スティーヴン・スピルバーグが原点回帰 『ディスクロージャー・デイ』の現代的問いかけ
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、エミリー・ブラントが大好きな宮川が『ディスクロージャー・デイ』をプッシュします。
『ディスクロージャー・デイ』
もともとは全米公開から約1カ月後の7月10日に公開される予定だった巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督の新作『ディスクロージャー・デイ』。“諸般の事情”によって公開が3カ月後ろ倒しになってしまった“今夏最大の注目作”が、ようやくここ日本でも観られるようになった。
『未知との遭遇』や『E.T.』、そして『宇宙戦争』など、ハリウッドにおける“地球外生命体との遭遇”のイメージそのものを形作ってきたスピルバーグ。彼が原案・監督を務め、脚本に『ジュラシック・パーク』や『宇宙戦争』でもタッグを組んだデヴィッド・コープを迎えた本作は、まさしくスピルバーグが自身のホームグラウンドであるSFサスペンスへと原点回帰を果たした意欲作だ。
物語の核となるのは、タイトルが示す通り「情報開示(ディスクロージャー)」。政府が長年にわたって隠蔽してきた“人類以外の存在”を示す重大な機密情報。生放送のトラブルをきっかけにその核心に触れてしまったテレビの気象予報士のマーガレット(エミリー・ブラント)と、サイバーセキュリティのエキスパートであるダニエル(ジョシュ・オコナー)が、隠蔽を目論む陰の組織や国家権力の追手から逃れながら、全人類へ“真実”を明かそうと奔走する攻防を描く。
145分という上映時間の中で際立つのは、やはりスピルバーグならではの圧倒的なサスペンス演出の冴え。ヤヌス・カミンスキーによる緊張感に満ちた撮影や、御年94歳のジョン・ウィリアムズが手がけた重厚なスコアが、古典的なハリウッドサスペンスの心地良い緊迫感を全編に漂わせている。その一方で、ジャンルがシームレスに切り替わっていく楽しさも。急にアクション映画に転じたかと思えば、ホラーやファンタジー、そしてコメディ要素まで備えているのが見事だ。
ただ、観客によって評価が分かれる部分もあるだろう。スペクタクルなSF大作としての視覚的快楽や“ド派手な宇宙人の侵略”を期待して劇場に足を運ぶと、本作が提示する物語のスケールや静かな着地には、どこか肩透かし感を覚えるかもしれない。実のところ、本作が重点を置いているのは「未知の生物そのものの脅威」ではなく、それを「隠し続けてきた人間のシステム」と「真実を知った社会がどう変化するか」という、極めて政治的かつ内省的なテーマだからだ。
ディープフェイクやAI、情報操作が日常化した現代において、“何が真実か”を判別することは極めて困難になっている。かつて『未知との遭遇』で夢と希望をもって宇宙を見上げ、『宇宙戦争』で9・11以降の不条理な恐怖を描いたスピルバーグが、2020年代の今、あえて真実を開示する恐怖と希望を描いたことの今日的意義は大きい。ハリウッドのトップランナーとして長年スクリーンと対峙してきたスピルバーグが、今この時代に観客へ投げかけた誠実なメッセージとして受け取ることができる。
大作映画のあり方が問われる現代の映画興行の中で、巨匠が提示したひとつの答え。『ディスクロージャー・デイ』は、劇場でじっくりと噛み締めたい一作だ。
■公開情報
『ディスクロージャー・デイ』
全国公開中
出演:エミリー・ブラント、ジョシュ・オコナー、コリン・ファース、イヴ・ヒューソン、コールマン・ドミンゴ
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:デヴィッド・コープ
原案:スティーヴン・スピルバーグ
製作:クリスティ・マコスコ・クリーガー、スティーヴン・スピルバーグ
製作総指揮:アダム・ソムナー、クリス・ブリガム
配給:東宝東和
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公式サイト:https://disclosureday.jp
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