Twitter、ユーザの行動分析にもとづいた荒らし対策を発表 市場は努力を評価?

 SNSサービス大手のTwitterは5月15日、同社のブログにおいて新たな荒らし対策を発表した。発表された対策とは、ユーザのツイート行動を分析して「悪意のあるユーザ」を判別する、というものであった。同社はかねてからサービス健全化の努力を続けており、こうした動きを市場は評価しているようだ。

より健全な会話を目指して

 「健全な会話のためにできること」というタイトルの同社ブログによると、新しい荒らし対策ではツイートの内容とユーザの特定の行動を結び付けて、「悪意のあるユーザ」を特定する、と述べている。そうした行動には、「アカウント登録時にメールアドレスの認証をしていない」「同一人物が同時に複数のアカウントをもつ行為」「似ているツイートを繰り返し投稿する」「フォローしていないアカウント宛てに@ツイートをする」といったものが挙げられている。こうした行動分析により、ユーザからの報告がなくても、悪意のあるユーザに対処できるようになるのだ。

 悪意のあるユーザと特定された場合、そのユーザのツイートの表示優先度は低くなる。表示優先度が低くなったツイートは削除されるわけではなく、「返信をさらに表示」をクリックしたり、検索の結果をすべて見るように設定していれば、閲覧できる。

 同社は、今回の発表に先立ってグローバル・テストを実施した。このテストの結果、悪意のある行為の報告が検索結果では4%、会話においては8%減少した、とのこと。こうした新しい荒らし対策を同社は「とても長い道のりの中のひとつのステップに過ぎない」と位置づけており、荒らしとの戦いは今後も続く、と認識している。

終わらない健全化対策

 テック系ニュースメディアのThe Vergeは15日、Twitterの荒らし対策に関する同社CEOの発言を報じた記事を掲載した。ユーザの行動分析という言わば機械的なアルゴリズムによって悪意のあるユーザを特定する手法は、同社の部外者からはその判断基準を理解するのが難しく、時として大きな誤解が生じるのではないか、という懸念が拭えない。同社CEOのジャック・ドーシー氏は、こうした懸念を理解しており、ユーザの行動分析に関する意思決定が確実に周知されるような投資を行う、と述べた。また、同社セキュリティ部門のヴァイス・プレジデントであるデル・ハーベイ氏は、件の荒らし対策に関する報告書を後日発行することを検討している、とも語った。

 同記事は、今回の荒らし対策発表の2ヶ月前、同社が健全な会話かどうかを判定する判断基準に関して、SNSの研究者や大学関係者を対象にして公募したことも伝えている。この公募には230もの提案が集まり、同社プロダクト・マネージャーのデイヴィッド・ガスカ氏の話によると、この公募をもとにした新たな施策を数週間後には発表する予定だ。

株価に見る努力の成果

 経済ニュースメディアのZACKSは16日、Twitterを含めたSNS企業が進めるサービス健全化の努力を各社の株価から評価する記事を公開した。SNS企業が展開するサービスは、先のアメリカ大統領選挙においてフェイクニュースの発信源となってしまって以来、大きく評判を落としてしまったのは周知の事実であろう。こうしたなか、SNS各社はサービス健全化に努めているが、直近の株価変動に着目するかぎりでは、Twitterが同業他社より高く評価されていると見ることができる。

 2018年になってからTwitterの株価は36.4%上昇しており、アメリカ・ソフトウェア産業全体の株価上昇率の7.8%を大きく上回っている。同時期におけるFacebookは4.4%の上昇、SNSアプリ「Snapchat」を運営するSnapにいたっては27.1%の株価下落となっている。

 ZACKSの記事では、Twitterは2015年8月以降120万にのぼるアカウントを利用停止としており、2017年7月1日から2017年12月31日のあいだにテロリズムに関連するとして約27万のアカウントを永久に利用禁止した、と報告した同社のレポートにも言及している。

 以上のレポートの数字が示すように、Twitterはサービスを健全化すべく大きな努力を続けてきた。そして、今回明らかになった荒らし対策と今後発表される公募にもとづいた施策によって、こうした努力は新展開を迎えるかもしれない。

■吉本幸記
テクノロジー系記事を執筆するフリーライター。VR/AR、AI関連の記事の執筆経験があるほか、テック系企業の動向を考察する記事も執筆している。
Twitter:@kohkiyoshi

関連記事