『ブラッサム』“格之介”高良健吾の色気にうっとり 文豪たちが“珠”石橋静河に与えた影響

 岩国で周囲の目を気にして小さくなっていた珠(石橋静河)が、好きな本の話に目を輝かせている。その姿が、何よりうれしい。NHK連続テレビ小説『ブラッサム』第21回では、東京で暮らし始めた珠の世界が、個性豊かな作家たちとの出会いによって広がっていった。

 大正5年10月。珠が保(金子大地)と暮らし始めて、ひと月が経った。東京帝国大学に通う保のために朝食を作り、家計のやりくりも任されている珠。「自分の好きなものも遠慮せんと買うたらええ」と言われ、笑顔でもじもじしていると、保は「また本じゃろ?」と笑う。珠の好みを心得た言葉に、2人の仲の良さがにじんでいた。

 珠いわく、東京の書店は品揃えが豊富で、毎日通っても飽きないという。そんな彼女が通う「ぶくぶく堂」に、若き人気作家・秋山格之介(高良健吾)が現れた。多忙ななかで読書の時間があるのかと尋ねる店主の本田(川島潤哉)に、秋山は「文学は呼吸。吸うように読んで、吐くように書く。どちらかでは生きていけません」と答える。

 顎に手を添える姿は、モデルとなった芥川龍之介の肖像を思わせた。高良は映画『蜜のあわれ』でも芥川を演じているが、今回も短い登場で鮮やかな印象を残す。24歳とは思えない色気と、知的でどこか浮世離れした佇まい。気負えば格好つけにも聞こえそうな言葉が、すんなりと似合ってしまう。本田がうっとりするのも無理はない。

 珠は店先ですれ違った相手が秋山だったと知り、大興奮。ところが、その後には、また違った意味で強烈な出会いが待っていた。珠が愛読する『イワンの馬鹿』を訳した小山牛丸(イッセー尾形)である。

 本田が厄介な客だったとこぼし、もう死んでいるかもしれないと口にした矢先、「戦争が! 始まる!」と現れる牛丸。そのタイミングの絶妙さだけでも笑ってしまう。仙人のような風貌で、戦争によって富む商人と貧しい庶民の不均衡をまくしたてる姿は、騒々しくも目が離せない。静かに文学への思いを語った秋山とは、なんとも対照的だ。

 そんな牛丸に、珠は『イワンの馬鹿』の好きな一節を伝える。理不尽な目に遭っても「いいんじゃ、いいんじゃ、私は畑に戻るよ」と言うイワン。とりわけ「畑に戻るよ」という言葉が、初めて読んだときから心に残っているのだという。すると牛丸は顔をほころばせ、そこは自分が書き足したところだと明かした。作者のトルストイは一行も書いていない。憧れの翻訳家との対面が、まさかこんな種明かしにつながるとは。

 珠に問われると、思いついてしまったのだと弁明し、最後は追及を拒んで去っていく。その場で言葉が浮かんでいるかのような、イッセー尾形の自在な台詞回しが楽しい。勝手な加筆には驚かされるが、自分の言葉が読者に届いていたことを喜ぶ顔には愛嬌もある。珠もまた、その奔放さに戸惑いながら、本人と話せた喜びを隠せなかった。

 その夜、保に出会いを語る珠の興奮は冷めない。保が初めて見るほど生き生きした姿に、文学が彼女のなかでどれほど大きな場所を占めているかを感じた。これまで本を通して触れてきた世界が、今は目の前の人々とつながっている。

 一方、穏やかな同居生活には、早くも危機が。里芋を繰り返し作ることも、毎朝の見送りも、マキ(中村優子)には兄妹らしく映らなかった。「あれは好きな男を見送る目だ」と指摘され、逃げ出してしまう珠。「どうしましょう」と相談された保は「任せとけ」と頼もしく引き受けたかと思えば、三好親子の前でいきなり土下座する。その迷いのなさには、可笑しさと誠実さが同居していた。

 個性豊かな作家たちに、下宿の三好親子。東京で出会った人々とのやり取りはどこかコミカルで、珠の世界が広がるにつれて、物語もますます賑やかになってきた。次はどんな人に出会い、何が起こるのか。騒がしくも楽しい東京編に、こちらまで心が弾む。

■放送情報
2026年度後期 連続テレビ小説『ブラッサム』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜から金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:石橋静河、加賀まりこ、松たか子、国仲涼子、渡部篤郎ほか
作:櫻井剛、小松與志子
主題歌:YOASOBI
制作統括:村山峻平、櫻井壮一
プロデューサー:大野陽平
演出:盆子原誠、中泉慧、佐藤玲衣、田中陽児、小林直毅、野田雄介
写真提供=NHK

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