興収で読む北米映画トレンド
トム・クルーズ『DIGGER/ディガー』まさかの北米5位発進 賛否両論&今年最大級の赤字?
「番狂わせ」とはまさにこのことだ。トム・クルーズ主演映画『DIGGER/ディガー』が、10月2日~4日の北米映画週末ランキングでまさかの第5位にとどまった。
北米3321館で週末興行収入は800万ドル。クルーズの主演映画としては、『大いなる陰謀』(2007年)の670万ドル以来、19年ぶりの低初動となった。海外73市場でも1200万ドルで、世界初動は2000万ドル。すでに「今年最大級の赤字」と伝えられるほどの異常事態だ。
本作は、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年)、『レヴェナント:蘇えりし者』(2015年)のアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督とクルーズが初めて組んだブラックコメディ。クルーズ扮する石油採掘会社CEOディガー・ロックウェルが、地球規模の環境災害を引き起こし、大統領から事態の収拾を命じられる物語だ。
製作費は1億6000万ドル。当初は1億2500万ドルで製作が承認されたが、撮影の長期化でコストが膨れ上がり、宣伝・広報にも約1億ドルが投じられた。現在の試算では、世界興収が5000万ドル程度まで届いても、損失は1億5000万ドル近くに達する見込みだ。
もともと本作はNetflixで開発が進められていたが、同社での実現が見送られたのち、『レヴェナント』のプロデューサーであるメアリー・ペアレントのもと、クルーズ主演映画として再始動。2024年にワーナーとクルーズが非独占契約を結び、その第1弾として選ばれた。
ワーナーの映画部門を統括するマイケル・デ・ルカ&パメラ・アブディは、『ワン・バトル・アフター・アナザー』(2025年)や『罪人たち』(2025年)などを成功に導いており、野心的な企画にも熱心に取り組んでいる。本作も、「クルーズ×イニャリトゥの顔合わせなら」と1億2500万ドルの製作費を承認した形だったとされる。
ところが、公開直前に興行への期待はしぼんでいった。当初は初動3000万ドル前後と予測されたが、その後は1800万~2000万ドル、さらに1200万~1500万ドルへと下方修正が続き、実際には800万ドルという初動だったのだ。SNSでも今ひとつ反応が乏しかった。
観客の男女比は男性73%・女性27%とくっきり分かれ、年代別では18歳~34歳が6割を占めた。イニャリトゥは本作を若い世代への「ラブレター」だと位置づけており、ある程度は狙い通りの結果となったが、投じたコストに見合う規模には広がっていない。
評価も賛否まっぷたつで、Rotten Tomatoesでは批評家スコア51%・観客スコア71%、映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでは「C+」評価。ギレルモ・デル・トロは本作のスケールや野心を評価し、「大胆で、勇敢で、映画的に複雑」と称えたほか、一部には熱心なファンを生んでいるが、興行に大きなインパクトをもたらす口コミやリピーターは見込みづらいのが現状だ。
近年の作品では、ドウェイン・ジョンソン主演『スマッシング・マシーン』(2025年)が製作費5000万ドルに対して世界2110万ドル、『アムステルダム』(2022)が製作費8000万ドルに対して世界3120万ドルで終了した。『DIGGER/ディガー』はこれらと同規模の初動ながら、製作コストはさらに大きい。
すなわち本作は、もともと賞レース狙いのアートハウス作品として作られるべき映画が、トム・クルーズ主演の大作として進んでしまったことが問題だったと言えるだろう。事実、クルーズはワーナーとの間で、製作費の回収前から興収の一定割合を受け取る契約を結んでいるという。日本では10月9日公開。