ソフトバンク、デジタル医療企業への100億円超え投資は起死回生の一手に?

 9月3日、デジタルセラピューティクス(デジタル治療)企業の「バイオフォーミス(Biofourmis)」が、ソフトバンクグループの「ソフトバンク・ビジョン・ファンド2」がリードする投資家グループから、1億ドル(106億円)を資金調達したと発表した。新型コロナウイルスの流行により、同社製品の需要が急速に拡大しており、投資家の間でも期待が膨らんでいるようだ。

コロナ渦で10万人以上が利用するプログラムを開発

 「バイオフォーミス」は、デジタルセラピューティクス業界で急成長を見せるグローバル企業だ。デジタルセラピューティクスとは、デジタル技術を用いて、予防医療や診断、治療などを行うソフトウエアを示す。

 米メディア『Forbes』によれば、ウイルスの流行前、同社は心血管疾患や呼吸器疾患など、慢性疾患に焦点をあてた開発を行っていたという。しかし感染拡大後は、香港やシンガポール政府を支援するため、ウイルス陽性患者の健康状態をリモートで監視できるプログラムを開発した。アームバンドセンサーによって患者のバイオマーカーの信号を継続的に分析し、オンラインダッシュボードを介して医療者に情報が伝えられるシステムだ。過去5か月間で、10万人を超える陽性患者がこのプログラムを利用したという。

 同社CEO、クルディープ・シン・ラージプート氏は、「患者の多くは、病院から離れたところでリモート監視される必要がある」と語っている。陽性患者が急増する現状において、患者をリモートで監視する必要性から、同社の他の製品への需要も高まっているという。

「孫氏は当社の新たな市場価値に賭けた」

 今回の投資をリードする「ソフトバンク・ビジョン・ファンド2」は、様々な批判を受けながら設立された。

 先行する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は、10兆円ファンドとして注目されたが、出資先のWeWorkやUberの失速により、巨額の損失をもたらしていた。第1弾の失敗を受け、投資家がたちがファンドへの出資を控えると見られていたが、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は「ソフトバンク・ビジョン・ファンド2」を設立。「バイオフォーミス」に1億ドルの出資を決めた。この他にも、マスミューチュアルベンチャーズ(MassMutual Ventures)やオープンスペースベンチャーズ(Openspace Ventures)が出資に参加し、同社は総額1億4500万ドル(154億円)を調達した。

 『Forbes』によると、ラージプート氏は、今年始めの時点では、この出資を受けられるとは考えていなかったという。「孫氏は、当社のビジョンを信じ、日本や中国、中東などの市場を開拓することでもたらされる新たな市場価値に賭けた」と語っている。

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