モデリングディレクターに聞く、アニメ『BanG Dream! 2nd Season』の細部に凝らされた意匠
「キャラが多くても、出来の悪いモデルは一体も上げたくない」
ーー実際動いてるのを見て、モデリングが上手くいったなと手応えを感じることはあるんですか?
武内:映像はアニメーターさんが画作りをして動かしているものなので、良いカットがあっても自分の手柄というより、カットの担当者の手柄なのだと思っています。でも、シンプルなカットだとモデルの良し悪しが出るので、手を緩めることはできません。自分たちの仕事は、良いモデルを仕上げて、アニメーターさんに引き継いだ時点で一区切りで、そこから映像にするのはアニメーターですから。なので、モデリングどうこうよりも、自分が関わったタイトルが、最終的に視聴者の方に楽しんでいただけたのを見ることができれば、それが一番嬉しいです。CGでアニメを作るときは、作品の基礎となるモデルの出来が悪いとその時点で作品が台無しになってしまうことがすごく多いので、かなり気をつけて作っています。
ーー先ほど髪の毛の話題があがりましたが、やはりセル作画のような細やかな髪の表現を3DCGで作るのは難しいんですね。
武内:手描きでは、帽子を被ったり、激しく動くなど、シチュエーションによって白紙に画を描いていきますが、3DCGの利点は最良の原型を最初に用意して、多くのカットでは可愛さ、カッコよさを担保できること、なのですが。原型から離れたシチュエーションを完全再現するには、ワンオフでモデリングが必要なので、手間が掛かってしまいます。
ーープロップ(小道具のようなモデル)に関しても伺いたいのですが、バンドで使用する楽器も、本編を見た限りディティールが細かいなと感じました。これもなかなか大変だったのでは?
武内:そうですね。楽器の種類が同じでも、形状が違えばストラップくらいしか流用できませんから。とはいえ、一期のモデルもあったので、ポピパの楽器はそのときのものに修正を加える形で使用しました。ランダムスターをイチから作らなくて済んだのは助かったかもしれませんね(笑)。難しかった楽器は、ドラムセットです。シンバルの光沢を出したり、ハイハットとバスドラはリグを組んで動くようにしなければいけなかったり、一つひとつのパーツが細かくて、演奏者ごとにセッティングも違ったりするので。個人的にすごいなと思ったのは、ミッシェルのDJ卓ですね。本編でそこまで見えるわけではないのに、かなり細かく作り込んでいるんです。ボタンについている文字までしっかりと入っていますし、曲名まで記載されているんですよ。
ーーなるほど。登場回数の少ないプロップもモデルを用意するのですか?
武内:そうですね。シナリオの段階で分かるものは先に作ることもありますし、突然割り込んでくるものもあるので、そこは臨機応変に作っています。
ーー僕の視界に見える範囲だと、ビーフジャーキーや、金平糖、お弁当箱のモデルが確認できます。
武内:金平糖はパスパレのMVで使ったものですね。あれが金平糖だって気づいてくれた方はいるんでしょうか(笑)。結構変な形をしているので、美味しそうに見えるといいなと思って作った記憶があります。
ーー最後に、『BanG Dream! 2nd Season』の制作を行ったことで、武内さんなりの発見はありましたか?
武内:タイトルに関わる少し前に、初めてゲームをインストールしたんですが、制作が進む中でこのタイトルのことを好きになりましたね。だからこそ、キャラクターがいっぱい登場するなかでも、出来の悪いモデルは一体でも上げたくないという気持ちがすごく強くなりましたし、そこに関してはしっかりとやり遂げられた自信があります。経験豊富なスタッフもいれば、経験が浅いスタッフもいたのですが、協力して作り上げるなかで平均点は高くできたと思うので、モデリングという工程は見ただけでは伝わりづらい部分ではありますが、少しでもアニメを見るうえでの楽しみが増えると嬉しいです。
(取材・文・撮影=中村拓海)