興収で読む北米映画トレンド

タイカ・ワイティティ新作が興行惨敗&公開縮小 批評家への暴言も波紋

 10月30日~11月1日の北米映画週末ランキングは、A24による話題のドキュメンタリー映画『You Can See Everything(原題)』が、公開3週目にして初のNo.1に輝いた。DC映画『クレイフェイス』は首位を譲った……が、今週はトップ10圏外の作品に注目しよう。

 タイカ・ワイティティ監督の最新作『Klara and the Sun(原題)』が、興行・批評ともに逆風にさらされ、監督本人の発言が波紋を広げている。

 本作は、ノーベル文学賞作家カズオ・イシグロの小説『クララとお日さま』を映画化したSFドラマ。病気の少女に寄り添う人型のAIのロボット「クララ」の物語で、クララ役をジェナ・オルテガ、少女の母親役をエイミー・アダムスが演じた。

『Klara and the Sun(原題)』(写真:Everett Collection/アフロ)

 『ジョジョ・ラビット』(2019年)でアカデミー賞脚色賞を受賞したワイティティによる映画化とあって注目されたが、10月15日のロンドン映画祭でお披露目されると、批評家の厳しい批判が相次ぎ、Rotten Tomatoesの批評家スコアは26%。ソニー・ピクチャーズは公開戦略を変更し、北米での公開規模を縮小した。

 本作は10月23日に北米880館で公開されると、オープニング興行収入はわずか70万ドル。2週目も状況は悪化の一途をたどり、週末興収は前週比79%減の14万ドル(推計)となった。北米累計興収は116万ドルにとどまっている。

 海外でも公開戦略の変更が報じられ、ソニーは10月30日に予定されていたスペインでの劇場公開を中止したという。今後、日本を含む海外各国でどのような影響が出るかはまだわからないが、状況は決して思わしくない。製作費は2000万ドル、コスト回収は茨の道だ。

 そんな中、10月31日にワイティティがInstagramに投稿した文章が物議を醸した。

「自分や同業者に向けられた批評は15年近く読んでいませんが、人々(観客)の声には耳を傾けます。このハロウィンには、芸術家になる夢を叶えられず、結局は批評家になった、哀れな迷える魂たちに少し同情してあげましょう。『ジョジョ・ラビット』を嫌ったのも同じ人たちでした。取るに足りない。世間からズレている。時代遅れ。ゴミ箱行き」

 この投稿に添えられたのは、「Rotten Tomatoesの観客スコア78%」の画像だった。興行不振と悪評のフラストレーションが、「観客は支持している」という主張とともに、批評家という職業への侮辱として噴き出したような形だ。

 しかし『ジョジョ・ラビット』は、Rotten Tomatoesで批評家スコア81%を記録し、前述のとおりアカデミー賞にも輝いた作品で、批評家の支持も大きい作品だった。その一方、『Klara and the Sun』は出口調査での好意的評価が69%、「強く薦める」と回答したのは48%と、決して高い数字ではなかったことも付け加えておきたい。

 批評家と観客の評価が分かれることは往々にしてあり、本連載でも興行と批評が必ずしも同じ方向に進まないことはたびたび記してきた。監督が批評家の意見を受け入れず、観客の反応だけを聞くことはもちろん自由だが、他者の職業を侮辱することに正当性はない。

 作品づくりが世界と個人の反応から生まれる創造行為なら、批評もまた世界と創作物の間に立つ創造行為だ。優れたテキストには個人の視点だけでなく、社会に対する目線があり、物語があり、演出もある。それらに対する個別具体的な反論ではなく、「批評家は芸術家になれなかった人々」と断じることほど、アーティストとして情けないことがあろうか。

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