数年でいうと、コンテンツの多様化によって情報収集要素が強くなりました。例えば、YouTubeは違法アップロードコンテンツや際どいコンテンツが中心だった時代から、現在は芸能人を始め、ニュースやメディア、学びコンテンツなど、大衆の娯楽と言える多様なニーズを満たすプラットフォームになったイメージです。TikTokでもコンテンツと利用者属性が多様化し、ユーザーニーズも単なる暇つぶし要素から、情報収集要素が加わってきたと感じます。このニーズを読みつつ、エンゲージメントを高めるコンテンツ作りができるクリエイターが生き残れるのではないでしょうか。

■小里 雄平(おり ゆうへい)
1984年生まれ。Webデザイナーを経て、2008年東証一部上場総合広告代理店に入社。2年目にして全社トップセールスに選ばれ、2013年支社長へ就任。官民問わず様々なキャンペーンプロモーションの戦略立案・実行を行い、事業領域の拡大・顧客ロイヤルティの向上に貢献。マネジメント分野では100名の営業部門を統括し、業務改善を目的とした社内システムの導入や、研修実行、制度設計、新商品開発などを推進。2018年に「社会の”Growth”をリードする」を旗印にアドテク・マーテクベンチャーの株式会社inglowを設立し、東京・大阪・名古屋を拠点に、ナショナル企業からローカル企業まで、幅広くデジタルマーケティング、企業SNSの運用サポートを行う。YouTubeチャンネル「inglowチャンネル - AI時代のWebマーケティング」にてAI時代のWebマーケティング配信中。

■書籍情報
『世界一やさしい TikTokマーケティングの教科書 1年生』
著者:小里雄平
出版社:ソーテック社
価格:1,650円(税込)
発売日:発売中

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