鈴木仁「地道に積み上げてきた」 『おまキス』で振り返るデビュー10年の挑戦と成長

「考えすぎるようになった」“大人になった”実感も

――『お前のほうからキスしてくれよ』は、お互いに恋愛感情を自覚しながらも、それぞれの葛藤があって、なかなか距離を縮められない。コミュニケーションの物語でもあると感じました。

鈴木:神田は上野の好意に気づいていないし、過去にトラウマを抱える上野は「もっと仲良くなりたい」という気持ちと「これ以上踏み込めない」という気持ちの間で揺れている。自分の勘違いだったらどうしようという怖さもあって、恋愛に至るまでには、いくつもの“壁”を感じました。その壁をどう乗り越えて、新しい関係性を築いていくのか。この作品を任せていただいたからこそ、そうした2人ならではの味わいを大切にしたいと思いました。

――上野と神田を見ていると、同じコミュニティに属している難しさもあれば、“大人になったからこその難しさ”も生じたのかなと思います。鈴木さん自身も、そうした変化を感じることはありますか?

鈴木:若い頃のほうが緊張せずに、何でも突っ走れた気はしますね。怖いもの知らずだったというか、そもそもこの仕事を始めたのも勢いだったので、「よし、やってみよう!」と思ったら、あまり深く考えずに行動に移せていました。上野も、過去の経験があるからこそ臆病になって、若い頃のように勢いだけでは踏み出せなくなっているので、そういう意味では似ているのかも。別に悪いことではないんですけど、僕自身もいろいろと考えすぎるようになった気がします。

――キャリアを重ねて、任される役もどんどん大きくなってきたなかで、仕事に対する責任感が増したり……。

鈴木:そういうのもありますね。僕は17歳のときにモデルデビューしたので、もう10年分くらいの後輩がいるんですよ。入った頃は最年少だったのに、いまでは後輩のほうが多くなっていて。もちろん、先輩になっても仕事への向き合い方は変わらないんですが、周りを引っ張っていかなきゃと思うようにはなりました。先輩の背中を見せるというよりは、ページを作る一員として、スタッフさんともいろいろ共有しながら考えることが増えて、だからこそ緊張感も……やっぱり、緊張するようにはなりましたね(笑)。

メンズノンノモデルから俳優へ、想像もしなかった未来

――そんな変化を感じながら、2026年もさまざまな作品で活躍されました。なかでも、『君が死刑になる前に』(読売テレビ・日本テレビ系)は、コアなドラマ好きの間で当時話題になっていました。

鈴木:うれしいですね。同世代のキャストやスタッフと切磋琢磨しながら、オリジナルドラマを作れたことは、すごく楽しかったです。撮影はなかなか大変だったんですけど、ありがたいことに反響も大きくて。身近なところで言うと、おばあちゃんが『君が死刑になる前に』にかなりハマったみたいで、僕のことを役名の「隼人」って呼ぶようになったんですよ。最近LINEを始めたんですけど、メッセージの書き出しが毎回「隼人くん」で(笑)。

――(一同爆笑)

鈴木:歴史のある刑事ドラマに出演したときも喜んでくれたんですけど、『君が死刑になる前に』はかれこれ10回くらい観返しているそうです。遊びに行くと録画を観せられるので、「いや、観てるから大丈夫だよ」って(笑)。

――おばあさま、なかなかハードな作品がお好きなんですね(笑)。

鈴木:内容はハードなんですけど、何気ない日常のやり取りも多くて、自分のふざけた部分も自然と出せる役だったので、そういうところを気に入ってくれたのかもしれません。同業者の方々にも観ていただけましたし、ちゃんと人の心に残る作品になったのかなと思います。

――ハードな作品といえば、映画『時には懺悔を』も鮮烈でした。西島秀俊さんや満島ひかりさんとの共演は、刺激的だったのではないでしょうか。

鈴木:本当に宝物のような時間でしたね。お二人とは1対1でお芝居をさせていただくシーンも多く、すごく貴重な経験になりました。監督からは「とにかく普通の子を演じてほしい」と言われたんですが、その“普通さ”が観客と作品をつなぐ役割になると聞いて、そうした役を任せていただけたこともうれしかった。僕自身も映画が好きなので、これからもっと映画に携わっていきたいとあらためて思った現場でした。

――先ほども話に出ましたが、デビューのきっかけとなった『MEN'S NON-NO』モデルオーディションから、2026年で10周年を迎えます。もともとはモデル志望だったそうですが、ここまでお芝居をする未来は想像していましたか?

鈴木:まったく想像していなかったです。そもそも人前に立つのが苦手で、自分が動いている姿が映像作品として残るなんて、絶対にない人生だと思っていました。でも、いろいろな巡り合わせと言いますか、アミューズに所属していたからこそ俳優業にも挑戦できて、こうして10年間続けてこられて、本当によかったなと思います。昔の自分からは想像できないくらい、お芝居が好きになりましたね。

――俳優デビュー作の『リバース』(2017年/TBS系)、そして注目を集めた『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(2018年/TBS系)は、体感的にはわりと最近の作品なんですよ。そこからの躍進のスピードに、あらためて驚かされます。

鈴木:自分としては、地道にコツコツと積み上げてきた10年間でしたね。多くの方に知っていただくきっかけになった『花のち晴れ』と『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)は特に反響が大きく、そうした学園ドラマを2つも経験できたことには感謝しています。その一方で、映画『のぼる小寺さん』や映画『ジオラマボーイ・パノラマガール』で、いわゆる“カッコいい役”とは違う役柄に挑戦できたことも、自分のなかでは大きな転機になりました。俳優として成長するうえで必要な経験でしたし、そういう積み上げ方ができたことも良かったと思います。

「先輩になった」ことで芽生えた新たな意識

――あくまで個人的な所感なのですが、ここ2、3年で鈴木さんのお芝居がぐっと魅力を増したように感じています。ご自身のなかで、お芝居への向き合い方が変わったきっかけはありましたか?

鈴木:仕事も含めて、これからの人生について真剣に考えるようになったのは、4年くらい前ですかね。それまではある程度勢いで仕事をしていた部分もあったんですが、コロナ禍を経て、一つひとつのオファーに対して「こういう作品だからやってみたい」と、自分なりに考えるようになりました。いま思えば、適度な不安や緊張感を持ちながら、自分の将来と向き合うようになったことが、お芝居に結びついていたのかもしれません。

――いまのお話を聞いて、鈴木さんのお芝居に感じていた成熟さの理由が、少しわかった気がします。

鈴木:それこそ「先輩になった」ということもあるんですかね。以前は同世代とお芝居をすることが多かったんですが、最近は年上の方とご一緒する機会もあれば、俳優としての後輩もどんどん増えてきて。2年前に出演した学園ドラマ『素晴らしき哉、先生!』(ABCテレビ・テレビ朝日系)でも年下の共演者が多かったので、自分の立場について考えることが増えました。これからはいただいた役を演じるだけでなく、もっと多くの方に知っていただけるような作品を、役を通して自分から作っていくことが目標ですね。

――10年間のキャリアを経て、いまの鈴木さんが上野という役に向き合った『お前のほうからキスしてくれよ』。押田さんとの共演も含めて、どんな作品になったと感じていますか?

鈴木:まず、高橋名月監督ならではの空気感が、作品の大きな魅力になっていると思います。僕と岳くんに任せてくださる部分も多かったので、柔軟な現場だからこそ生まれた2人の掛け合いにも注目してほしいですね。誰もが感じたことのある心のモヤモヤや、一歩踏み出すことへの怖さが丁寧に描かれているので、幅広い世代の方に身近に感じていただけるんじゃないかなと。少しずつ心を開いていく上野と神田の変化を、ぜひ最後まで見届けていただけたらうれしいです!

■放送情報
『お前のほうからキスしてくれよ』
フジテレビにて、毎週月曜24:45~放送
FODにて独占見放題配信
放送終了後、TVerにて1週間見逃し配信
出演:鈴木仁、押田岳、木津つばさ、川瀬莉子、松大航也、園田あいか、富本惣昭、金丸尭暉、山崎潤、雨宮翔(GENIC)
原作:やまやで『お前のほうからキスしてくれよ』シュークリームPOP(moment刊)
監督:高橋名月
脚本:天本絵美
音楽プロデューサー:館野信博/やましたあみ
音楽:今村良太/金民智
主題歌:浦島坂田船「知らない」(ワーナーミュージック・ジャパン)
制作プロダクション:株式会社ヒューマックスエンタテインメント
協力プロダクション:株式会社コクーン
製作:NBCユニバーサル・エンターテイメント
©やまやで/シュークリームPOP/NBCユニバーサル・エンターテイメント
公式サイト:https://www.nbcuni.co.jp/jcon/omakiss/
公式X(旧Twitter):https://x.com/omakiss_drama

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