芸能人はClubhouseを活用していくのか? 情報漏洩のリスク、新規ファンの獲得などから考える
音声SNSアプリ「Clubhouse(クラブハウス)」が日本で広まり始めて約1か月が経過した。起業家やIT系企業の経営者層などから広まり始め、数日後には芸能人や著名な専門家層に広まり、現在は一般層にまで利用が拡大している。
規約として「秘密が守られる」と安心していたことで、芸能人の他では聞けない話などが盛り上がっていたClubhouseだが、あっという間に規約は破られ、他SNSや週刊誌などでは会話の内容が外部に共有されるようになってしまった。
上陸当初とは状況が異なるClubhouseを、芸能人はどのように活用していくのだろうか? また、そもそも今後も活用していく可能性はあるのだろうか?
Clubhouseの基本機能とこれまでの流れ
Clubhouseは、音声で発信したり交流したりすることができるSNSアプリだ。音声を発信して聞いてもらうための「Room」はいつでも誰でも無料で作成できる。そこでは、「Speaker(話し手)」と「Listener(聞き手)」に分かれて、音声を楽しむことができる。
「Moderator(ルーム作成者や、作成者から指名された人)」によって招待された「Speaker」のみが会話でき、会話に参加したい場合は挙手をして「Moderator」からの招待を待つこともできる。その他は全員聞き手となる。また、Roomは好きなタイミングで退出することができる。
現時点(2021年2月19日)での「Clubhouse」の基本的な規約を説明しておくと、
・相互フォローだけを目的とした部屋(発信や会話が行われない部屋)
・録音や録画、メモをとること
・Clubhouseで聞いた内容をClubhouse内外で共有すること
主にこういったことが禁じられている。また、利用は実名(本名)で使用することが義務付けられている。
しかしながら、上陸から2週間も経つと、芸能人のRoomでの会話が録音・録画されてYouTubeにアップされたり、週刊誌で発言が取り上げられたりすることが多くなってきた。「規約に守られているから」と安心して利用し始めた芸能人たちも、今や発言内容の漏洩やそれに伴う炎上などを警戒し、利用を避けるようになってきている。
▲モデル、タレントの藤田ニコルによる発言
「誰かの秘密の話」を聞ける可能性が低くなったこと、そして、ビジネスや人脈作りを目的としたRoomの増加などから、利用者は一気に激減。よっぽどの大物が出現しないかぎり、最近では過疎化が感じられる。
とは言え、上陸開始からまだ約1か月。しかもiOSユーザーしか使用できず、日本語にすら対応していない(名前やプロフィール、ルーム名などは対応)。現在も、「秘密の話」ではなく、純粋にファンとの交流やイベントのこぼれ話などを気軽にする場として利用を続けている芸能人も少なくない。
Clubhouseに適している企画とは
アプリ上陸当初は「ここだけの話だけど」といったような芸能人による裏話が気軽に行われていたが、さすがに現在は警戒されている。では、芸能人たちは今どのように利用しているのだろうか?
筆者の観測下において多く見られるのは、以下のようなRoomだ。
・芸能人同士の雑談(漏洩しても差し支えのない内容)
・テーマ性はあるが番組や動画化、イベント化するほどでもない企画
・Listenerからのお悩み相談に芸能人が答える
こういったRoomが現在も存在する。特に下ふたつのようなRoomは、開催の曜日や頻度などを決めて、ファンが集まる場としてコミュニティ化しつつある。いわば「ラジオパーソナリティとハガキ職人、リスナー」のような温度感である。
Clubhouseの利点は、許可された人間しか発言ができないところにある。たとえば「YouTube Live」や「Instagramライブ」といった生配信では、視聴者から大量の発言が投稿され、質問が投稿されても配信者が発見できないことが多い。また、誰でもコメントを発信できるとなると誹謗中傷を浴びるリスクもある。その点Clubhouseであれば、Listenerは質問したければ挙手をする必要があり、さらにModeratorに選ばなければ発言はできない。ファンとの交流を目的とするのであれば、こういった利点だけでも利用する価値はあると言えるだろう。
しかしながら問題は、今のところ「既存ユーザーから招待を受けたiOSユーザー」しか利用ができない点にある。「ファンを対象とするのであれば、参加する権利は平等に与えられるべきだ」。そういった声もあがっている。逆に言えば、権利が平等に与えられた状況になれば、ファンとの交流の場として非常に有益になる可能性がある。
Clubhouseで発信する内容としては、「テーマ性はあるが番組や動画化、有料イベント化するほどでもない企画」が適していると言える。テレビ番組やYouTubeは、視聴者を意識した編集が必要なため手間がかかる部分が大きい。「YouTube Live」や「Instagramライブ」などは基本的に映像付きであるため、これもなんだかんだで準備が必要だ。
Clubhouseはその点、電波とスマホさえあればどこからでも、ひとりでも複数人でも音声配信ができる。映像が映らないため、芸能人も自宅や仕事場から、すっぴんに私服のまま気軽に参加できる。そういった利点から、ユーザーたちの発信ハードルを下げているとも言える。
また、Clubhouseは交流の場であるゆえに、たまたまアプリ内で出会った普段同時のブッキングが難しいような著名人や芸能人が会話している状況が見られるのも面白い。「有料イベント化するほどでもない企画」が適しているとは言ったが、Clubhouseをきっかけに有料イベントや番組が生まれる可能性もないとは言えない。