拓かれる“Zoom作品”の可能性ーー映画『ズーム/見えない参加者』は新たな証明の一作に
また、「NO密で濃密なひとときを。」をテーマに掲げる劇団ノーミーツは、一度目の緊急事態宣言が発出された直後に結成。Zoomの利用が当たり前となった現代だからこその“あるあるネタ”を軸とした小品を次々と発表しては注目を集め、これまでに三度の有料チケット制の長編作品も発表している。しかも、生配信。媒体こそ映像ではあるものの、関係者は一度も会わずに企画を立ち上げ、稽古をし、公演を打っているのだ。機材や回線のトラブルに見舞われる可能性もあるはずだし、当然ながらヒューマンエラーだって起こり得る。かなり入念なリハーサルが行われているのだろう。何よりも彼らの功績は、Zoom作品が“興行”として成り立つことを証明している点が大きい。
さて、そういった面で『ズーム/見えない参加者』は、Zoom作品でありながら、劇場公開されている作品だ。岩井俊二監督によるZoomを効果的に用いたリモート作品『8日で死んだ怪獣の12日の物語』は、劇場公開もされているが、『ズーム/見えない参加者』に関しては劇場公開を前提として作られているものなのだから、これは大きく異なる点だ。“Zoom交霊会”という物語の着想の面白さはもちろんあるが、Zoom作品が劇場のスクリーンでも観るに耐え得る可能性を秘めているのだと目されている証でもあるだろう。
本作は、私たちの身近なツールを使って作品を作ることができるのだと示し、しかもそれが商業的なレベルにまで達することができるのだと証明しているのだ。それにZoom作品は、YouTubeなどのプラットフォーム上で気軽に発表できるのだから、プロ・アマ問わず、同じ土俵に立つことができる。可能性はまだまだありそうだ。次はどんな形態の作品が登場するのだろうか。
■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。Twitter