『VS嵐』なぜ10年も愛され続ける? “ゲームショウ”としての面白さを考察
ひとつは、多くは既存のゲームをアレンジしていて、シンプルでわかりやすくも、明確なルールが設定されていること。たとえば「ボンバーストライカー」や「バンクボウリング」はボウリングをベースにしていて、ボールを投げてピンを倒し、その本数で点数をはかるというルールはそのままだ。こうすることで、参加者にとっては初めてのチャレンジでも楽しめる上、視聴者からもわかりやすいという利点がある。
もうひとつは、ギャンブル性が加えられていること。前述の「ボンバーストライカー」では、赤いピンを倒すと20pts、さらに全て倒せばボーナス50ptsが獲得できるというルールがあり、運もまた大切な要素になっている。この設定ゆえに一発逆転が起こりやすく、最後まで見逃せなくなるのは、『VS嵐』の大きな魅力のひとつだ。
体を使ったゲームでありながら、身体能力よりもチームワークが問われるゲームが多いのも特徴だ。「ショットガンディスク」や「コロコロバイキング」、「バウンドホッケー」などは、チームのコミュニケーションこそが勝敗を分ける大きな要素となっており、参加者たちの関係性をうまく見せることに一役買っている。
何より秀逸なのは、これらの要素を満たす独創的な美術セットだろう。セットの多くは、フジテレビ美術制作センターの美術デザイナーである鈴木賢太氏が手がけているという。鈴木氏は、フジテレビの公式サイトのインタビューにて、『ローリングコインタワー』の制作について、「ディレクターからの“みんなで周りを囲みながら高く積んでいくゲームをやりたい"というふわっとした要望を、“こういうアイデアなら実現できる"とこちらから提案したりして形にしている」と語っている。また、ゲームのセットについて、「大事なのは拡張性。やっているうちに慣れてしまうので、いかに慣れても難しくなるエレメントを持たせられるか。速く回せる用意があったり、より高く積めるための大きいコインを用意するなど、どんどん変えていけるのが大事」と、そのポイントを明かしている。何度もゲームをしているはずの嵐チームが、ハンデがあるとはいえ、いつもゲストチームと接戦になるのは、この“拡張性”を意識したゲームデザインにこそあるといえそうだ。
『VS嵐』が10年に渡って視聴者に親しまれ続けているのは、嵐やゲストの魅力もさることながら、ゲーム自体にも飽きない工夫が凝らされているからにほかならない。4月12日放送の『VS嵐 10周年記念 春の2時間SP!!』では、嵐と生田斗真が、同番組に何度も出演してきた『VS嵐 常連軍団』と真剣勝負を繰り広げる。いつにも増してエキサイティングな勝負が期待できそうだ。
(文=松田広宣)