ゲームキャスター・yukishiroが、14年間シーンを見つめ続けた末の悲願 『VALORANT』の快挙を振り返る【前編】
2022年4月10日から開催された、タクティカルFPS『VALORANT』の世界大会『Champions Tour 2022: Stage 1 Masters - Reykjavík』。そこへ日本代表として出場したZETA DIVISIONは世界3位というeスポーツ史に残る偉業を成し遂げ、Twitterでも「#ZETAWIN」がトレンド1位となるなど大きな話題となった。
しかし、「世界3位」という結果ばかり独り歩きし、どのようにしてZETA DIVISIONがそこに至ったのか、なにが勝因で、誰が重要だったのか、そうした内実はあまり鑑みられなかった。そこで今回、同大会にて解説を務め、ほかにも数々のキャスターとしての実績のあるyukishiro氏に、放送では話しきれなかった「#ZETAWINの正体」について質問した。なお、前編では、yukishiro氏がどのようにしてキャスターとしての活動をスタートしたのか。そして『VALORANT』を含む「爆破ルール」の醍醐味について話を聞いた。(Jini)
14年見つめ続けた末の悲願
――早速ですが、yukishiroさんご自身はどのようにキャスターになり、『VALORANT』の解説をするに至ったのでしょうか。
yukishiro:現在は「eスポーツキャスター」として活動していますが、スタートは2008年ごろです。
――では、14年も活動されているわけですね。
yukishiro:最初に実況をした経験は『Cross Fire(クロスファイア)』というFPSのユーザー主催大会ですね。当時はいまのような配信サイトが少なく、LimeChatというIRC(当初のチャットツール)上で趣味として実況したんですが、たまたま誰かがそれを録画してニコニコ動画にアップしていたようで、それを見た会社さんに声をかけていただいたんです。
――現在は「eスポーツ」と呼ばれているものも、かなり草の根的なところから始まったわけですね。
yukishiro:そうですね。その時も『WarRock』というFPSの大会「WarRock 日本最強クラン決定戦2008」を『東京ゲームショウ(TGS)』で行うにあたって「実況をちょっとやってくれないか」と依頼されたのが最初の仕事でした。ちょうど沖縄旅行をしている時に電話がかかってきまして(笑)。
――『TGS』でデビューというのは鮮烈ですね!
yukishiro:昔、本当にまだeスポーツの実況者という存在が定着しておらず、初めての舞台がたくさんの人が集まる『東京ゲームショウ』だったので、それはもう緊張しましたよね。まず入場の時にはいきなり足元にある配線に足を引っ掛けて転びそうにもなりましたし。そういえば、この大会で優勝した「猛者の集い」というクランには、現在『VALORANT』を含む色々な大会で実況をしている岸大河もいたんです。当時はStanSmithという名前でプレイしていましたね。
――『VCT』で一緒にZETA DIVISIONを応援していた2人が、14年前からFPSの大会に挑んでいたというのはアツい話です。
yukishiro:いまでも、その時の録画データを持っていて、たまに自分がいる時に見せては「yukishiroの昔の実況、おもしれぇなぁ」みたいにイジってきます(笑)。それからは『サドンアタック』の大会で定期的に実況をさせていただくようになりました。