『LOST10』は横浜流星の新たな代表作となる予感 『正体』『国宝』に通じる“不安”と“渇望”

 そして、日本映画史における新たな金字塔を打ち立てた『国宝』(2025年)では、主演の吉沢亮としのぎを削る生涯のライバル・俊介を演じた。上方歌舞伎の御曹司として生まれ、父親から厳しく指導を受けながらも、兄弟同然のように育った喜久雄(吉沢亮)の才能を前に、歌舞伎の世界から逃げ出してしまう。それでも地獄の果てから舞い戻り、自身の血筋を受け入れようとする俊介の並々ならぬ覚悟を、横浜は偽ることのできない板の上で痛みに悶えながら表現する。本作に出演するにあたり、歌舞伎の稽古は1年半にも及んだという。同年に公開された『片思い世界』(2025年)でもピアノに初挑戦し、約9カ月間にわたって練習を重ねた横浜。彼のたゆまぬ努力が結晶となって、作品を煌びやかに見せると同時に、礎となる土台をより強固なものにしている。

 これまでに出演した作品で幾度も驚嘆させられた横浜のストイックさは、10月9日に公開された映画『汝、星のごとく』にも受け継がれていた。同じく凪良ゆうの小説が原作となった映画『流浪の月』(2022年)では募る思いがすれ違い続け、どうしようもなく傷つけてしまう間柄だった広瀬すずとW主演を務めるとあって、キャスト発表時に大きな話題となったのも記憶に新しい。

 横浜が演じた青埜櫂は母親の恋愛に振り回されて、見知らぬ瀬戸内海の島にやってきた高校生。そこで彼は、自身と同様に家庭の事情によって孤独を感じていた同い年の井上暁海(広瀬すず)と出会う。閉ざされた島の環境から、それぞれ漫画と刺繍で抜け出そうとする2人の逡巡と渇望、15年にもわたる愛の物語が描かれるなかで、横浜は櫂というキャラクターと全身全霊で向き合い続けた。17歳の若き青年は成長していく過程でさまざまな困難に直面し、人生を切り拓くためにすべてを懸けて臨んだ漫画でさえも、思わぬ壁が目の前に立ちはだかる。一瞬の表情に込められた多様な感情。一心不乱に創作に打ち込むまっすぐさと信念。絶望で心身が擦り減っていくなかでも、決して消えることのない光を追い求める姿。それぞれの年齢を地続きに演じた横浜の研ぎ澄まされた芝居には、櫂という人間が生きた人生に織り込まれた喜怒哀楽が瞬くように光っていた。

 『LOST10』は枝分かれしたあいまいな真実と不確かな情報が世の中を飛び交う現代を象徴するような作品となる予感がする。そんな時代に起きた不可解な事件に巻き込まれる主人公を、横浜がどのように演じるのか。これまでの出演作品で彼が見せてきた研ぎ澄まされた芝居と、生々しい感情が溢れ出す瞬間を心して見届けたい。

■放送情報
金曜ドラマ『LOST10』
TBS系にて、10月16日(金)スタート 毎週金曜22:00~22:54放送
出演:横浜流星、小栗旬、中村アン、飯豊まりえ、井口理、岩谷健司、野呂佳代、斉藤由貴、松下洸平、市川実日子、山本未來、吉沢悠、水橋研二、兵頭功海、金子昇、吉岡睦雄、森田想、柳憂怜、やす(ずん)ほか
脚本:奥寺佐渡子
演出:塚原あゆ子
プロデュース:新井順子
編成:荒木沙耶
音楽:ガブリエル・ロベルト
主題歌:Maya「LOST」(Sony Music Labels Inc.)
製作:TBSスパークル、TBS
©️TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/lost10/
公式X(旧Twitter):@lost10_tbs
公式Instagram:lost10_tbs
公式TikTok:@lost10_tbs

関連記事